2020.03.31
「Googleカレンダー」は難しすぎ? おじいちゃんも使えるカレンダー共有アプリがヒットした話

「Googleカレンダー」は難しすぎ? おじいちゃんも使えるカレンダー共有アプリがヒットした話

2019年12月に登録ユーザー数2,000万を突破した「TimeTree(タイムツリー)」。日本だけでなくドイツ、台湾、アメリカ…とユーザーを増やす。なぜヒットしたのか?代表の深川泰斗さんにお話を伺った。

全2本立てでお届けします。
[1]「Googleカレンダー」は難しすぎ? おじいちゃんも使えるカレンダー共有アプリがヒットした話
[2]TimeTreeが「ユーザーインタビュー」でやっていること。2000万ユーザー突破までの道のり

19億円を資金調達(*)、TimeTree(タイムツリー)

+++(*)直近のシリーズで19.6億円を調達している(2019年12月時点)。

それは誰でも、かんたんに使える?

TimeTreeが2000万ユーザー突破、すごいですね!何がポイントになっていると思いますか?

「誰もが簡単に使えるか」という部分が受け入れられているのだと思います。TimeTreeって、Webが得意だったり、スマホを使いこなせる人だけが使えても、あんまり意味がないと思っていて。なぜなら共有して使う、「共有のためのカレンダー」だからです。

で、一番最初にユーザーさんがつまづく可能性があるのが、「うまくカレンダーを共有できない」という部分だったんですよね。

サービスとしても、「共有率」を上げることが「継続率」に直結する。なので、TimeTreeを立ち上げて間もない頃は「共有率をいかに上げるか」という部分をとくに頑張りました。

実際、リテンションレートを見ていても、早い段階で共有をしてもらえれば、合格点になるというのがわかっていた。カレンダーに誘った相手が参加した状態になったところから、かなり安定していくんですよね。

逆に、「誘った相手が乗ってくれない」「共有のフローがわかりにくくてつまづいてしまう」となると、リテンションレートが低くなってくる。

そこで私達がやったのが、共有のハードルを下げること。TimeTreeをインストールして起動すると、「誰と共有しますか?」と聞かれて、LINEで招待URLを送ることができる。「自分の両親もカンタンにできるかな?」と発想していった部分でもありますね。

+++

「家族間」の「言った言わない問題」を解決しよう

ただ、カレンダーアプリっていっぱいありますよね。正直、ここまで伸びるとは…。

はじめの頃は、それはまぁ苦戦しました(笑)2015年にリリースしたのですが、フラットに「グループでスケジュール共有できるサービス」と打ち出していて。当時は全然、DLしてもらえなくて。

そこからとにかくデータを見て、「これは結局、誰と使うものなのか」と用途・シーン別に「リテンションレート」や「フリークエンシー」を見ていったんです。

その中で特にリテンションが高かったのが「家族間での利用」だった。このことに気づいたのがリリースして3ヶ月くらいの時。あらためて家族で使ってくれている方にヒアリングしながら、打ち出すポイント、PRのメッセージも決めていきました。

たとえば、現在もよくTimeTreeの広告コピーでよく使っている「言った言わないがなくなった」というフレーズ。これも、もとはユーザーさんの「リアルな声」から拾った言葉なんです。

そこから「家族向けにこう使える」と事例集を作ってアピールしていきました。はじめは事例がなかったので、社員の家族で使って、事例を書くなど地道なこともやっていて。その「ナマ」の情報でグッと良くなっていったのかなと思います。

家族向けと絞ったことがよかった、と。

そうですね。あとは「カレンダー共有」って、突きつめていくと「コミュニケーション」なんですよね。どうすればコミュニケーションツールとして機能するか。たとえば、予定のところに画像が貼れるようにしていて。小学校の運動会だったら「運動会のしおり」を画像で貼っておける。「何を持っていけばいいか」の相談もできるようしています。

+++「あるいちご農家さんは、作業の工程管理にTimeTreeを使ってくださっていて。"いつも世話になってるから"と、毎年採れたいちごを送ってくださるんです」

築地の老舗「水産物加工会社」でも使われている。

現在もメインユーザーは「家族」でしょうか?

そうですね。ただ「簡単さ」を追求してきたら、みなさんにとって使いやすいものになっていって。「家族」がメインのユーザーさんですが、そこから層が広がっていきました。

たとえば印象的なところだと、食品加工工場さん。ブリやマダイなどの加工をしている会社さんなのですが、「この魚はいつ、どの作業場で、どこまで加工するのか」と予定を共有することが多いらしいんです。

社員には高齢のベテランメンバーも多く、若い社員の方が何度かグループウェアを導入しようと思ったけど、全然ついていけない…と。そういったなか、TimeTreeを使ってみたら「これなら使える!」と、スケジュール管理が楽になったと教えてくれました。

あとは小児科医のお医者さんのチームでもTimeTreeを導入いただいていて。そのチームは、緊急性の高い手術に急遽対応したり、受け入れ先の病院が変わったり…とスケジュール変更も激しいそうなんです。そんな中でお医者さん、看護師さんのスケジュール共有に使ってもらっている。ある時「TimeTreeのおかげで、リアルタイムで予定がわかる。何百人という赤ちゃんの命を救っていると思います」と言っていただいて。涙腺がゆるむくらい嬉しかったです。

人が営みを続ける限り「予定」はあります。まだまだ紙だったり、ホワイトボードだったりで不自由な管理も多い。ここをもっと解決していけるんじゃないか、と感じたエピソードです。

+++

「ムダな時間」が…どうしても許せない

TimeTreeの開発思想、その原点にあるものとは?

ずっと昔から思っていたんですけど、「予定管理ってもっとカンタンにできるんじゃないか」って。手帳に書いたり、登録したり、その労力にムダな時間を費やすのが、個人的にどうしても許せないんです…これはもう性格の問題ですね(笑)

「予定」って1個のデータじゃないですか。なのに2人で登録したら2つになる。3人なら3個になる。…ムダそのものですよね。

しかも、どちらかがすっかり忘れちゃっていたり、書き忘れちゃっていたりしたら、スケジュールを再設定しないといけない。これ、すごくムダです。

一見すると些細なリソースですが、これらが世界規模で圧縮されたら、世の中はすごくスムーズになるはずです。

なにより時間って、その「過ごし方」で大きく価値が変わるものですよね。たとえば、「1時間」という時間も、会社にいる間は忙しく「次、次、次」とすぐに未来が決まり、速く進んでいく。でも、家族で過ごす何気ない「1時間」はゆったり、濃いかもしれない。10年前に観た大好きなアーティストのライブ、その1時間の記憶が鮮明だったりもする。記憶に残る時間が、その人の人生そのものだなって。

壮大になってしまいますが、私がいつも思い描いているのは「未来を可視化する方法がないか」ということなんです。その中で、納得のいく選択肢を選びたい。その気持ちが強すぎるのかもしれない。1日24時間は変わらないけど、「カレンダー共有」がスムーズになれば、ムダが減って、より有意義で、価値のある時間が増えるはず。その選択肢を増えやしていければと思います。

>>>後編 TimeTreeが「ユーザーインタビュー」でやっていること。2000万ユーザー突破までの道のり


編集 = 白石勝也
写真 = 黒川安莉
取材 / 文 = 平野潤


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