2020.08.03
今が「ドローン前提社会」の礎を築く、その時。千葉功太郎の志

今が「ドローン前提社会」の礎を築く、その時。千葉功太郎の志

ドローン産業を興す。日本をいち早く「ドローン前提社会」にーーそのためにアクティブに行動し続ける投資家、千葉功太郎さんの「志」に迫る。

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※本記事は、6月23日に実施した公開取材『ドローンで僕らの暮らしはどう変わる?新型コロナで見えた可能性』を編集したものです。


2本立てでお送りいたします。
【1】今が「ドローン前提社会」の礎を築く、その時。千葉功太郎の志
【2】口だけの評論家にはならない。航空パイロットの免許取得、空飛ぶ投資家「千葉功太郎」の白熱教室!

新型コロナ、人類は「空」の活用で進化した

まず今回の新型コロナウイルス感染拡大にあたり、人類としては「空」の活用において一歩進化した、と捉えています。苦境に立たされた時の人間の知恵、アイデア、そして実行力は本当にすごい。理論としては可能だったが、社会実装が難しかった、そういったことも次々と実現されたと感じています。

具体的には、砕けた言い方をすると、世界各国でドローンは「こわい使い方」と「ほのぼのした使い方」がありました。

「こわい使い方」でいうと、一つにはロックダウンの警備監視。外出禁止令が出ている中、外出している市民を見つけたら、ドローンが怒りに行く。「人間が操縦するパターン」ならスピーカー越しに「駄目ですよ」と警告。AIはそれを自動がやる。これは「監視社会」を彷彿とさせるので「こわい使い方」と感じた人もいたかもしれません。

一方、「ほのぼのした使い方」だと、お母さんに会ってプレゼントを渡したいけど会えないので、ドローンで「花束」を窓から届ける、といったもの。また、ドローンで犬の散歩する動画などもTwitterでバズっていました。

より直接的に、新型コロナウイルスの感染拡大防止に、ドローンを役立てたケースでいえば、街全体への「消毒剤散布」。中国の一部地域で実際に行われていましたよね。技術としては「液体を空から均等に吹き付ける」というもの。農業における「農薬」や「肥料」を撒くのとほぼ同じ原理。そのまま農業用ドローンが使われたケースも多かったようです。

もうひとつ、ユニークな活用例は、中国やシンガポールなどで「新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための行動管理アプリ」の宣伝にドローンが使われていました。アプリのQRコードを掲げたドローンを飛ばし、 「皆さん、このアプリをダウンロードしてくださいね」と宣伝に使っていました。

世界を見渡してみると、確実に利活用は加速したといっていいでしょう。DRONE FUND(※)による調査によれば、「コロナ感染者の数が多い上位43カ国の中で、29カ国がドローンの利活用をしている」といった結果になりました。

人と人の非接触が推奨されるなか、ロボットで何とかしよう、と。とくに「空」においては自然と「ドローンを使おう」となっていったのだと思います。

+++DRONE FUND(※)千葉功太郎氏、大前創希氏により設立されたドローン・エアモビリティ特化型VC『DRONE FUND』。画像は取材時点での投資先一覧。

日本で「社会実装」されるドローン

たとえば、日本でも、ステイホームのおかげで『UberEats』は利用者数を伸ばしたと聞きます。とくに「玄関の前に置いておく」というオプションが追加され、使っている人も多いはず。あれがドローンで運ばれてきたら、本当に便利ですよね。

また、宅配においても「置き配」が当たり前に。ドローン宅配における壁の一つが受取時の「判子・サイン」だったのですが、解決された。この文化はドローンの普及に直結すると考えています。

「接触」から「非接触」へ。「密」から「疎」に。ドローンに物を運ばせるニーズ、期待は急激に高まっていくでしょう。

DRONE FUND投資先である「エアロネクスト」は、ANAホールディングスと業務提携。「空の産業革命レベル4(有人地帯での補助者なし目視外飛行)」に対応する物流ドローンの共同開発を行う。ユニークなのがどういう状態でも荷物の水平をキープして飛行できる、というところ。「蕎麦屋さんのバイクが出前で使っていた「おかもち」ってありますよね。あれの現代版といえます。コンセプトは“ラーメンやそばをつゆ入りで運べる”こと。エアロネクストにおける機体構造設計技術「4D GRAVITY」が採用されています」と千葉さん。

日本は「ドローン」ルールの先進国

もしかしたら一般の方には「日本はドローンに厳しい国」というイメージがあるかもしれません。私はむしろ逆だと捉えています。

手続きさえすれば個人でもかなり自由に飛ばすことができて。ニュースでも話題になりましたが、まもなくドローンの登録制度も始まります。これはドローン購入時に「機体番号」と「個人情報」を紐づけ。登録するもの。実現するとさらに自由度が上がると考えています。

じつはこれだけ法整備が進んでいる国も珍しい。というのも、5年ほど前に首相官邸にドローンが墜落する事件がありましたよね。おそらくたぶん世界でも先駆けて「国の重要な機関にドローンが入り込む」というセキュリティ上、極めて重要な事案が発生した。先進国において一番といえるくらい早くにドローン関連の法律ができました。あの事件をきっかけに、むしろ「ルール」「制度」の整備が進み、ある意味、日本は「ドローン」ルール整備の先進国となったのです。

2022年度、既に「ドローン」は空を飛び回っているかもしれない。

法整備が進むと何がいいのか。企業が事業としてやりやすい、ここに尽きます。申請し、受理されれば、かなり広い使用用途でドローンを飛ばせる国になった、というわけです。

ユーザーの総人口で見た時にも、宅配、農業、林業、土木・建設、鉄鋼…と、産業界で使う人、使いたい人が圧倒的なボリュームを占めます。「飛ばしても大丈夫」という国からのお墨付きが必要なのです。そうして初めて企業が安心してそこに投資ができる。こういった環境が整ってきている、とも言えます。

諸外国だと明確なルールがないケースも多く、自由気ままに誰でも飛ばせるが故に無法地帯。企業が大規模に利用する上で国から急にストップがかかるなどのリスクがあり、思い切った投資ができないケースも。ここは日本にアドバンテージがあると私は捉えています。

また、国として「ドローンを産業として立ち上げていく」動きがあります。昨年の6月、政府が閣議決定で、2022年度までにいわゆる「レベル4」と呼ばれているのですが、「都市部における自動自立運転のドローンの飛行を認めます」となっている。そのための法整備を進めます、という閣議で決定しました。

+++(※)経済産業省『空の産業革命に向けたロードマップ』より。2019年7月現在はレベル3の、「無人地帯で目視外飛行」を目指すフェーズ。実際に、2018年には商用利用に向けて「郵便局間の輸送」に関する実証実験も完了。次はレベル4(「目視外」の、人がチェックしていない環境の中で市街地を飛ぶ)という状態を目指していく。

ではレベル4は、どういう世界観か。ざっくり言うと「東京の空の上に自動運転のドローンがいっぱい飛んでる。ものを運んだり、宅配だったりっていう活用がはじまっていく」という状態です。

これは多分先進国で日本が先んじて発表しており、かなりセンセーショナルなこと。ですが、全く話題になっていない(笑)日本ってじつはロボティクス分野で諸外国と戦えるくらいの、強い日本を作っていくための意思決定も多くしていると私は思っていて。そういったニュースも、もっとポジティブに報道されるといいですよね。

超過密都市「東京」での暮らしは、ドローンでどう変わる?

東京でいかにドローンを普及させていくか。ここも重要なテーマの一つです。たとえば、飛行機でいえば「羽田ルート」ができ、話題となりましたが、「ドローン」の飛行ルートの検討はほとんど進んでいません。

東京はご存知の通り超過密都市です。もちろん新型コロナウイルスの影響によって今後どうなるかはわかりませんが、この「過密」状態は、すぐには解消されないと考えています。

都市計画としても、土地が限られているので、地上だと高層ビルを建設する、もしくは地下を使うしかない。それにも限界があります。そして何より移動手段、モノの輸送手段が、渋滞との戦いになっていく。

これ以上、地上と地下の交通網を使うと、人口に対して機能しなくなってしまう。それを「上」に持っていく。空間を圧縮して使う。「移動」にせよ「輸送」にせよ「空」を使う。これが東京が生き残っていくために残された一つの道だと思っています。

また、エアモビリティが普及すると、関東の地価、土地の価格も変わってくるのではないかと考えています。

・自然豊かな場所
・エアモビリティ的に都心に1時間以内で通える場所。

この辺りの地価は高くなっていくかもしれません。たとえば、箱根とか、那須とか、軽井沢とか。新しい新しい価値が生まれるかもしれない。たとえば、箱根の温泉付きの一軒家に普段住んでいて、エアモビリティで45分で都心にいく。

実際、リモートワークが進んだことで、最近私のタイムライン上で「軽井沢に住み、東京には週2日だけ行く」といった暮らしをしている人も何人かいて。ますますこういった働き方も現実的になっていくはずです。

ドローン専用の運行管理システムを構築していく

もし仮に人がドローンに乗る、いわゆるエアモビリティが普及すると事故の懸念も一層高まります。そこは、ドローン専用の運行管理システムをいかに構築するかにかかっていて。

たとえば、国内において旅客機の事故はほとんど起きていません。これだけ多くの飛行機が飛んでいるにも関わらず、です。

これは空港管理システムの進化と、高度な航空交通管制のオペレーションがあってこそ。ある意味、これと同じものの「ドローン版」を日本でも作っているところです。

もう一つ、安全に運行するために欠かせないのが、ドローンの「道」です。

通っていい場所、ダメな場所、どの高さで飛ぶか。上り線、下り線、あるいは「低速用ドローン」、「高速用ドローン」といったように、空中に「道」を作っていく。

実際、飛行機でも、3万フィート、3万1000フィート、3万2000フィート…といったように1000フィートごとにコースが分かれています。そこに「下り線」「上り線」など決まっており、ぶつからないように運行管理しています。これはそのまま応用できるはずです。

自動車の「道」と違って、何層にも「上」につなげていけるのがポイント。たとえば、現在の法律では地上150mまでドローンが飛んでいいのですが、5mごとに道を作るとしたら30階層にできますよね。

「ドローン」という言葉さえなくなる「前提社会」を築く

もしかしたら、このドローンが飛び交う世界をまだ「SFの世界」と思っている方もいるかもしれませんが、すでに「空の移動」でいえば、Uberが『UberAir』を発表し、実証実験をスタートさせていくとしています。

アプリで迎えを呼ぶ。最寄りのビルの離発着ポートが案内され、約5分で Uber Air の機体が飛んできて、自動運転で目的地まで連れてってくれる。

これは「移動の選択肢」が増えるということでもあるのです。たとえば、六本木から新宿まで、行きたい時に

・Uberの車版なら渋滞も加味して45分かかり、料金は2500円
・UberAirなら空を飛んで5分で4500円

こういった選択肢がある、というのが重要だと考えています。

モビリティは、必ず市場のニーズによって棲み分けられていきます。良い事例が、新幹線と飛行機ですよね。たとえば、東京から大阪へ行く時、「新幹線」は主な移動手段になりましたよね。一部、深夜バスに乗る方もいますが、それは値段が圧倒的に安いから。基本的に新幹線です。

時代的には、その次に「飛行機」が出てきたわけです。羽田から伊丹空港まで飛行機が飛んでいて、圧倒的に速く1時間くらいで行けます。ただ、現在、飛行機に乗る人と、新幹線に乗る人は、共存しています。なぜなら値段も違うし、用途も微妙に違うからです。このようにしてエアモビリティも飛行機など既存の移動手段との棲み分けが自然とできてくるはずです。

ただ、私たち『DRONE FUND』が掲げているテーマとしては「ドローン前提社会」なので、じつはこういった「ドローン談義」さえもしない社会の礎を作っていきたいのです。

たとえば、「インターネット」や「World Wide Web」における概念そのもの、仕組み、言葉も、当たり前過ぎて、あまり使わなくなってきていますよね。どんなサービスか、どんなことをやるのか、むしろそっちのほうが注目される。これが「前提社会」です。ドローンが飛んでることに、違和感がなくなる。ドローンという言葉がさえもなくなる。そうなる日も遠くないはずです。


取材 / 文 = 白石勝也


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