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元編集者が作ったSNS《Sumally》は、いかにしてキャズムを超えるのか?

2012-07-10

元編集者が作ったSNS《Sumally》は、いかにしてキャズムを超えるのか?

人とモノをつなげるという全く新しいSNS《Sumally》。チームを率いるCEOの山本憲資さんは元コンデナスト・ジャパンの編集者だ。異色の経歴を持つ彼がどのようにWEBサービスを生み出し、ドライブさせていったのか。彼のとったアプローチに迫り、そこから日本のWEB業界が抱える課題を探った。

“モノの百科事典”を志向する、異色のSNS《Sumally》

キャプチャ

Sumallyにアクセスすると、まずデザインの精度に他のSNSとの圧倒的な差を感じる方が多いのではないだろうか。洋服、靴、時計、カメラ、ギター、本…。さまざまなモノが不規則に並ぶインターフェースは、自分の所有欲を満たすだけでなく、不思議と新たな物欲を刺激する。

Sumallyのコンセプトは“モノの百科事典”。世の中に点在するあらゆるモノを、最終的に一つのフォーマットに整理し、まとめる存在となることを目指している。そこでキーになるのがユーザーの「Want」と「Have」というアクションだ。ユーザーが「自分のほしいモノ」や「自分の持っているモノ」を登録することで、Sumallyにはさまざまなモノの情報が、“誰が持っていて、誰が求めているのか”という付帯情報とともに集まってくる。

そのためユーザーは、モノを通じて自分と同じ趣味嗜好の人を探し、つながる(フォロー)ことができる。そしてつながった人を通じて、新しいモノと出会うことができる。

このようにSumallyはユーザーの利用頻度が高くなればなるほど、自分の趣味嗜好にあった新しいモノと出会うためのプラットフォームとして機能するようになり、また自分の生き方をモノを通じて表現するためのプラットフォームとしても機能するようになるわけだ。

そもそも日本人は、モノで文脈を作るのに長けている。中学生の女の子が、1000円のTシャツを着て、1000円のスカートを履いて、1000円の靴を履いて、それを“○○系”とカテゴライズすることができるなんて、そんな国は世界を見渡しても日本くらいのもの。その能力を世界に発信していくためのプラットフォームにしたいという思いも、Sumallyには込められているのだという。

ローンチ8ヶ月で、500万件ものアクションを獲得。

山本さん・北村さん

CEOの山本憲資さん(左)と、CTOの北村慧太さん(右)


もちろん、志だけのWEBサービスなど世の中にごまんとある。Sumallyがすごいのは、思惑どおりに実績を上げていることだ。ローンチから8ヶ月で、クリックされた「Have」「Want」などのアクティビティ数は500万件を突破。もちろん、ユーザー数も右肩上がりで推移している。

「よくあるスタートアップからは、ギークのためのサービスというかリアルな社会と隔絶された感じがしていて、その境界線を取り払いたい気持ちがまずあったんです。サービスのレベルとして、ただ動くのと“使いたい”と思ってもらえるのと、その差はすごく大きいということは強く意識していました」

そう語るのは、CEOの山本憲資さん。もともとコンデナスト・ジャパンで雑誌《GQ JAPAN》の編集者として活躍していた彼は、Sumallyのアイデアを思いつき、起業家に転身した。WEB業界の中でもある意味“異色”のキャリアを持つ彼は、Sumallyを使ってもらえるサービスに仕立てあげるうえで一体どんなことを実践したのだろうか?その秘密に迫るべく、山本さんとCTOの北村さんにお話を伺った。

コアコミュニティを作る ― キャズムを超えるための編集者的アプローチ。

山本さん

― WEBサービスを作る中で、編集者としてのキャリアやスキルがアドバンテージになったと思われる点はありますか?

山本:
「Sumallyの場合、影響力のあるクリエイターの人たちから実際に私物をお借りして撮影し、最初のコンテンツにしたんです。その辺りは雑誌をつくる際のアプローチとすごく似ていましたし、もしかしたら普通のスタートアップにはなかなかやりにくいことなのかもしれません」

北村:
「スタートアップってエンジニア主導で始まったり、エンジニアとデザイナー2人で始めるケースが多いと思うんですが、そういう場合プロダクトとしてはすごく良いモノができても、スタートに苦労しているところを見かけるんですよね。いくらプロダクトが完成していても、マッチしたコンテンツが入ってコミュニティの空気感が下地にないとユーザーにとっては理解してもらえない。Sumallyは、最初にその問題を超えられたかなと思っています」

山本:
「僕自身、WEBに慣れた人たちだけのためのサービスだとあまり広まらないだろうな、と考えていて。とはいえ、WEBに親和性のない人たちに寄せすぎて…というのも違う。その“あいだ”にあるものというか、WEBの特性を上手く活用できているサービスで、かつリアルに機能しているものを作るにはどうすればいいのかという問題には真剣に向き合いました。

WEBに親和性のない人たちにも使ってもらうためにはどうすればいいのか、そもそも使ってもらいたいのはどのセグメントの人までなのかというのを考えるのは、ある意味、雑誌を作るのと同じなんです。例えばファッション誌でも、普通の女の子がターゲットならカジュアルなテイストがいいだろうし、感度の高い人たちを狙うならVOGUEのような立ち位置を目指さないといけない。WEBサービスの場合も、どういう性格を持ったプラットフォームをつくるか、というところが重要だと思っていて。僕らの場合はまず、発信力の強い人々があえて使いたいと思えるサービスであることを重視したんですね。

特にSumallyのようなキュレーション系のストックアンドフローのコンテンツって、最初にどんなコミュニティを作るかでサービスの生命線がほぼ決まります。そして理想的なコミュニティが、WEB上で自然発生的にできる可能性は極めて低い。Facebookですら最初はハーバードだけのコミュニティを作って、そこから拡散させていっている。つまりまずはある程度アナログにインフルエンサ―を巻き込んで、拡散をプッシュしていく必要があるわけです。そういう意味では、WEBサービスといっても意外とローカルな人脈が大切になってくると思います」

インフルエンサーを巻き込むための、“デザイン”の力。

北村さん

― 人脈以外で、重視されたことは?

北村:
「広義の意味でのデザインだと思っています。コアコミュニティに参加して欲しいインフルエンサーの人たちが納得してくれるデザインを、初期の段階できちんと作ってローンチできたところは大きいと思います」

山本:
「そのデザインも単にオシャレというだけでなく、目指したのは“やかんとフィギュアとジャケットが並んでも映えるデザイン”。極端な話、オシャレなものだけ並ぶのであれば、何もしなくたってオシャレなんです。Sumallyの場合は“どんなモノが並んでも洗練された状態が保たれるようにするには?”というところに徹底してこだわりました。

デザインと開発は中村勇吾さんのtha社にお願いしたんですが、thaの仕事って“インタラクティブなコンテンツで魅了する”イメージが強いじゃないですか。でも、thaがユニクロの《UNIQLOOKS》というサービスを手がけたのを知ったときに、thaに《UNIQLOOKS》的なデザインをしてもらうことがSumallyにとってベストだと確信しました。それで勇吾さんに、こういうのがやりたいんですってお願いに伺って。インターフェイスとしてもFlashで動くものじゃなくてって、多少失礼なお願いを(笑)。デザインに限った話ではないですが、あるべきゴールを明確にしてそれを実現するためには誰にどういう仕事をしてもらえばいいのかを、正確にピントを合わせて実行するということは編集者時代から心がけていますね」

北村:
「僕はもともとthaでテクニカルディレクターをやっていて、Sumallyのプロジェクトに関わったのをきっかけにCTOとしてジョインしたんですが、自分の仕事で常に大切にしたいところは“UI”だと思っています。ユーザーが触れる部分ってやっぱりそこなので。いくらバックエンドがよく出来ていても、結局インターフェースが悪かったら誰も使ってくれないんです。

それに対してエンジニアリングサイドとしては何が出来るか?というところで、どんなデザインやインターフェースでも実現出来るようにすることが重要だと感じています。thaではアートディレクターと一緒に仕事を進めてきたのですが、アートディレクターの方から“こんなことも出来る?”って言う振りにはエンジニアとして出来ないとは言わない。というか単純にそう言いたくない(笑)。むしろ自分のほうから“こういう事も出来ますよ”ってアイディアを出せるように心掛けていました。いろんな可能性を考えて設計しておくことがエンジニアリングの役割だと思いますし、実際にSumallyに関しても常にあらゆることに挑戦できるような設計になっています」

日本では、WEBクリエイションの才能が広告業界に偏っている。

オフィス

― WEBとは異なるバックグラウンドをもつ山本さんから見て、日本のWEB業界にはどんな課題がありますか?

山本:
「日本では、タレントが広告業界に集中している感じがします。あくまで想像ですが、シリコンバレーではそれこそ中村勇吾さんみたいな人が本気でWEBサービスを作っていたりするんじゃないかな。日本でも、広告業界の人材がごそっとこっちに来ると、もっと面白くなるんじゃないかと思いますけどね。最近は日本でもクリエイティブブティックみたいな組織が出てきてますけど、ああいうところにコミットしている人たちが、企業のためのサービスじゃなくてユーザーのためのサービスを作ることが当たり前になってきたら、もっと面白いでしょうね。そのぶん競争は激しくなりますけど…(笑)」


― 北村さんは、まさに広告業界からサービス開発にキャリアチェンジされていますよね?

北村:
「そうですね、僕がthaからSumallyに移ったのは、今度は“花火ではなく盆栽を作りたい”と思ったからなんです。広告案件って短期的に開発して、話題になるのが数週間くらい、その数週間でどれだけ効果の高いものを作れるかっていうところに労力を掛ける、まさに打ち上げ花火のような仕事なんですね。そういう仕事をずっとやっている中で、今度は盆栽というか、長期的に見て“ああでもない、こうでもない”といいながら1つのモノをつくっていくような、絶対に完成はしないんだけど、常に完成に近い形を追い求めていくサービスの仕事がしたいなと思って転職しました。

エンジニアリングの観点でいくと、広告とサービスでは設計がわりと違います。広告の場合って開発の期間が短いので、極端な話がとにかく動きゃいい、ってところが重要だったりします(笑)。ただサービスでそれやってるとユーザーが増えたときに破綻していくんですよ。場当たり的に修正したり、機能追加とかして技術的な負債を抱えて、身動きが取れなくなる状態っていつか来るんです。サービスの場合は先まで見据えた設計が求められます。ユーザーが増えた時に問題なくスケールするシステム設計をしていかなきゃいけないので。

そうやってさまざまな人に使ってもらうプラットフォームを作り、実際に多くの人に使ってもらえることが、広告とはまた違ったWEBサービスの開発の醍醐味かなと思います」


山本:
「もちろん可能性でしかないですけど、“たくさんの人が使ってくれるサービスを、自分がゼロから提供できるかもしれない”ってワクワクしませんか?日本中に地下鉄を走らせるって言っても、すぐにはできないじゃないですか。でもインターネットって、思いついたことにすぐ挑戦できる。もちろん上手くいくかどうかは別問題ですけど、自分の手でイノベーションを起こせる可能性があるというだけでやる価値はあると思うし、それができる“今”というのはすごく面白い時代だと思いますね」

デザイン内製化に向け、UI/UXデザイナーを募集中。

Sumallyは今、さらなるユーザー拡大に向けてデザイン・システム面に改善の手を加えている。立ち上げ時はtha社に依頼をしていたデザイン面に関しても、今後は内製化をはかり、PDCAサイクルをより一層スピーディにまわしていきたいと考えているそうだ。

それに伴い、先日よりUI/UXデザイナーの募集をスタート。自社採用ページからエントリーを受け付けている。デザインに定評のあるサービスだけに、そのUI/UXを自分の手で作っていく手応えはかなりのものだと言えるだろう。興味のある方は、ぜひチェックしてみてはいかがだろうか?

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