2020.02.13
映像に「自分」を刻め。映像クリエイター 大川優介の仕事論

映像に「自分」を刻め。映像クリエイター 大川優介の仕事論

「映像」で世の中を変えていく。彼は本気だ。大川優介さん、23歳。大学はとっくに辞めた。1500名の映像コミュニティをつくった。会社も立ち上げた。彼が次にみる「風景」とはーー。

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全2本立てでお届けします!
[1]映像に「自分」を刻め。映像クリエイター 大川優介の仕事論
[2]「動画でライフログ」は流行るか。Vlog 海外事例に見るムーブメントの兆し|大川優介

目に映る景色、感じたことを映像で表現したい

大川優介さん、23歳。SNSで注目を集める、映像クリエイターだ。

彼が撮るのは、感情表現の入り混じった大自然のドキュメンタリー映像。

言葉で語るより、まずは作品を見てほしい。

2018年には、自身の会社『TranSe Inc.』をスタート。

立ち上げたコミュニティ『TranSe Salon』には1500名以上が集い、映像について学ぶ。

「僕は誰かを楽しませるためじゃなく、ずっと自分のために撮っている」

彼は映像を通じて、どんな世の中をつくりたいのか。なぜそう思うようになったのか。彼の原点を辿るとともに、そのビジョンを追った。

僕はYouTuberじゃない。

よく“大川さんってYouTuberですか?”と言われることがあるのですが、自分では違うと思っていて。「表現」として、映像を撮っています。

もともとは、一本のサーフィン映像との出会いがきっかけだったんです。「人生変えられた」と言ってもいいくらい、めちゃくちゃ心を奪われた。

カップルがサーフィンをして楽しむだけの映像なのですが、とにかくハワイの海がきれいで痺れました。それに、映っている2人もすごく自然体で良かった。

当時僕はただの大学生だったのですが、趣味はサーフィン。僕の好きなハワイ、理想の日常がそこにあった。すぐにGoProを買って、マネして撮影してみたんです。これがすべての始まりでした。

大川さんが影響を受けた、ハワイのサーファー「ジェイ・アルヴァリーズ」の作品。(参照:Jay Alvarrez back HOME (Alexis Ren)

やり始めたらどんどん面白くなっていって。大学を休学するほど映像の世界にハマってしまった。

でも、ぜんぜん後悔はしていないですね。もう毎日カメラと編集ソフトを触っていないと落ち着かない。

Premiere Proをいじり、分からないことがあればYouTube動画を見て勉強する。その繰り返し。独学で解決しないことは、制作会社でアシスタントとして働かせてもらって学ぶ。

当時の熱中は、間違いなく僕のルーツになっていると思います。

憧れのDJの撮影、DMで掴んだチャンス

この頃には、少しずつ「仕事」としての映像も意識するようになっていきました。ただ、どうきっかけを掴んだらいいかわからない。

やっていたのが、「僕に撮影させてほしい」とTwitterやインスタのDMで売り込むこと。憧れのDJがいて、彼にも思い切ってDMをしてみたんです。「ぜひ僕に、映像を撮らせてください!」と。

すると「じゃあ。1回お願いします」とすぐ返事がもらえた。僕がSNSにアップしていた映像を見てくれたみたいでうれしかったですね。

そのDJの方にもらったギャラは3000円。安いと思うかもしれませんが、無名の僕にとって、この3000円ほど嬉しいものはありませんでした。映像制作でいただいた初めてのギャラ。趣味が仕事に変わった瞬間でした。

そこから食べていけるようになるために、思い切ってバイトも全部辞めました。当時、映像制作での収入は月5万円くらい。下手したら死にますよね。

でも、本気で映像を仕事にするなら今のままじゃダメだと思ったんです。自分を追い込んで映像制作にフルコミットしないと、これより先には行けない。

結果、その選択は正しかったと思います。徐々にCM制作など大きな仕事にも携われるようになって、最終的には、自分の会社を立ち上げるまでスケールすることができました。

+++

僕は、「誰かのための映像」を作れない

20台前半で映像クリエイターとして仕事ができるようになって、周りからしたら「成功している」ように見えたかもしれません。

ただ……自分の中ではすごく葛藤していました。クライアントの意向に従って、求められた世界観の映像をつくることへの違和感。「自己表現」と「仕事」の折り合いを、うまくつけられなかったんです。

仕事を任せていただけることはもちろん非常にありがたいし、嬉しかった。

でも「僕がしたかったのはこれだっけ?」と、だんだん映像制作を心から楽しめなくなってしまった。掴みかけたはずの夢が、遠のいていくような感覚がありました。

自分にとって映像は、やっぱり「自己表現」で。どうあがいても、「誰かのために撮る映像」に心が揺さぶられない自分がいたんです。

会社の仲間と相談し、クライアント案件は少しずつ減らしていこうと決めました。少しでも早くゼロイチを生み出せる会社へと成長させられるよう、退路を断つ意味でも。

正直、僕のこの考えは浅はかだと思われるかもしれません。「たいした経験もないのに仕事を選んでいる」「わがままだ」と。

ただ一方で、テクノロジーが発達し、あらゆる仕事が自動化されていく今。僕たちは、心から「楽しい」と思えることを探し続けなければならないとも思うんです。

強い感性や情熱が宿らない仕事は、ロボットにできる。「人間がやるべき価値ある仕事」をするために、現代に生きる僕たちは何をすべきか。常に自分自身に問い続けていく必要があると思っています。

+++運営する動画好きのためのコミュニティ『TranSe Salon』は、立ち上げから2年弱で会員数1500名超。「TranSe Inc.をアップルのような会社にしたい」と大川さんは語る。「“自分たちの力”で新しい価値を生み出せるよう、オフィスもあえて他社に赴きにくいアクセスの悪い場所にしました」と教えてくれた。

誰もが「主役」を生きられる世界を

映像を通して、みんなが「主役」になれる社会をつくる。これがいま、僕が成し遂げたいことです。

日本人って、「外」に意識が向いている人が多いですよね。「誰かのために」「社会を良くしたい」といったポジティブな面だけでなく、他人の目ばかり気にしてしまうネガティブな面でも言えます。 人を大切にする教育は受けていても、自分を大切にする教育は受けていない。そんなイメージがあるんです。

そう気づくきっかけになったのが、あのサーフィン映像。海外の動画カルチャーでした。

自分の生活や思ったことを、ありのまま表現する。誰かと比べたり遠慮したりせず、自分が主役の世界をちゃんと生きる。「海外ではそうだよね」で終わらせたくない。日本でも必ず実現できるはずです。

日本に動画文化を広めることは、「自分を大切にできる人を増やすこと」と同義です。結局自分が幸せじゃないと、人を幸せにすることはできないから。もっと、良い意味で自己中な人が増えるように。これからも、映像で仕掛け続けていければと思います。

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>>>「2」「動画でライフログ」は流行るか。Vlog 海外事例に見るムーブメントの兆し|大川優介


写真 = 黒川安莉
取材 / 文 = 長谷川純菜


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