「人生の5分の1を捧げられることにだけ、時間を割くべき」こう語ってくれたのが、井上一鷹さんだ。「集中力」のプロであり、ソロワーキングスペース『Think Lab』取締役である彼。ウィズコロナ時代、いかに働き、いかに生きていくか。そしてどう働き方の未来を切り拓くか。井上さんと共に考えていこう。
全3本立てでお送りいたします。
【1】「テレワークがつらい…」の正体、そして対処法|井上一鷹
【2】集中力はつくれる。テレワークで活躍するための必勝法|井上一鷹
【3】「何でやってるんだろう」は危険信号。やりたいことで人生を埋め尽くす、井上一鷹のキャリア論
前回「働き方が選べる時代になる」というお話がありました。企業側の対応、変化も求められていきそうですね。
そうですね。これまで、会社は従業員の給料を決める前に、販管費としての賃料があり、「こういう場所で働いた方がいいだろう」を決めていたわけですよね。
たとえば、東京23区内に本社がある会社だと、オフィス賃料、設備の償却費、設備工事費、光熱費、ネットワーク費用…それらに加え、交通費を入れると従業員1人にだいたい月7万円くらいはかかっていました。
つまり、従業員が毎月手にする給与は、この「7万円」が天引きされてきたようなもの。もちろん試算なのでざっくりですが、一旦そう考えてみましょう。テレワークになると、その「7万円」のコストが毎月浮くわけです。
「給与から7万円が引かれるが、オフィスで働ける」
もしくは、
「7万円をわたすのでファシリティは全てあなたに任せる」
なのか。
これを選べることがスタンダートになるかもしれません。
一見すると後者のほうがいいようにも思えますが、極端な話、月7万円を給料に上乗せするので、あなたが一番最もパフォーマンスを発揮できる環境を自分で整えてくれ、ということ。リモートでもいいし、ワークスペースを使ってもいい。「あなたを信じて7万円を渡します」と。
ミッションへの寄与度、契約形態にも関わる部分ですよね。業務委託を含めて、「ミッション型」で動く社員が多い企業では、個々がファシリティを選べるようになるかもしれません。ただ、企業との関係性はドライになっていく。一方、ウエットな関係性で「密」にやるならば、これまで同様「主な仕事を正社員にさせ」引き続き「オフィスへの出社」となる。
この2極化が進むと思います。
ただ、どっちがいい、悪いではありません。どちらでもいい。どちらがその企業のビジネス、従業員・メンバーに向いているか?でしかありません。
そして「働く側」としては選択肢が増えた時代に、何を選ぶのか。なぜ選ぶのか。どういったスタンスの会社で働くか、何のための仕事をするのか。ここに尽きると思います。
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何を選び取るのか。そして健やかに働き、生きていく上で、井上さんが大切だと思う考え方があれば教えて下さい。
すごくシンプルに「やりたいことをやる」だと思います。
「1万時間の法則」を是とするなら、取り組めるものって、人生で5個しかありません。
人間が集中できるのは、1日4時間と言われていて。1年間、頑張ってせいぜい1000時間くらい。人生100年時代といっても、50年くらいしか仕事に費やせない計算です。そう考えると人生において「5万時間」、つまり5個しか集中できる時間はない。
もっと簡単に言いましょう。今やっていることに、人生の5分の1を捧げられるか。それ以外のことに割く時間は、人生には本来ないんです。
「何でやっているんだろう」と自分が感じることには一切フォーカスしない方がいい。周りから鼓舞され、受動的に突っ走っても、続きません。人はそれほど強くない。
「やった方がいいかな」とか「できるならやろう」とか、「can」と「should」を言っていると長続きしません。何より「疲れた」となってしまいますよね。
「努力は夢中に勝てない」という言葉は本当にその通り。なぜ自分がやりたいのかわからないくらい「やりたいこと」だけやる。それしかないと思います。「will」だけで動く。これなら1人だろうが突っ走れます。
1人でいる時間が増え、テレワークによって物理的にも「個」として立たないといけなくなりました。主体性を持って走れるか。走れているか。改めて問われていくのだと思います。
撮影:栗原洋平
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