WEB/IT業界で活躍する女性を応援するHACK GIRL企画。入社2年目にしてブランドキャラクターのデザインを手掛けた池田さん。HOME'Sでお馴染みのネクストで働く彼女は、どんな想いで日々を過ごしているのか。HACK GIRLファン必見です。
WEB・IT業界で活躍する女性の生き方やキャリア観に迫る“HACK GIRL”。今回登場いただくのは、不動産・住宅情報サイト『HOME'S』を運営する株式会社ネクストの池田瑶子さんだ。
池田さんは武蔵野美術大学で基礎デザインを学び、新卒でネクストに入社。WEBデザイナーとしてサイトの更新やデザイン、コーディングを行ないながら、2年目にしてブランドキャラクターであるホームズくんのリニューアルを手掛けた。2014年にはオフィスの一角をリノベーションするという、不動産情報を扱う同社らしい企画を先導。
同級生が広告代理店や制作会社に就職する中、なぜ池田さんはWEB企業であり、不動産情報を扱う同社を選んだのか。また、何がきっかけでデザインに興味を持ち、WEBだけではなく、キャラクターデザイン、オフィスデザインまで手掛けるようになったのか。
― 武蔵野美術大学でデザインを学び…新卒でネクストに入社、というのが面白いと思ったんですね。どういう経緯でデザインに興味を持ち、そしてHOME'Sに携わるようになったんでしょう?
子どもの頃から絵を描くのが好きだったんですよね。お絵かき教室に通っていて、「瑶子ちゃんは絵が上手ね」なんて周りに言われて(笑)。そうすると、得意なことと趣味が同じ方向になってきて。もうひとつ明確なきっかけとして思い出すのは、本屋さんで偶然手にした原研哉さんの『HAPTIC』という書籍。
ものをつくる時に、色や形、テクスチャー、バランスなどの外的な要因じゃなくて、いかに感じるかという「感じ方」の視点を中心に据えると、どんな新しいデザインが生まれるだろうか、という考え方が主題になっているんです。その「五感」とか「感じ方」というデザインへのアプローチがすごく好きで。
特に紙皿の作品に目を奪われたんですね。一つひとつはキャベツの葉っぱの形をしていて、それをまとめると一個のキャベツができあがる。見慣れている紙皿でありキャベツなんですけど、視点を変えたとたんに物凄く新鮮なものに見える。そういう閃きが物の価値をぐっと上げる瞬間って、わくわくするじゃないですか。
― 原研哉さんの本に影響を受けて美大へ進み、深澤直人さんの授業を受けたりしながら……ネクストへ入社したわけですね。
同級生は広告系の会社を目指して受けていくんですけど。あ、私自身も最初はそうだったんですよ。でもある時から考えが変わったというか、雑誌やポスター、テレビなどの広告をつくる仕事も面白いと思うんですけど、広告主ごとの商品やサービスを広めていくというよりも、ひとつの商品・サービスを育てていくような仕事がしたいと思うようになったんです。
そして就職活動をする中で、ネクストに出会った。ただ私、WEBについてはまったく詳しくなかったんですよ、htmlの“h”すらわからないような。でもまったくわからないことを公言しておけば、入った後に教えてもらえるだろうなって(笑)。そしたら出来るようになって、「わたしできる事がひとつ増えた!」って感じられるだろうと。ひとつのサービスを育てること、そしてWEBに可能性を感じて挑戦したいと思えたんです。
― 入社して2年目のときですよね、HOME’Sのキャラクターリニューアルに携わったのは。2年目でメインサービスのキャラクターをつくるって、すごいことだと思うんですが。
ブランドカラーというものを打ち出していこうっていう流れになって、「池田さん作ろっか」って声をかけていただいたのがきっかけです。既存のキャラクターから思いっきり変えてみようと思って、同業他社にまん丸のキャラクターがいたので四角いキャラにしようとか、動物に変えてみようとか案を出しました。でもブランド認知が高まってきたこと、ツイッターでもファンが少しずつ増えていて、ガラリと変えるのは難しいという結論になって。じゃあ、もっと今風だったり親しみやすかったり、使いやすいデザインにしようと。
― 使いやすくしようということは、何か使い勝手の悪さがあったのでしょうか。
リニューアル前のキャラクターは、外部の会社につくってもらったんですね。だから、勝手にポーズを変えるとかはできなかった。バナーのデザインとかをするようになってわかったことなんですが、過去のものは縦に長くて、特に帽子が尖っていたので、枠内にすべてを入れようとすると制約があったんです。アプリにしてもアイコンは正方形なので、顔が小さくなってしまうとか。
じゃあもっと使いやすくて、同時にどこまでならホームズくんとして許容できるのか、という話し合いになった。過去のホームズくんがいて、そこからすごく変化したところまで、グラデーションのように80体くらいつくって。みんなで「どこまでだったらホームズくんって思える?」と考えていきました。最終段階では社長も入ってきて、毎週社長室へプレゼンに行くようになって。「ちょっと立ち方が子どもっぽい」とか意見をいただきながら、3パターンくらいまで絞っていきました。最後は顔のパーツが少し離れているとか、近くにあるとかいうレベルまで絞り込んで。
でもやっぱり違って見えるじゃないですか、顔って。小さな違いだとしても、私の中ではそれぞれに異なる性格があって。「この子はこういう性格で、こっちの子はこうで……私はどれもいい子だと思いますけど!」ってプレゼンをして(笑)。最終的に、今の子が採用されました。
― やっぱり自分でつくった分、愛着が湧きますよね。
社長を含めて関わったすべての人が、愛着を持っていますね。顔のパーツのバランスだけで何時間も議論して。「この子は『ありがとう』って言われると照れくさそうにしながら内心はすごく喜んでいる。こっちの子はすごく喜んでニカって笑う子」って、キャラクターに性格が出てきて。みんなが感情移入していけた瞬間を目の当たりにして、命が吹き込まれていく体験をできたのは大きかったですね。
キャラクターが広告に載ったり、WEBで使われたりしながら、社外の人とコミュニケーションを取っていく様子を見ていると、本当に愛されているんだなって。社内でも口にはしないですけど、愛情を注ぎながら育てているような空気感があるんですよ。
― キャラクターだけではなくて、7月にはオフィスの部屋をDIYでリノベーションしたとか。
社内で、廃校をリノベしてオフィス丸ごと移転したら楽しいよね、みたいな話も持ち上がったんですね。都内に1000人規模で入れる廃校が見つからず一旦保留になったんですが、そこでやりたいことって、自分たちらしく働く空間をつくりたかったということ。HOME’Sのブランドメッセージとしても、“「らしく」住もう”というのを掲げていて。自分たちがもっと、空間だったり住まいに興味を持つことができないだろうかと。
廃校はできないけど、今いるオフィスでできることはないかと考え企画していったものが、7月に形になりました。オフィスでと言っても、自社ビルではないのでたくさん制約があったんですけどね。「この壁はペンキを塗っても平気」「この柱は穴を空けたり色を塗ってはダメ」「絨毯を剥がして床材を敷き詰めてもOK」とか、「身体に悪影響のない素材を使おう」とか。そういうのを調べて、社員から有志を募って、ワークショップ形式で実施しました。
― 苦労した部分は?DIYとか部屋のリノベーションという、手を動かすことについては素人の集まりだったと思うんですが。
分からないながらに、やるからにはクオリティを高くしなきゃいけないと思って。上手くできなくて、『やっちゃった感』がでたらまずいじゃないですか(笑)。最初は壁にペンキを塗る作業だったんですが、想定以上に簡単で「こんなものかな」って思っていたら、床を貼る作業ではすごく難しくて。柱の入っている部分を丸く切り抜かなくちゃいけないとか。壁紙も、気が付くと斜めになってしまったり(笑)。でもそうやって完成した部屋なので、みんな愛着を持ってくれていると思います。その証拠に、他の部屋よりも綺麗に使ってくれてる(笑)。
― キャラクターづくりや空間づくりを通じて、学んだことや感じたことはありますか?
WEBサイトにしろバナーひとつにしても、キャラクターにしても、ミーティングルームにしても、デザインの本質は同じかなという部分ですね。
デザインっていうのは、目的や目標を達成するためにどういう道筋を描いていくかっていうこと、そのプラン立てをすることなのかなって。人にこういう感情を抱いて欲しいとか、WEBサイトであればストレスなく最後まで使って欲しいとか。じゃあ、ここではこんな分かりやすい道筋にしてあげようとか。目標を達成させるためのスマートな道筋を立てていくことが、デザインかなって思うんです。
― 今ではオフラインの広告にも携わっているそうですが、そのすべてに、『デザインは目的を達成するための道筋づくり』という考え方が活きているんですね。デザインのスキルと考え方で、どんどん仕事の幅を広げているところ、今後も注目させていただきます。
[取材・文] 城戸内大介
編集 = CAREER HACK
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