2019年4月、東京ドームシティで開催された初の大規模展『櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展』では72組を集め、2000点以上のアウトサイダー・アート(*)を展示した櫛野展正さん。賛否両論が巻き起こり、ハプニングさえも味方につけたーー。
全3回の連載でお送りいたします。
[1]「面白い人がこの世の中にいる」を伝えたい
[2]作家たちが展覧会場で大暴れ
[3]「ヤバい」と「狂ってる」に痺れてしまう
>>> 最初から読む[1]「面白い人がこの世の中にいる」を伝えたい
(*)専門的・体系的に「美術」を学んでこなかった人による作品を指す。高齢者、子ども、精神障害者などが作り手のアート作品が挙げられる。
僕はあえて「櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展」という形で自分の名前を展覧会の冠につけました。そして、メインビジュアルの中央に自分の顔がドンとある。これって相当異例なんですよね。
キュレーターが全面に出る展示なんてほとんどない。こんなことしたら確実に賛否両論が生まれるわけです。その反響も見越して、あえてこういった仕掛けにしました。そもそも、表現者の人たちと僕との関係性も見せたかったんです。
普通の展覧会にしても面白くないし、過去に誰かがやったことを踏襲したって仕方ない。もっと自分が新しい基準や概念を作っていかなきゃならない、とね。
結果、出展者を72組集め、史上最大規模の2000点以上の作品を展示することができました。あれもこれも入れて、結果的にこの数になって。分母を増やすことで、どんどん拡散されていくことも狙っていました。
実は今回の展示に参加したアーティストの中には美大出身の現代アーティストもいます。でも、作品を見るとまるでアウトサイダー・アートのようにも思える。こうした人たちにも展示に加えていくことで、これまで考えられてきた「アウトサイダー・アート」とはいったい何なのかを問い直そう、と。40年以上前に生まれたアウトサイダー・アート概念の定義もそろそろ更新していった方がいいんじゃないか?と。
じつは会場で、ある事件も起きたんです。
牛乳パックで帽子を作って自分でかぶっている椿八郎さんが急にやってきて、会場で勝手にワークショップをはじめました(笑)。気づけば他の出展者の人たちも「僕もなんかやりたい」「しゃべりたい」と勝手にイベントを立ち上げていました。そして展覧会場には、昨日までなかったはずの作品が増えていました。僕なら許してくれるだろうと(笑)。
そんな事件すら受け入れて、会期を終えました。実は「もしかしたら突然にワークショップをする人がいるかも知れない」「勝手に作品を持ってくる人がいるかも知れない」とあらゆるハプニングを想定して、企画に余白を作っておいたんです。だからこそ面白い化学反応が生まれた。とにかくいろんな人を巻き込んで、あらゆるハプニングすら自分の企画に巻き込んでいきました。
(つづく)
最終回は明日【9月12日(木)夜】に更新予定です!お楽しみに!
※本記事は、大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDOにて開催されている連続講座、「企画でメシを食っていく」(通称・企画メシ)の講義内容をキャリアハックにて再編集したものです。
*「企画メシ」の記事一覧はこちら
撮影:加藤潤
文 = 千葉雄登
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