盛り上がりを見せるD2C、それぞれの戦い方とは? 今回取材したのは「おやつのサブスク」である「snaq.me(スナックミー)」。彼らが作ろうとしているのは、「おやつの時間を買う」が一般的になる世界だーー。
[1]Webサービスのように「おやつ体験」を売る|スナックミー 服部慎太郎
[2]マーケットが無いなら作ればいい。おやつのサブスク「スナックミー」の戦い方
──そもそも、なぜ、これほどD2Cの流れが注目されていると思いますか?
そもそもの顧客体験として、店舗や百貨店でお話しをしながら買い、包み紙などを見て、後から体験を思い出すことがあったと思います。
その欲しい「物」が最短時間で届くECで購入は最適化され、体験の文脈が切られてしまった。
D2Cは、かつてあった実店舗での顧客接点に近づきながら、デジタルなECの機能を引き継いでいるのではないかと思います。
良いものを買うには「百貨店に行くのが当たり前」だった時代は、選択の余地がなかったんです。つまり、「物」と「サービス」がくっついていた。ECによって選択肢が増えて、ファッションにしろ何にしろ、良いものを行かずに買えるようになっていった流れがありますよね。
ただ、ECだけでは良い物を買う体験なり、理由付けなりが弱くなってしまった。その両方を併せ持つ存在として、D2Cが出てきて。あらゆる接点で、Web上で、ストーリーがしっかり伝えられるようになってきたのかもしれません。
たとえば、Amazonで「早く、便利に」物は買えます。彼らのサービス価値の最大化はそれを高めることにあった。ただ、「物を買う」には他の文脈もあるはずで。
そもそも、Amazonという巨人がいる市場で同じ土俵に上がるのは無謀ですよね(笑)。となると、僕らのようなスタートアップ的には、違う場所を探す必要がある。
snaq.meの競合でいえば、カフェやデパ地下のスイーツ、タピオカドリンクの店舗になるんじゃないかと思うんです。僕らのお客さまは「月に1回、自分へのご褒美がほしい」というニーズを持っていたりしますから。それらとお財布の出どころがきっと同じで、小腹を満たす機能とも違うはず。
たとえば、タピオカドリンクの店舗でも、そこで写真を撮れるくらい可愛いところがあります。僕らも箱のデザインやフォトペーパーで写真を撮ってもらえる意味では、店舗での体験をWebやサブスクリプションの形で最適化すると、どのようになるのかを設計しているんだと思います。
──とくに「お菓子」に着目された背景とは? Twitterではコーヒーが好きでD2Cも考えた、と。
コーヒー好き過ぎて、コーヒーD2C的なことも考えたことあるけど、世界中のロースターのコーヒーをそれぞれこだわりの淹れ方で飲みたい&新しいロースターの開拓が楽しい(ニッチすぎ)ので今のところ自分のニーズが満たされてしまっていて自分ではやってない。自分が本当に欲しいものじゃないと。
— hattori (絵文字)snaq.me | CEO (@haztr) November 13, 2019
もともとは自分が欲しいから作ったサービスで、その感覚はとても大切だと考えていて。
僕以外の創業メンバーからはよく「ターゲットは誰なの?」って、よく言われましたし(笑)。それでも、自分が最先端の顧客だと欲しいサービスはわかりやすい。結果、snaq.meはお客さまの95パーセントが女性になっていきました。
僕はコンサル業界出身なのもあって、ミクロの観点をつい忘れ、マーケットやニーズの規模から考えちゃったりする。特に、立ち上げのフェーズにおいて、熱量のあるお客様がつくまでは、どうしても博打的にサービスを作りがち。でも、すごく買ってくれる一人を基準にしたほうがスケールすることもあると思っています。
もうひとつ、自分が「業界的な負」に気づけるか。ここは運も大きいと思います。
たとえば、アメリカは眼鏡がすごく高価なんですが、D2Cで伸びた「Warby Parker」は、創業者が飛行機で7万円の眼鏡をなくした体験から、「バリューチェーンをぶっ壊して1万円ぐらいで眼鏡を届けよう」という悔しさから始まったそうです。
同じように、誰もが感じる不満が「業界的な負」と結びつき、ネットで崩せることでD2Cビジネスを始めることが多い。
新興市場のスケールって大きいですよね。メルカリは、初期には「ヤフオク!」など既存のオークションサイトと比べられ、シェアをいかに奪うかの論点で語られました。結果は、既存のマーケットを無視した曲線を描いて事業が成長しました。
僕らとしては、スケールの見込みはさておき、「おやつの時間を買う」という感覚が一般的になることを信じて取り組み続けるしかないのではないか、と。
みんながうまくいくと思っている市場の場合は、プレイヤーが多いと思うんです。たしかに、それに伴ってマーケットは大きくなるかもしれないですけれど、結局顧客の食い合いになることが多い。
単独の企業で大きくなっていく場合、そもそものマーケットが存在していないもの。僕らが目指すのは、「おやつ体験」のマーケットを作り出していくことですね。
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