自分の“得意(経験・知識・スキル)”を販売できるサイト「ココナラ」が、いま盛り上がりを見せている。「誰かの役に立っている」「好きなことで商いをする」という体験を得ることが、今後の働き方・生き方を選択するきっかけになれば、とココナラを手がけるウェルセルフ代表の南氏が語る。
▼《ココナラ》南章行氏へのインタビュー第1弾はコチラ
『自分のストーリー』を生きる―《ココナラ》南章行氏が語る、これからの時代の仕事観。
一人ひとりが『自分のストーリー』を生きる」ために。自分の役割がある、誰かの役に立っていると思える瞬間を作ろう――。
そう提案するのは、株式会社ウェルセルフ代表の南章行さん。モノではなく、個人の経験や知識・スキルを販売できるというオンラインフリーマーケット「ココナラ」を仕掛ける、気鋭の起業家だ。
いまの時代、既存の仕組みや価値観にしばられていては、仕事や人生の充実は得難い、と語る南さん。必要なのは、自分の「好きなこと」「得意なこと」で何かの役に立つ体験、つまり自分が“機能している瞬間”を体感することだという。
その経験を得るためには、一体何を意識すればいいのだろうか?南さんご自身のキャリアを振り返りつつ、答えを探った。
― 南さん自身、「自分のストーリーを生きる」という考え方を昔から持っていらっしゃったんですか?
いえ。その考え方を持ったのは、2009年にNPOの立ち上げを行なったころからですね。
それまで、僕は企業買収に関わる仕事をしていました。上場企業を買収し、経営して、扱うお金の単位は何百億じゃないと意味がない、という閉じた世界に身を置いていたんです。だから正直、「好きを仕事に」というような世界には興味がなかったし、目を向けることもありませんでした。
でも、NPOに関わりはじめたころから、自分の世界と違うところにいる人たちとの関わりの中で新たな学びを得たり、刺激を受けたりして、「こういうのっていいな、視野が広がるな」と思い始めたんです。
― 分かる気がします。会社と家以外の場から学ぶことって多いですよね。
そうなんですよ。僕が立ち上げた「二枚目の名刺」というNPOでよく使っていたフレーズなんですが、『“家と会社ともう一つ”を持とう』、と。
家庭でも職場でもない、第三の自分の居場所「サードプレイス」を持つことで、自分の世界は一気に広がるんですね。人生が豊かになるというか。スキルも自分の役割も価値観も、ブワーッっと急に開けていきます。家と会社の往復では、なかなかそうはいきません。家と会社の直線的な世界に”もう一つ”が加わることで、初めて”面”になるんです。
― その感覚は分かります。ただ、サードプレイスを持つことって意外と難しいですよね。
そう難しく考える必要はないですよ。サードプレイスって何でもいいと思うんです。仕事や社会貢献だけじゃなく、自分の好きな趣味の世界だっていい。
その選択肢の1つとして、ココナラを活用していただければ嬉しいです。ココナラは、もともと自分が持っている知識やスキル、経験を提供して、誰か困っている人を助けられるというサービスです。すごく手軽に、自分が役に立っているという体験ができるんですよね。
しかも、そこからいろんな人と出会えて、いろんな人との関わりが生まれる。だから、知見も増えていく。これも立派なサードプレイスです。
ココナラでの取引の金額は、現在「一律500円」となっていますが、今後の構想としては、ココナラできちんと稼げる仕組みも作っていこうと考えています。
クオリティの高いサービスを提供している方は、それに見合った報酬を手にしてしかるべきですし、頑張って”サードプレイス”を作ろうとしている人たちのためにも、きっかけ作りの次のステップを、ちゃんと用意してあげたいんです。
― なるほど、“自分のストーリーを生きる”という流れを、すべてココナラというサービスの上でできるようになるんですね。
きっかけ作りを提供しただけだと、その先に進まない・進めない人が少なくないのも事実です。だからこそ、そうした人のための階段を用意したい。誰だって、1歩登ったら、次の1歩を登りたくなるものじゃないですか。最初は軽い気持ちでココナラを始めたとしても、続けていってあるレベルまで行ったら、それが仕事になることだってあり得ると思っています。
― 先の見えない時代、これからどう仕事をしていくか悩んでいる人も多いと思います。何かアドバイスをするとしたら?
やはり、自分が熱中できる場所・楽しいと思える場所で働くことを考えていくべきでは、と思います。
現代は、「なぜ働くのか」を自分自身でしっかり考えなくてはいけない時代です。“なぜ働く?”という“Why”の部分が、How以上に大切になってきています。
昔は、“Why”を考える必要はなかったんだと思います。国全体が成長していて、働くことはすなわち、会社が大きくなり、モノが提供され、人々が幸せになることに自然とつながっていたからです。その事実は、誰の目に見ても明らかで、だからこそ、あまり“Why”に目を向ける必要がなかった。
でも、今はそうじゃないんですよね。モノが溢れていて、足りないものはそんなにないんですよ。国としても、企業としても成長は止まっているし、何が正しいのかよく分からない。とは言え、食べていかなきゃいけないから働くわけで。そうすると、成長実感も得られないし、自分の存在意義も曖昧になってしまう。だから、“Why”をちゃんと考えないと辛くなってしまうんです。
今の10代や20代の世代は、大変ですよね。好景気も知らないですし、僕らの世代よりもはるかに大変。でも、彼らは僕ら以上に精神的に充足しているようにも見えます。折り合いをつけるのが上手いというか、ちゃんと考えて、自分が充実できるポイント・居場所を見つけているんですよね。
その考え方って、今の時代に非常に合っていると思います。少し前までは「とにかく成長できる所で働こう」という発想があったじゃないですか。でも今、そういう働き方をしていても頑張りきれないし、世の中の変化のスピードも速くて、ついていくのも難しい。自分の予定通りにいくことのほうが少なく、結局「なんで働いているんだっけ?」というところに戻ってしまう。
― だからこそ、自分が熱中できること、好き・得意なこと、という観点で仕事を選んでもいいのかもしれないですね。
そうですね。言い換えると、「心ふるえる職場を探そうぜ!」ということになるかと(笑)共感できて、熱中できて、頑張れるところで働こうよ、と。あんまり頭で考えすぎなくていいと思うんですよね。残念ながら、頭で描いた長い計画って実現しないもの。社会も変わるし、自身の興味関心も変わっていきますから。
それに、熱中して本気でやるからこそ、「間違えた」とか「これじゃない」と気づくこともできるんです。頭で考えすぎると、それすら感じられなくなる。だから、もう少し直感と信念に従ってもいいんじゃないですかね、これからの時代。結果、プラスにつながっていくと思います。逆に考えすぎてしまうと、いつまでたっても楽しいところまで辿りつけないですよ。
直感で掴んだ目の前のことを本気でやるって、すごい大事で。本気でやると、得られるものって”成功”と”学び”だけなんですよ。失敗なんて、そもそもありえないんです。
「成功と学びしかないから頑張る」「頑張るためには熱中できるものを探す」「見つからないなら目の前のことを本気でやってみる」
これ、ですね。
― なるほど。自分でも知らないうちに、狭い世界で考えすぎて、身動きがとれなくなっていることもあるのかもしれません。
そう思いますよ。ひょっとすると、「昼間は会社で働いて、夜は自分の好きな仕事をする」でもいいかもしれない。
「月曜から水曜は食べるための仕事で、水曜から土曜は好きな仕事」でもいいんじゃないでしょうか。
経営者視点でそれが理想なのかはさておいて(笑)、そういう働き方が当たり前になってくればいいな、と思います。
― 本日は貴重なお話、ありがとうございました!
(おわり)
[取材]上田恭平 [文]高橋梓 [撮影]松尾彰大
編集 = CAREER HACK
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