2013.09.19
プライドを持ったゲームをつくりたい―NHN PlayArt馬場氏が見据える、ゲーム業界の未来。

プライドを持ったゲームをつくりたい―NHN PlayArt馬場氏が見据える、ゲーム業界の未来。

ヒットゲームをつくり続けるNHN PlayArt。制作責任者である馬場氏のインタビュー第二弾の今回は、業界の抱える問題点を探る。馬場氏の考える、理想の業界像とは?“面白さ”を追求するクリエイターとビジネスを手がける経営層の間には、埋めがたいギャップが存在するのか?

3 35 1 6

▼NHN PlayArt馬場氏へのインタビュー第1弾
面白いゲームには“分かりやすい初体験”がある―NHN PlayArt馬場一明氏のゲーム論。

NHN PlayArtが見据える、ゲーム業界のこれから

ゲームの面白さとは、「新しい体験が連続すること」と語る馬場氏。ゲームはインタラクティブであるべきと考え、ユーザーに判断を委ね、テクニックを求める要素が必要だという。

そのために重要なのは、ゲームルールの設計であり、設けたルールを少しずつわかりやすく理解してもらう仕組みだ。有名人とコラボしようが、どんなに魅力的な演出をしても、コンセプトだけでユーザーを魅了することはできないという。

そんなNHN PlayArt馬場氏が考える、現在のゲーム業界が抱える問題点と、これからの展望を伺った。

常に期待を上回ることでブランドが創られる


― 世に出ているゲームの中には、ルールのロジックが破綻していて、ゲームとして成立していない「ゲーム風のモノ」が少なくないというお話がありました。NHN PlayArtが大切にする作り手側の“ルール”への意識とは?


僕らの場合は、面白いゲームを作りたいという気持ち一つでやっている部分が強い。他社の経営者が僕らの制作現場をみたら「なんでそんな非効率なことやるんだ?」って感じるんじゃないかと思いますよ。

でも、そういうこだわりをコツコツ続けていけば、「NHN PlayArtのゲームは一定以上のクオリティを超えている」って、お客さんが感じてくれるんじゃないかなと思っています。

「この会社のゲームは、どのタイトルをプレイしても面白いな」と感じてもらえて、初めてゲーム会社の名前を認識してもらえるんだと思うんです。それが、ゲーム会社としての“ブランド”になる。だからこそ、僕らとしては「最低限のレベルを満たしたゲームを」ではなく、「一定以上のレベルを超えたゲームを」という意識で制作していますね。


― 一定以上のクオリティを超えていないゲームは、会社のブランドのためにも世に出さない、と。


そうですね。うちのタイトルがほとんどそこそこの黒字を出せているのも、その結果だと思います。

でも、経営陣からはそれですごい怒られてるんですよ、僕。そこそこ黒字じゃダメだと。「ゲーム会社なんだから、大赤字か大黒字しかないだろう!」って(笑)

黒字をコツコツ出していくのは、経営としてはまっとうかもしれない。でも、それだったらゲームでビジネスをする必要はないと思っています。せっかくゲームを事業領域としてやっているんだから、ひとつのタイトルで10億、100億を狙っていくべきだし、NHN PlayArtはそういう会社なんだということですね。そこそこ稼ぎたいんなら、ゲーム会社であることをやめたほうがいいよね、と。



― そういう考え方がある中で、どのような環境を用意して開発しているのですか?


開発環境は、つくりたいモノを決めてから用意しますね。足りないツールがあったとしたら、必要だと判断した時点で導入します。環境を先につくるのではなくて、あくまでも“やりたいこと”が先。ノウハウとかは一応あるんですが、やっぱりつくりたいモノを重視しています。

例えば以前、僕がディレクターとして、当社初の3DアクションRPGを作ったことがありました。その時、企画段階で「社内に経験のある人間がいない」と反対意見があったんですが、もう話にならない。そんなことを言っていたら、一生ウチの会社では3DのアクションRPGはつくれません。そうすると別の会社から買ってくるしかなくて、クリエイターがいる意味がないんです。確かに不安もあるし弱気になったりもするんですけど、やると決めたら強気で突き進むのみ。

面白さよりも、“儲かる仕組み”が重視されているという問題


― 馬場さんの考える、スマートフォンゲーム業界が抱える問題点ってありますか?


ゲーム性以外の部分、つまりリワード広告とか招待インセンティブといった集客の仕組みだけで儲かってしまっていることですね。

結局、ゲーム内の集客機能が、一番の収益要素になっているんですよ。ゲームの継続率が低くても、新規プレイヤーがそれ以上に入ってくれば、お金を払ってもらえるわけで。そうすると、App StoreやGoogle Playのランキングをみても、それが面白いゲームの順に並んでいるとは言えない状況になっているんです。

でも一方で、良くなっている部分もあるとは思いますよ。海外のゲームが日本のランキングに入ったり、ぜんぜん知らない会社のゲームが一気にランクインしてきたりもしますからね。一部の会社が業界全体を牛耳っているような不公平感がなくなってきているのは、とても良いことだと思います。

「つまらないモノを出したら恥ずかしい」という経営層


― 業界がより良くなるために必要なことは何だと思いますか?


ゲームのことをちゃんと理解した会社、面白いゲームしか提供しないと考えられる会社が、プラットフォーマーになることですかね。

いま、同じようなタイプのゲームが非常に多いですよね。そもそも遊んでくれるお客さんのことを考えたら、一つのプラットフォームに似たようなゲームばかり入れるのは良くないはず。お客さんに新しい体験を提供するためにも、常に「今度は新しいのにチャレンジしましょう」と考えるほうが健全だと思いますよ。


― なぜ、そういう状況にならないのでしょう。目先の利益にばかりとらわれてしまっているから?


おっしゃる通りの部分はあると思います。ゲームクリエイターの中にも、心から納得できるゲームとは言えないにも関わらず、売上重視の会社の方針でリリースしなければならない状況にいる人もいると思いますし、そこに違和感を感じるクリエイターは多そうです。特にオンラインゲームの時代になって、その傾向を顕著に感じますね。

面白くないゲームを見切り発車でリリースしちゃうというのは、経営者がゲーム制作に理解がないとか、あらかじめ予算がガチガチに固まっている中で企画を出さなきゃいけないとか、制作を外注しているので細かいところまでコントロールできないとか、いくつか理由があると思うんです。

その点ウチは、経営側も“つくる”ことを重視している。開発現場だけじゃなくて、経営陣にも「つまらないものを出したら恥ずかしいだろ」というマインドがあるんです。僕自身も、例えば正月休みで実家に帰ったとき、「ワクワクする面白いゲームつくっているんだ!」と言いたいですよね。プライドを持ったゲームをつくって、世に出していきたいと思います。


― 本音でバシバシ語ってくださりありがとうございます(笑)いちゲームファンとしても、とても共感できるお話でした。「よくぞ言ってくれた」みたいな部分もあると思うんですけど、そのまま書いちゃうとやっぱりマズイですよね?


まあ、大丈夫じゃないですか?僕自身、この業界をもっと良くしたいと考えてお話したことですし、やっぱり面白いゲームにどんどん出てきてほしいですから。

(おわり)


[取材]梁取 義宣  [文] 城戸内 大介

特集記事

リーダーたちの
迷いと決断

経営者たちの「現在に至るまでの困難=ハードシングス」をテーマにした連載特集。HARD THINGS STORY(リーダーたちの迷いと決断)と題し、経営者たちが経験したさまざまな壁、困難、そして試練に迫ります。

ぼくらの新人時代

「新人時代をどう過ごしていましたか?」テック業界の先パイたちに、こんな質問を投げかけてみる特集企画です。知識もスキルも経験も、なにもない新人時代。彼ら、彼女らは”何者でもない自分”とどう向き合い、どんなスタンスで学んできたのか。そこには「ぼくら」にとって重要な学びが詰まっていたーー。

イノベーターたちの「習慣」と「実践」

『7HACKS』は世の中を沸かし、仕掛けつづけるイノベーターたちの「習慣」と「実践」に迫るキャリアハックの特集です。イノベーターたちの知られざる日々の習慣から、読書法、自らに課したマイルール、ライフハック、仕事に対する考え方まで、幅広くご紹介。明日からの仕事への活力が湧いてくる、そんなコトバと共にお届けします。

お問い合わせ
取材のご依頼やサイトに関する
お問い合わせはこちらから