「映像」で世の中を変えていく。彼は本気だ。大川優介さん、23歳。大学はとっくに辞めた。1500名の映像コミュニティをつくった。会社も立ち上げた。彼が次にみる「風景」とはーー。
全2本立てでお届けします!
[1]映像に「自分」を刻め。映像クリエイター 大川優介の仕事論
[2]「動画でライフログ」は流行るか。Vlog 海外事例に見るムーブメントの兆し|大川優介
大川優介さん、23歳。SNSで注目を集める、映像クリエイターだ。
彼が撮るのは、感情表現の入り混じった大自然のドキュメンタリー映像。
言葉で語るより、まずは作品を見てほしい。
2018年には、自身の会社『TranSe Inc.』をスタート。
立ち上げたコミュニティ『TranSe Salon』には1500名以上が集い、映像について学ぶ。
「僕は誰かを楽しませるためじゃなく、ずっと自分のために撮っている」
彼は映像を通じて、どんな世の中をつくりたいのか。なぜそう思うようになったのか。彼の原点を辿るとともに、そのビジョンを追った。
よく“大川さんってYouTuberですか?”と言われることがあるのですが、自分では違うと思っていて。「表現」として、映像を撮っています。
もともとは、一本のサーフィン映像との出会いがきっかけだったんです。「人生変えられた」と言ってもいいくらい、めちゃくちゃ心を奪われた。
カップルがサーフィンをして楽しむだけの映像なのですが、とにかくハワイの海がきれいで痺れました。それに、映っている2人もすごく自然体で良かった。
当時僕はただの大学生だったのですが、趣味はサーフィン。僕の好きなハワイ、理想の日常がそこにあった。すぐにGoProを買って、マネして撮影してみたんです。これがすべての始まりでした。
やり始めたらどんどん面白くなっていって。大学を休学するほど映像の世界にハマってしまった。
でも、ぜんぜん後悔はしていないですね。もう毎日カメラと編集ソフトを触っていないと落ち着かない。
Premiere Proをいじり、分からないことがあればYouTube動画を見て勉強する。その繰り返し。独学で解決しないことは、制作会社でアシスタントとして働かせてもらって学ぶ。
当時の熱中は、間違いなく僕のルーツになっていると思います。
この頃には、少しずつ「仕事」としての映像も意識するようになっていきました。ただ、どうきっかけを掴んだらいいかわからない。
やっていたのが、「僕に撮影させてほしい」とTwitterやインスタのDMで売り込むこと。憧れのDJがいて、彼にも思い切ってDMをしてみたんです。「ぜひ僕に、映像を撮らせてください!」と。
すると「じゃあ。1回お願いします」とすぐ返事がもらえた。僕がSNSにアップしていた映像を見てくれたみたいでうれしかったですね。
そのDJの方にもらったギャラは3000円。安いと思うかもしれませんが、無名の僕にとって、この3000円ほど嬉しいものはありませんでした。映像制作でいただいた初めてのギャラ。趣味が仕事に変わった瞬間でした。
そこから食べていけるようになるために、思い切ってバイトも全部辞めました。当時、映像制作での収入は月5万円くらい。下手したら死にますよね。
でも、本気で映像を仕事にするなら今のままじゃダメだと思ったんです。自分を追い込んで映像制作にフルコミットしないと、これより先には行けない。
結果、その選択は正しかったと思います。徐々にCM制作など大きな仕事にも携われるようになって、最終的には、自分の会社を立ち上げるまでスケールすることができました。
20台前半で映像クリエイターとして仕事ができるようになって、周りからしたら「成功している」ように見えたかもしれません。
ただ……自分の中ではすごく葛藤していました。クライアントの意向に従って、求められた世界観の映像をつくることへの違和感。「自己表現」と「仕事」の折り合いを、うまくつけられなかったんです。
仕事を任せていただけることはもちろん非常にありがたいし、嬉しかった。
でも「僕がしたかったのはこれだっけ?」と、だんだん映像制作を心から楽しめなくなってしまった。掴みかけたはずの夢が、遠のいていくような感覚がありました。
自分にとって映像は、やっぱり「自己表現」で。どうあがいても、「誰かのために撮る映像」に心が揺さぶられない自分がいたんです。
会社の仲間と相談し、クライアント案件は少しずつ減らしていこうと決めました。少しでも早くゼロイチを生み出せる会社へと成長させられるよう、退路を断つ意味でも。
正直、僕のこの考えは浅はかだと思われるかもしれません。「たいした経験もないのに仕事を選んでいる」「わがままだ」と。
ただ一方で、テクノロジーが発達し、あらゆる仕事が自動化されていく今。僕たちは、心から「楽しい」と思えることを探し続けなければならないとも思うんです。
強い感性や情熱が宿らない仕事は、ロボットにできる。「人間がやるべき価値ある仕事」をするために、現代に生きる僕たちは何をすべきか。常に自分自身に問い続けていく必要があると思っています。
映像を通して、みんなが「主役」になれる社会をつくる。これがいま、僕が成し遂げたいことです。
日本人って、「外」に意識が向いている人が多いですよね。「誰かのために」「社会を良くしたい」といったポジティブな面だけでなく、他人の目ばかり気にしてしまうネガティブな面でも言えます。 人を大切にする教育は受けていても、自分を大切にする教育は受けていない。そんなイメージがあるんです。
そう気づくきっかけになったのが、あのサーフィン映像。海外の動画カルチャーでした。
自分の生活や思ったことを、ありのまま表現する。誰かと比べたり遠慮したりせず、自分が主役の世界をちゃんと生きる。「海外ではそうだよね」で終わらせたくない。日本でも必ず実現できるはずです。
日本に動画文化を広めることは、「自分を大切にできる人を増やすこと」と同義です。結局自分が幸せじゃないと、人を幸せにすることはできないから。もっと、良い意味で自己中な人が増えるように。これからも、映像で仕掛け続けていければと思います。
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