2013.09.18
面白いゲームには“分かりやすい初体験”がある―NHN PlayArt馬場一明氏のゲーム論。

面白いゲームには“分かりやすい初体験”がある―NHN PlayArt馬場一明氏のゲーム論。

ハンゲーム及びLINEゲームで、多くのファンを惹きつけてやまないヒットゲームを連発するNHN PlayArt。制作現場の責任者/エグゼクティブ・ディレクター馬場一明氏のインタビュー第1弾として、同社のゲームづくりの哲学に迫る。

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NHN PlayArtが考える理想のゲームとは?

2013年8月に「NHN Japan株式会社」から社名変更した「NHN PlayArt株式会社」。急激な成長を続けるスマホゲーム・ブラウザゲーム業界を牽引する存在だ。

業界のトップランナーであるNHN PlayArtが考える、ゲームの面白さとはどのようなものなのか。同社の思想を知ることで、ヒットゲームを生み出すためのヒントや、業界の進んでいく方向が見えてくるのではないか―。

そこで同社制作責任者である執行役員/エグゼクティブ・ディレクターの馬場一明氏に話を伺った。

“初体験”の連続がゲームの面白さ


― 馬場さんの考える、スマートフォンゲーム・ブラウザゲームそれぞれの面白さって、どのようなものなのでしょうか。


スマートフォンだから、ブラウザだからという区別はなくて、“ゲーム”という広い視点で考えています。僕らはスマートフォン向けプラットフォームを持っていないので、純粋にゲームの面白さという部分だけを追求していきたいんですよ。

ゲームの面白さという話になると、それはプラットフォームや時代は関係なくて、「やったことのない体験ができる」ということ。ゲームを進めていくと、自分が成長して更に新しい体験ができる。その予想外の体験がいちいち面白い、っていうのが大事だと考えています。

そして、スマートフォンとか無料のゲームであれば、とにかくワンプレイ目が面白くなくちゃいけない。有料のタイトルなら、購入前にいろいろ悩んだり調べたりすると思うんですよ。でも無料であれば、悩むより先にまずダウンロードしますよね。事前情報を持たないまま遊んでみるわけですから、最初のワンプレイが面白いことこそ重要なんです。

その面白さを、お客さんに少しずつ、わかりやすく伝えていくのも大切だと思います。面白いモノ自体は、誰にでもつくれるんですよ。面白い企画は誰にでもつくれる。でもその面白さを分かりやすく伝えるというのは、できる人が少ないんじゃないかな。ですから、面白さをわかりやすく伝える、という部分には気を使っています。

面白い・面白くないというゲームの本質にこだわっているから、スマホだとかPCだとかは関係ないんですよ。

ワンプレイ目の面白さと、続けることで得られる面白さ


― 実際にプレイする人たちは、どんなゲームに面白さを感じるんでしょう?


“初めのワンプレイが、直感的に楽しめるゲーム”だと思います。最近のゲームは大体「ゲームのプレイ部分」と「育成要素」の2つが合わさった形でできていると思うんですが、まず前者の「プレイ部分」が面白いことが大前提。ステージクリア型のゲームであれば、最初のワンステージ目のところですね。そこが面白いというのが、まず1つ目の条件だと思います。

それから、育成要素ならではの面白さです。つまり、“成長するにつれて更に面白くなる”ということ。僕自身、最近のトップセールスのゲームをプレイしてみるんですが、初めのワンプレイは最高に面白いのに、成長するとつまらなくなるモノがとても多いと感じます。例えばあるゲームは、プレイヤーキャラクターのレベルが上がると、それに応じて敵も強くなっていくんですが、ただただそれだけなんです。いくら成長したところで、何か新しい要素が入ってくるわけじゃない。


― どれだけレベルが上がっても延々と同じ操作を続けるだけ、ということですね。


そうなんです。育成要素のあるゲームの面白さって、スキルを覚えると新しい操作方法が追加されるとか、そういうことだと思います。

特に後課金型のゲームであれば、初めのワンプレイでお客さんの心を掴み、育成要素の部分で“飽きさせない”ようにしなければならない。続けるごとに新しい面白さに出会えるというのが、ゲームの理想形だと思います。

ゲームルールの設計と面白さの相関関係


― もう少し掘り下げたいお話です。仰っている”面白さ”を生み出すために、最も重要な要素は何なのでしょう?いわゆる“ゲーム性”でしょうか?


そうですね。そもそもゲーム性とは、ゲーム側・システム側から与えられた情報に対して、プレイヤーに“判断する余地がある”ということ。そして、その判断で“正解”を導き出せるかどうかで、プレイヤー自身の力が発揮されるということ。

平たく言うと、ゲームの中で出てくる課題に対して、「この状況ではこういう判断をすれば成功するよ。ただそれには、あなたのテクニックが必要だよ」という部分があること。これがゲーム性だと考えています。

お客さんの判断は一切なく、ただボタンを押すだけ。最後にすごいムービーを見せられて、それで終わり。最近はこういったゲームが世に出ることも少なくないですが、ウチのゲームには必ず、プレイヤーに判断してもらう余地を入れています。

隠し要素とか、当たるかどうかわからないものではなく、事前情報が与えられている公平なもの。

プレイヤーに対して、「このゲームは、こういうルールです」「そして今はこういう状況です」「あなたはどうするんですか?」という場面を幾度も提供して、そしてプレイヤーの判断の結果、「正解です」「失敗です」というのを繰り返していくのが、ゲームならではのインタラクティブな面白さだと思っています。


― ユーザーの判断で成功・失敗の結果がでるルールづくり、がゲーム性ということですね。ということは、ルールの設計とゲームの面白さは密接にリンクしているのでしょうか。


その通りだと思います。最近は“コンセプト重視”のゲームもよく見かけますが、どんなにコンセプトが良くたって、面白いゲームにはならないんですよ。というか、コンセプトだけじゃゲームの良し悪しは判断できない。コンセプトなんて、どちらかというと後づけでいいんです。それよりも、まずはゲームのルールをどうするか。ワンプレイ目の面白さをどう作るのか。そして、そこに育成要素をどう絡めていくのか。



― それを追求するために、馬場さんが意識していることはありますか?ルールのつくり方みたいな。


ルールが成立しているかどうか。実際にプロトタイプを触ってみて、そこで自分がどう感じるかですね。そこでつまらないと感じた時は、どこに問題があるのか、原因はどこにあるかを考えます。一見きちんとできているように見えるゲームでも、ルールのロジックが成立しておらず不公平なものになっていたりすることがよくあります。それはもはやゲームではない。単に“ゲーム風のもの”に過ぎないんです。

なので、とにかく穴を見つけて、その穴を埋めることで、地道に面白くしていくんです。それは、あくまで世界観とかイメージとかコンセプトといったものとは別の話です。そういったものを抜きにして、単純に“ゲームルールが成立しているか”を考えることが、ゲームづくりを上手く進める秘訣だと思います。


(つづく)▼NHN PlayArt馬場一明氏へのインタビュー第2弾
プライドを持ったゲームをつくりたい―NHN PlayArt馬場氏が見据える、ゲーム業界の未来。


[取材]梁取 義宣  [文] 城戸内 大介

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