2019.09.19
4社を起業した連続起業家が、ニガテをカバーするためにやったこと

4社を起業した連続起業家が、ニガテをカバーするためにやったこと

「決めることが苦手でした...」こう語ってくれたのは、ウェブペイ創業・売却後、LINE Payの立ち上げにも携わった、連続起業家の久保渓さん。これまで4社の経営に携わり、リーダーのプロ!かと思いきや、優柔不断な性格がゆえに、過去に失敗が...。一体彼はどうニガテと向き合い、決断できるようになった?

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全2本立てでお届けします。
[1]「無人コンビニ」はブルーオーシャン。連続起業家 久保渓、10兆円市場へのさらなる挑戦
[2]4社を起業した連続起業家が、ニガテをカバーするためにやったこと

>>> 最初から読む[1]「無人コンビニ」はブルーオーシャン。連続起業家 久保渓、10兆円市場へのさらなる挑戦

僕は、リーダー失格だった。

過去の失敗経験が、今の組織づくりをする上で非常に大きな糧になっています。

組織のトップとして、僕は失格だったと思います。1社目、2社目のときは、当時社員だった方々をモヤモヤさせてしまった....。本来だったら、より効率的に、みんながもっと気持ちよく働けたはず。

特にスタートアップの創業期は「会社が社長っぽくなる」といったりしますが、まさにその状態。僕の悪いところが、鏡のように会社に写し出されていました。

具体的には、「優柔不断なところ」です。たとえば、あるメンバーとの間で「やろう」と意思決定したのに、他のメンバーから「それはやるべきじゃないのではないか?」と言われると心が揺らいでしまう。

プロダクトにどんな機能を付けるのか、どんなターゲット層に対して、どんな施策を打つのか、どういう組織構造にするのか、どこに予算をつけるのか。決めなければならないことは山積みなのに、議論はいっこうに前に進まない。

僕自身のスタンスや考えも曖昧で、決めるための判断基準がなかったんです。組織図もない、意思決定のプロセスもない、組織としてのバリューもない。だから、議論をしていても、「これって、自分たちの価値観に沿っているんだっけ」とか、「そもそも僕らの価値観ってなんだっけ」って、どんどん迷走してしまう...。

それでも会社が成長を続けられたのは、本当に社員の皆さんに助けてもらっていたおかげ。僕の振る舞いや発言から、なんとなくニュアンスを拾ってくれていた。でも、認識がズレることも多く、ときには衝突してしまうこともありました。

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【プロフィール】久保 渓 (くぼ けい) 600株式会社 代表取締役
1985年、長崎市生まれ。高校卒業後、米国Carleton Collegeに進学。政治科学とコンピューター科学のダブルメジャーで卒業。2008年にIPA未踏事業に採択。同年、Webサービス売却を経験。 2010年3月にサンフランシスコで fluxflex, inc.(フラックスフレックス)を創業。 2012年帰国。2013年5月に ウェブペイ株式会社を創業。クレジットカード決済サービス「WebPay」をリリース。2015年2月にLINE株式会社の傘下となる。2015年3月よりLINE Payの立ち上げに参画。 2017年5月にLINE Payが国内3000万ユーザーを突破したのを区切りとして退職。2017年6月に600(ろっぴゃく)株式会社を創業。無人コンビニ「600」を提供している。

LINEの経営陣に学んだ、リーダーの在り方

リーダーとして、どうあるべきなのか。僕自身迷走していた頃に、ウェブペイをLINEに事業売却。LINE傘下で開発をしていたのですが、「リーダーとしての在り方」を学ぶ、貴重な機会になりました。

学生時代から起業をして、自分のつくった組織しか分からなかった

僕は、いかにいままで意思決定者としての自覚が低かったのかを痛感しました。

当時、僕の上司だった舛田淳さんをはじめ経営幹部たちは、どんどん決断していたんです。

しかも、そのスピードがめちゃくちゃ早い。

あとになって、組織としての方針が二転三転することもあるけれど、少なくとも前には進む。決断の数だけ、PDCAを回せる。意思決定がいかに重要なのかを学ばせてもらいました。

決めるのがニガテでも、仕組みで解決できる

次こそは絶対に、決断ができるようにしよう。LINEを退社したとき、心に決めていました。

でも、僕の意識を変えただけでは、きっと何も変わらない。だから、「決める」ことがニガテな僕でも、決められるように3つの仕組みをつくりました。

まず1つ目が、目的別組織です。僕が1名のときから、組織を30以上のチームに振り分けて、個々の目的や役割を明確にしています。スタートアップあるあるですが、オペレーションやマネジメントが一部のメンバーによってしまったり、いつのまにか目的がブレていって、合意形成がむずかしくなってしまう。チームに分けることで、そういた混乱を起こさないようにしています。

2つ目は、意思決定のプロセスです。各プロジェクトで、必ず「意思決定者」と「承認者」を決めるようにしています。「自分が決めるんだ」という自覚が芽生えますし、「このひとが決めるんだ」と周りの振る舞いも代わります。

「承認者」というのは、意思決定者の意思決定に整合性が取れてないなと思ったら、拒否できる権利を持ちます。なので、意思決定者が一人で暴走しないような仕組みになっています。また、権限委譲していろいろな人が意思決定できる機会にもつながっています。

最後に、組織のバリューもつくりました。弊社は「愛」「誠実さ」「責任感」「仲間を助ける利他性」「柔軟性」「局面を変える力」という6つのバリューを定めています。これも私自身が働いていて居心地が良い、あるいは自分の力を最大限発揮できる環境を作ることにつながっていて、いいチームづくりにつながっていると思います。

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<<<[1]「無人コンビニ」はブルーオーシャン。連続起業家 久保渓、10兆円市場へのさらなる挑戦


取材 / 文 = 野村愛


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