2020.06.26
「SaaSにしか投資しない」と決めた日、あるVCの志|前田ヒロ

「SaaSにしか投資しない」と決めた日、あるVCの志|前田ヒロ

前田ヒロさんは「SaaSスタートアップ」への投資を専門とするベンチャーキャピタリストだ。なぜSaaSなのか。そもそものきっかけとは。そこには「SaaSで日本を救う。未来を切り拓く」という揺るぎない志があったー。

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全3本立てでお送りいたします。
【1】コロナショックで勝つSaaS、3つの条件|前田ヒロ
【2】新型コロナで変わる「法人営業」のあり方|前田ヒロ
【3】「SaaSにしか投資しない」と決めた日、あるVCの志|前田ヒロ

整合性のあるビジネスモデルに惚れ込んだ

そもそも「SaaS」に特化し、投資していくようになったきっかけとは?

VCとして10年くらいやってきたのですが、CtoCも、BtoCも、DtoCも、BtoBも、さまざまなビジネスモデルの企業に投資をしてきました。そういった中、最も矛盾が少ないビジネスだと感じたのがBtoB SaaSでした。

たとえば、「買ってもらっておわり」の1回きりの関係性のビジネスモデルだと、サービスを提供する人、お金を払う人、利用する人が、それぞれ別々だったりもして。そもそも、この3者間の関係性を作るのが難しいビジネスモデルもあります。

ただ、BtoB SaaSは、「サービスを使う人」と「お金を払う人」が一緒です。さらに継続が必要なビジネスモデルなので、サービスを提供する側として「いい関係性を築いていこう」「新しい情報や事例を紹介して役に立とう」「お客さんを成功させよう」というインセンティブが働く。なので、整合性のあるビジネスモデルに惚れ込んだ、と言っていいと思います。

「SaaSと心中する」と覚悟ができた、『SmartHR』との出会い

SaaSの魅力に気づかせてくれたのは、2012年に投資した『FOND』という会社の福山太郎さん。日本人で始めて、Yコンビネーターに採択された方なのですが、彼と話していくなかで、SaaSに惹かれていきました。

そしていよいよ「SaaSと心中しよう」と(笑)覚悟ができたのは、2015年に投資した『SmartHR』です。従業員としては代表の宮田さん含めて3人の時。そこからの彼らの成長、会社の伸びを見て、SaaSの美しさを改めて感じました。今では社員も200人くらいいるので、だいぶ人が増えました。

ヒロさんから見たときの『SmartHR』の強さとは?

代表である宮田さんもそうなのですが、まず組織全体として「自分たちの領域で先端をいく人たち」が多い。そういった志のなかで仕事をしている人たちばかりなんですよね。たとえば、オンラインセールスの先端を行く人、マーケティングで挑戦的な取り組みをする人、カスタマーサクセスで一番多くの事例を持つ人など。これは彼らのスーパーパワーかもしれないですね。

日本を救うために、SaaSを普及させないといけない

ヒロさんは自身のミッションをどう捉えているか、教えて下さい。

壮大な話かもしれませんが、日本という国を救うために、SaaSを普及させないといけないと思っています。大きな理由として、データを見ても日本は他国と比べて生産性が低い。下から数えて何番目という状況です。

特に労働人口が減る中で、日本は世界一の生産性を持つ国にならないといけないと思うのです。それを助けるのが、SaaSだと思っています。SaaSは自分の働き方を変えるきっかけになります。ワークフロー、時間の使い方、どうすれば効果的にアウトプットを出せるのか。また、顧客の満足度を高め、自分の幸福度を上げるきっかけを作る、そんなプロダクトです。

SaaSが普及すればするほど「自分」や「自社」を見直す会社が増えます。結果として生産性向上につながっていく。

これまで「テクノロジー」という言葉がありましたが、今や全てのものがテクノロジーですよね。PCも、携帯も、製造業も、SaaSも、テクノロジーです。SaaS自体も同じように、すべてがSaaSになり、区別はなくなっていく。

「サブスクリプション」というビジネスモデルも、じつは17世紀から活用されている。人と人の価値交換として、サブスクリプションは効果的で矛盾がない。300年を通して証明されています。このSaaSの波は50年、100年どころの話ではなく、人間社会が存在している限り、永遠に続くとさえ考えています。

SaaSが普及し、生産性があがれば、時間がもっと余るかもしれません。自ら取り組むべき目の前の問題の緊急性が下がれば、人間はもっと未来について考えられるようになります。そこで生まれた時間を活用し、より大きな課題、より大きな需要を取りに行くチャンスが生まれるでしょう。

最後に、ヒロさんにとって「仕事」とは?

僕にとっての仕事は、自分が好きなことと、世の中が求めていること、その中間に立ち、価値を発揮していくことだと思います。

自分が好きなこと、世の中が求めること、それぞれに円があり、被る部分が、僕個人と市場のフィットする部分。それが見つけられれば、自分が生きている限り続けられる仕事になると思っています。

最近だとYouTuberもそうですが、ある意味、仕事っぽくないものが仕事になってきていますよね。「仕事」の定義が変わってきている。自分が無理をしなくても、世の中が求める価値を生み出せるか。自分が遊びだと思っていることが、社会に求められている状態はすごく幸せで。それを見つけると、ずっとやり続けられるものになっていくはず。ぜひ若い皆さんにもそういった「仕事」を探してほしいなと思います。



全3本立てでお送りいたします。
【1】コロナショックで勝つSaaS、3つの条件|前田ヒロ
【2】新型コロナで変わる「法人営業」のあり方|前田ヒロ
【3】「SaaSにしか投資しない」と決めた日、あるVCの志|前田ヒロ

※本記事は、6月8日に実施した公開取材『コロナ時代を生き抜く方法』を編集したものです。公開取材の模様はYouTubeチャンネル「キャリアハック」でもご覧いただけます

【ノーカット版(62分)はこちら】


取材 / 文 = 白石勝也


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