2020.04.17
人類の危機を救うための義勇軍をつくろう。キャディが取り組む、人工呼吸器・マスク製造機の生産支援

人類の危機を救うための義勇軍をつくろう。キャディが取り組む、人工呼吸器・マスク製造機の生産支援

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、製造業スタートアップ『CADDi(キャディ)』が「人工呼吸器」や「マスク製造機」の生産支援を発表。立ち上げからわずか1週間で医療部品製造・機械部品製造に特化した加工会社100社以上のネットワークを活用した支援プロジェクトを始動。代表 加藤勇志郎さんに取り組みについて伺った。

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医療部品・機械部品会社100社以上と連携。

製造業領域の「特注品のAmazon」として、自動見積・受発注プラットフォームを提供しているCADDi(キャディ)

2020年4月、同社は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、人工呼吸器やマスク製造機など医療物資支援をスタート。

わずか1週間で、全国の医療部品製造・機械部品製造に特化した加工会社と100社以上と連携。医療機器などの「製造メーカー」から受注を受け、「部品供給・加工会社」の選定・納品を支援していく。また、自社だけでは解決できない医療機器製造の課題を解決していくために、「COVID-19対策医療支援物資支援室」なるプロジェクトを立ち上げた。

+++新型コロナウイルス(COVID-19)対策における医療物資供給特別支援プログラム特設ページ

「世界中から日本に人工呼吸器の製造、部品調達の依頼が殺到しています。ただ、全く追いついていないのが現状です」

CEO 加藤勇志郎さん (29)は、医療物資不足の現状を情報収集するなかで”「キャディ」としでできることがある、その全てやろう”と決意を固めた。

「今やらなくて、いつやるんだ、と奮い立っています。今こそ日本のモノづくりの強さで世界の危機を乗り越える時であり、製造業のプラットフォームとしての使命感に燃えています」

すでに人工呼吸器メーカーに数千個の部品供給を実施したキャディ。世界の危機に挑む取り組みを追った。


【プロフィール】加藤勇志郎 キャディ株式会社 代表取締役CEO
東京大学卒業後、2014年にマッキンゼーアンドカンパニーに新卒入社。2年半後の2016年に同社史上最年少でマネージャーに就任。シニアマネージャーとして、製造業の全社調達改革領域及びIoT/AI領域をリードするほか、グローバル戦略構築、新規事業策定などに従事。大手メーカー15社程度の調達改革に従事した結果、同分野への課題意識から2017年末にキャディ株式会社を創業。

すでにベトナム向けに人工呼吸器5,000台の各種部品製造を支援へ

ーまず最初に、具体的な支援内容から教えてください。

まず「人工呼吸器」や「マスク」の製造機が世界的に足りていません。また、製造機を作ろうにも部品の供給が全く追いついていない状況です。

そこで我々としても、人工呼吸器や、マスクなど医療機器・用品の製造装置メーカーへの部品供給を支援していくことにしました。具体的には、それら装置の金属・樹脂加工部品の製作を請け負い、その部品が製造・加工できる最適な会社を選定。必要な部品の加工を発注し、検品した上でメーカーに部品を納品します。

2020年4月3日、この支援のため医療機器メーカーをはじめ、関係者に呼びかけをはじめました。既にベトナム向けに人工呼吸器5,000台の各種部品製造を支援し、医療機関向けの空気清浄機も需要急増で増産支援しています。

世界的に部品供給網が逼迫しているいまこそ、これまで培ってきたキャディの強みを発揮するとき。高品質な部品を最短で供給し続ける。そうすることで、1日でも早く必要な物資が医療機関や患者様のもとへと届けられるようしていければと動いていきます。

世界中から日本に生産依頼が殺到

ー そもそもなぜ人工呼吸器をはじめとする医療物資の生産支援に取り組もうと?

現在、世界中から日本に「人工呼吸器の生産依頼」が殺到しています。とくに海外だと「トリアージ」と呼ばれる人工呼吸器が足りず、目の前の患者を見殺しにしないといけない事態も発生している。そういった危機感の高い国々が、世界中の人工呼吸器を何とか確保しよう動いているんです。

日本には人工呼吸器メーカーが5~10社ほどあるのですが、大手は1~2社程度。従業員100名以下、通常では月20~30台の人工呼吸器の生産を担っている小規模のメーカーに、何十万台もの生産依頼が届いている状況があります。当然、全く捌ききれていません。海外からの問合せに慣れていない会社も多く、現場は頭を悩ませています。

日本でも少しずつ増産体制を確立していく動きがありますが、海外と比べるとかなりゆるやかです。幸いにも感染数が諸外国に比べ少ないので、当たり前ではありますが、このタイミングでやっておかないと、危機的状況になってからでは遅い。そのためにも、キャディでできること全てをやろうと思っています。

人類の危機に立ち向かう「同志」を集める

ー 支援をスタートして1週間。取組を進めるなかで、見えてきた課題はありますか?

人工呼吸器やマスク製造機の増産体制を確立するには、部品供給だけでなく、「足りないもの」が無数にあります。

まず何万単位で「人工呼吸器」や「マスク製造機」を作るには、部品を仕入れる段階で発注が必要です。発注に必要な巨額の資金はメーカーにはありません。

また、部品を組み立てる「人員」も足りていませんし、工場もたりない。さらには、購入品と呼ばれるバッテリー関連製品の仕入れはすでに海外に抑えられ始めており、入手が困難になっています。

とはいえ、全体としていかに解決していくか。深くて大きな課題だからこそ、世界中から同志を集結し、みんなで解決したい。そこで今回プロジェクトという形で発信をはじめました。人類の危機に立ち向かうための”義勇軍”を作るイメージです。

ー特に助けてほしいこと、得たい協力はどういったところでしょうか?

3つあります。

1つはメーカーと連携していくにあたり、資本力のあるプレーヤーの協力がほしいです。それこそ孫さんではないですが、資本を持っている人は重要なプレイヤーになる。起業家の方々と連携できれば、お金やネットワークの面で一気に前に進めやすくなります。

2つめは、製造機器メーカー各社さんとの連携です。人工呼吸器だけでなく、マスク製造機、防護服の製造機、ゴーグル製造機…さまざまな製造機が必要になってきます。そういった製造メーカーにはぜひ声をかけていただきたいです。キャディとしてゼロからつくるわけにはいかないので、つながりを作らせていただきたいです。そのつながりさえあれば、販売先、供給先のネットワークはつながっていきているので支援の規模が拡大できると見込んでいます。

最後が部品メーカーの方々と連携させていただきたいです。とくに電子部品の調達はキャディがやっていない領域で、入手が難しい。モーター類、センサー類、バッテリー類、LCDなどの電機品・電子部品が圧倒的に足りない。その仕入れのために力を貸してほしいです。

使命感がある、一切の迷いはない

ー 最後に、プロジェクトにかける加藤さん自身の思い、原動力を伺いたいです。

今やらなくて、いつやるんだ、と奮い立っています。今こそ日本のモノづくりの強さで世界の危機を乗り越える時です。製造業のプラットフォームとしての使命感に燃えています。

キャディをやっているのはなぜなのか。人として生きているのはなぜか。こう考えたときに、利益をあげる以上に重要なことがあります。

キャディは、モノを提供し、患者様に対してリアルなインパクトを出せる会社だと自負しています。日本で唯一のポジションといってもいい。使命感がある。迷いはないですね。あとは今、できることを全力でやるだけ。

僕らも足りないピースは死ぬほどあるんですけど、発信したことで、メーカーの受注につながりました。ちゃんと共鳴してくださる方々いると実感できました。

潜在的に考えていても、顕在化させていく人がまだ少ない。そのファーストムーバーになれればと考えています。繰り返しになりますが、大手メーカー、町工場、部品や組立メーカー、自治体・公的機関、医療機関の方々などぜひキャディまでお声がけください。また、起業家などでご協力いただける方ぜひご支援もお願いしたいです。


取材 / 文 = 野村愛


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