2019.09.18
「無人コンビニ」はブルーオーシャン。連続起業家 久保渓、10兆円市場へのさらなる挑戦

「無人コンビニ」はブルーオーシャン。連続起業家 久保渓、10兆円市場へのさらなる挑戦

無人コンビニ600 代表の久保渓さんを取材。彼が作ろうとしているのは「アマゾンよりも素早く、ほしい物が手に入る」という世界。目指すは「半径50m商圏」創出だ。

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全2本立てでお届けします。
[1]「無人コンビニ」はブルーオーシャン。連続起業家 久保渓、10兆円市場へのさらなる挑戦
[2]4社を起業した連続起業家が、ニガテをカバーするためにやったこと(※9月19日(木)夜公開予定です!)

アマゾンでは拾えないニーズを満たす、無人コンビニ600

「アマゾンでは、満たされないニーズを取りにいきます」

こう語ってくれたのは、WebPay創業・売却後、LINE Payの立ち上げにも携わった久保渓さん(34)だ。

2017年5月にLINE Payが国内3000万ユーザーを突破したのを区切りとして退職。その後、新たに立ち上げたのはキャッシュレスの小型無人コンビニ600(ろっぴゃく)。

2018年6月にサービスを本格的にスタートして1年、毎月数百社からの問い合わせがあり、想像以上の速度で普及しているという。

「無人コンビニで提供しているのは、コンビニよりも近い徒歩1分以内の"半径50m"商圏。今後20年間で、10兆円市場まで拡大すると捉えています」

「無人コンビニ」に勝機を見出す久保さん。その背景にある、知られざる小売業の変化、ビジネストレンドに迫った。

わずか1分、「いま」ほしい物が手に入る世界を

ーー無人コンビニ600、拝見させていただきました。いろいろなものを販売してはいるものの…失礼かもしれませんが、一見するだけだと「これまでの自販機と何が違うのだろう」とも思ってしまうのですが…。

見た目としてはそうですよね(笑)ただ、僕らが提供している「無人コンビニ600」は、自動販売機のような利便性を持ちつつ、日用品から、お菓子や飲料、食べ物などまでコンビニと同じように多様なものが手に入ります。

ユニークなところとして、商圏ごとにコンシェルジュがつくこと。販売する商品を個別でカスタマイズしています。

また、オフィスに設置しているものに関しては、社員の皆様にLINEかslack経由で商品リクエストを送ることができる。週2回補充に伺うので、最適な品揃えが常に近くにある環境をつくることができます。

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ーーなるほど、そうすることで個別に最適化された商品の提供を可能にする、と。

そうですね。そもそも小売というものは「商圏メッシュの半径の広さ」によって市場が定義されています。たとえば、半径50kmだと百貨店、半径5kmだとスーパー、半径500mだとコンビニ。

ただ、半径50mだと自動販売機はあるが、売れるものが飲料に限られてきました。たまにパンとかおにぎりを取り扱っている自販機もあるけど、取り扱う種類が少なかったり、使う機会が限定的だったり。

僕らの取り組んでいるのは「半径50m商圏」で、今すぐほしい物が手に入る世界をつくること。ここは「新たな市場の創出」でもあるんです。コンビニも、スーパーも、それぞれ日本では10兆円規模の市場がある。50m商圏も20年程度をかけて10兆円規模の市場になっていくと踏んでいて。日本では200万台から500万台の無人コンビニの普及余地があります。

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【プロフィール】久保 渓 (くぼ けい) 600株式会社 代表取締役
1985年、長崎市生まれ。高校卒業後、米国Carleton Collegeに進学。政治科学とコンピューター科学のダブルメジャーで卒業。2008年にIPA未踏事業に採択。同年、Webサービス売却を経験。 2010年3月にサンフランシスコで fluxflex, inc.(フラックスフレックス)を創業。 2012年帰国。2013年5月に ウェブペイ株式会社を創業。クレジットカード決済サービス「WebPay」をリリース。2015年2月にLINE株式会社の傘下となる。2015年3月よりLINE Payの立ち上げに参画。 2017年5月にLINE Payが国内3000万ユーザーを突破したのを区切りとして退職。2017年6月に600(ろっぴゃく)株式会社を創業。無人コンビニ「600」を提供している。

アマゾンは、コンビニより遠い

ーー「無人コンビニ」というとコンビニエンスストアを無人で運営する仕組みと勘違いされることも?

そうですね。コンビニやスーパーなど、既存の店舗運営を無人化する動きは活発ですよね。アメリカの「Amazon Go」もそれにあたる。人手不足やコスト削減の対策として「人に頼らない仕組みづくり」は加速するはずです。

ただ、そこは「半径50m商圏」とは重ならない。

ーーアマゾンなどいわゆるECでの購買、Uber eatsなどは競合に?

ある意味では競合するのかもしれませんが、やはりオフラインでの購買行動とは違う。オフラインでの購買は必ず残っていくものだと思っています。なぜなら、Amazonにも、Uber eatsにも、必ず「待ち時間」があるからです。

たしかにネットで買えば、数時間後には手に入るかもしれない。ただ、「その場でいま欲しい」というニーズには応えられません。

たとえば、12時のランチタイムになってから「担々麺が食べたいな」と思ったり。ストッキングが破れて新しいものが今すぐほしいとか、汗をかいたから汗拭きシートが欲しいとか。即物的・即興的なニーズは、まだまだネットでは拾い切れていない。僕の個人感覚として、Amazonって、コンビニより「距離」が遠いと思うんです。

あと……対面での受け取りも僕は個人的にあまり好きじゃないんですよね(笑)苦手というか。宅配ボックスも活用していますが、ダンボールを運んだり、片付けたり、手間はある。もちろん、アマゾンはすごく便利ですが、こぼれているところがあるし、そこはなかなか埋まらないと思います。

きっかけは、妻のつわりだった。

ーーなぜ、「無人コンビニ」に目をつけたのでしょうか?

もともと妻が妊娠中、つわりがひどい時期があって。僕が家のこと全般をやっていたのですが、「今すぐに日用品が買いたい」「すぐに使いたい」と思っても買えない。ここにもどかしさを感じたことがきかっけでした。

僕自身、今回が4回目の起業ですが、人生の何十%かを投入してでも向き合いたいと思うような、「自分自身に起因する課題」というものも大事にしていて。

「これが解決されたら、絶対自分の人生が豊かになる」と思えることがやりたいんですよね。仕事って自分にとっての大事な時間を少なからず注ぐものでもありますから。

「キャズムを超えるとき、一瞬だけトルネードが吹く」

ただ、もちろん「市場」も見ています。社会変革の兆しがあるかどうか。ジェフリー・ムーアが提唱する「キャズム理論」だと、「キャズムを超えるとき、一瞬だけトルネードが吹く」といいます。

この「トルネード」は、社会変革の大きな波を指す。僕らの事業でいえば、コンビニ業界のブラック店長問題や、人手不足の問題が深刻化しています。

小売の歴史でみても、商圏メッシュの半径はどんどん狭くなっている。いま、「コンビニの次」が、求められているといってもいい。リサーチを進めながら、僕自身の課題感とクロスしたし、ここが狙い目だと確信しました。

小売に限ったことではないのですが、世界的なメガトレンドとして「アーバニゼーション」というものがあります。

日本のような先進国でも、新興国でも、発展途上国でも、すべての国において人は田舎から都市にどんどん流入していっていて、都市部の人口は増えている。

都市のひずみみたいなものって見えるので。なので、そのうちの1個が小売りの、商圏メッシュが短くなることによって、より利便性の高いような生活が送れるようになると思います。

競合優位性は、あえて考えない

ーー今後、似たモデルのサービスなども出てきそうですよね。競合に対してはどう捉えていますか?

そもそも「小売」は、勝ち負けのある市場ではないと捉えています。

いわゆる「ウィナー・テイク・オール型(※)」の市場はたくさんあると思うのですが、小売市場って「ウィナー・テイク・オール」になったことは歴史上ほとんどないんですよね。

(※)勝者が総取りする。一人勝ちすること。

百貨店にしても、髙島屋さんとか、三越さんとか、日本だけでもたくさんある。スーパーマーケットも、地方含めると無数にあります。

なので、僕らが主戦場としている「小売」において、競合との比較で勝つかどうかって、そんなに重要ではない。結局、お客様に対する価値を最大化するしかない。

裏を返せば、自分たちが「唯一無二の存在」になれない市場である、ということです。なので、競合が出てきた時も、その競合を見過ぎないようにできればと思っています。

やはりよくあるのが、競合が出たので自分たちの優位性として、たとえば「これができます」「あれができます」と何とか付加価値を上乗せしようとしていくこと。ただそれって、トレンドの王道からすると脇道に逸れること。

よく比喩として「レッドカーペット」に例えられますよね。一番の王道、まっすぐと伸びるレッドカーペットを歩いていたはずなのに、自ら脇道に逸れて、どうでもいい砂利道に突っ込んでいくようなことはしない。どれだけ「王道」に向き合えるか。いかにブレずにやり抜けるか。結局はここが大事なのだと思っています。

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2本目は【9月19日(木)夜】に更新予定です!お楽しみに!


取材 / 文 = 野村愛


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時代は平成から令和へ。そして訪れる「2020年以降」の世界。2020年からの「10年」をいかに生きていくか。より具体的に起こすべきアクションのヒントを探る連載企画です。お話を伺うのは、常に時代・社会の変化を捉え、スタートアップと共に"一歩先”を見据えて歩まれてきた投資家のみなさんや、未来を切り拓く有志者のみなさん。それぞれが抱く「これから10年間で現実的に起こり得ること」と「新しい生き方」の思索に

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