「PMとはなんなのか、さっぱり分かりませんでした」。こう語ってくれたのは、freeeでPMをつとめる岡田悠さん。はじめてPMをつとめたプロダクトでは、300件の要望リストを地道に整理し解消。しかし、結果は振るわず事業撤退の危機に...。岡田さんはこのピンチをどう乗り越えた?
全2本立てでお届けします!
[1]闇雲にBacklogを追いかけてもダメ。タスク消化に追われ、成果が出せなかったPM1年目
[2]「くだらないこと」こそ、本気でやる。忘年会を盛り上げるために南アフリカまで飛んだPMの話
プロダクトマネージャーとしてはじめての仕事は、全然ダメでしたね...。そもそも、PMがなにをするべきなのか、さっぱり理解できてなかった。
最初に担当したのは、新規事業のプロダクトで。まず着手したのは、要望リストの整理でした。社内外から「とにかく機能が足りない!」と多機能を求める声がたくさんあって、Backlogには手つかずのタスクが300件くらいあったんです。競合企業との差分もすべて洗い出し、優先度を決定。開発を強化し、機能は増えたものの、結果は全くついてこなかった。結果、事業撤退の意思決定も迫られる状況に...。
プロダクトがどこに向かうべきなのか、ビジョンが描けていなかったんです。ただ闇雲にBacklogを追いかけても、どこかで見たことあるような”普通のプロダクト”ができるだけ。プロダクトは陳腐化し、誰のテンションも上がらず、社内でも存在感がどんどん薄れていく...。まさに「Backlogの負のループ」が起きていました。
【プロフィール】岡田 悠(おかだ・ゆう)
大学卒業後、投資銀行に就職。M&Aアドバイザリーに携わり、10ヶ月で辞める。その後1年ほど家業(イノシシ肉販売)を手伝う。freeeを知り、2014年6月に入社。入社後はマーケティング/サポート/バックオフィスなどを兼務。その後事業戦略を経てプロダクトマネージャーに。主に新プロダクトの立ち上げを担当。
プロダクトの道標となるビジョンを打ち出そうと、社内で議論を重ね、ブランド方針もリニューアルしました。ただ、これも、結果は好転せず...。
ビジョンを伝えても、みんな「ふ~ん」というリアクションで。誰にも腹落ちせず、ビジョンは絵に描いた餅になっていました。
改めて考えると、ビジョンに「ストーリー」がなかったんです。どんな事実があって、どうしてそのビジョンを掲げる必要があるのか。ユーザーのどんな負を解消できて、具体的にどう変わるのか。プロダクトの背景や思考プロセスがすっぽり抜けてしまっていた。
熱がじわじわと伝わっていくように、ストーリーテリングをする。
いまはストーリーを伝えるとき、気をつけている点が3つあります。
1つ目は、ユーザーを主語にして話すこと。ユーザーがどんな状況にいて、どんな課題を抱えているのか。実際にユーザーと一緒に業務をしたり、自分も当事者になったりしながら、ユーザーのリアルなインサイトを掴んでインプットするようにしています。
2つ目は、迷ったポイントを素直に話すこと。特に新しくサービスを立ち上げるときや大きな機能をつくるときは懸念点も隠さずに全部伝えるようにしています。チームのメンバーも「それも踏まえての意思決定なんだ」と納得感をもってもらいやすい。
3つ目は、何度も繰り返し伝えること。一回伝えただけでは覚えてもらえません。Slackでも、ミーティングでも、オンライン・オフライン問わずいろんな方法で伝えまくる。共有して終わり、には絶対しないようにしています。
ビジョンを掲げたり、伝えるためのストーリーを考えたり。日々無数に出てくるタスクに追われるなかで、時間の捻出に苦労する若手PMは多いと思います。
時間をかけるべきところにかけられるように、「その意思決定はインパクトが大きいかどうか?」は、常に意識するようにしていますね。
そこまで重要でない意思決定に関しては、誰かに意思決定を任せたり、直感できめたり。とにかく考えるコストを払わない。
日々選択の連続なので、上がってくることすべてに意思決定していたら時間が足りません。すべてに意思決定できる器用な方もいるかもしれないですが、僕の場合は辛くなっちゃうので...。大事な意思決定にだけ時間をかけられるようにしています。
「大事な意思決定か」どうか、選別する力を鍛えていくことも重要です。総合力っていうか、ユーザー理解もめっちゃ大事だし、事業的なことも理解していないといけないし、大量のインプットが背後にあった上で、これって大事なのかどうかっていうものをパッて考えないといけない。僕も全然まだまだ決断に迷うところがあるので、選別する力を磨いていかないといけないなと思っています。
>>> 後編|「くだらないこと」こそ、本気でやる。忘年会を盛り上げるために南アフリカまで飛んだPMの話
取材 / 文 = 野村愛
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