2014.12.05
Origami 康井義貴・ユーザベース 佐々木紀彦と考える“新しい武器”|TWDWレポートVol.3

Origami 康井義貴・ユーザベース 佐々木紀彦と考える“新しい武器”|TWDWレポートVol.3

TWDWイベントレポート第3弾。「僕たちの“新しい武器”を語ろう」の様子を、お届けします。登壇者は、Origami CEOの康井義貴氏、NewsPicks 編集長の佐々木紀彦氏。佐々木氏が康井氏へ公開インタビューしながら、オーディエンスを巻き込みながら紐解かれていく”新しい武器”とは?

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登壇者紹介|Origami 康井義貴・NewsPicks 佐々木紀彦

株式会社Origami 代表取締役CEO 康井義貴
カナダ・トロント生まれ。幼少期をトロント、ニューヨークで過ごし、16歳でeコマースビジネスを立ち上げる。シドニー大学留学、早稲田大学卒業後、米大手投資銀行リーマン・ブラザーズでM&Aアドバイザリー業務に従事。その後、シリコンバレーの大手ベンチャーキャピタルDCMにて米国、日本、中国でスタートアップへの投資を手掛ける。2012年、Origamiを設立。

株式会社ユーザベース 執行役員 NewsPicks編集長 佐々木紀彦
福岡県北九州市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、東洋経済新報社へ。2007年9月より休職し、スタンフォード大学大学院で修士号取得(国際政治経済専攻)。その後復職し、『週刊東洋経済』編集部へ。2014年7月、株式会社ユーザベース 執行役員 NewsPicks編集長に就任する。

ドメスティックな日本人がグローバルな視点・感覚を持つためのヒント。

康井氏・佐々木氏の自己紹介、Origamiの紹介が終わると、スクリーンに映し出されたのは16のテーマ。本イベントは、オーディエンスが提示されたテーマのなかから一つを選び、康井氏、佐々木氏が見解を語ることで進行していくスタイル。まず選ばれたテーマが、[グローバル]。グローバルとローカルが今後どう繋がっていくのかという問いが投げかけられました。


康井:
そもそも、会社によって考え方は違いますよね。デイワンからグローバルな設計をして、多国籍展開できるサービスをつくろうっていう会社もありますし、逆にローカルに根付いたビジネス展開をしているからこそ競合優位性につながるっていう会社もありますし。

ただ、最近のトレンドとしては当然、いかにグローバル展開できる基準でサービスをつくっていくかが当たり前になっていますよね。Origamiでは、重要な契約書って英語なんですね。で、理由は今後海外の企業と契約等を結んでいくにあたり、今までの契約書を見せてくれってなったときにコレ読めない…ということが起きてくるんじゃないかなって思っていて。そのあたりはスゴイ意識して設計していますね。

あと、Origamiは従業員20名のうち半分が外国籍なんですが、今は何語がスタンダードっていうのは決めていないんですね。社内メール等では、日本語、英語が飛び交っています。

TWDW Day5 UZABESE/Origami Yasui

そこで[グローバル]をテーマに選んだオーディエンスから「東京を含め、日本にいると海外のことってあんまり考えない気がしていて、この閉ざされている環境について意見を聞かせて欲しい」という声が寄せられました。


康井:
視点をいかにグローバルに持ってくるかによって、オポチュニティは変わってきます。例えば、海外から資金を持ってくるにしても、アメリカのインベスターって意外とローカルマインドセットをもっている方が多い。アメリカに限った話かもしれませんが。アメリカで起きていること以外あまりわかりません、というか。日本を見たときに、ファーイーストアジアのあの島国ねって見方をしている人もいるんですね。

でも、当然英語しかわからなくて、カルチャーやビジネスのイロハもわからないっていう状態で、仮に日本で面白いムーブメントが動き出そうとしていても、投資家であれば運用責任があるので、自分の守備範囲外であれば、判断はしづらいんですよね。とはいえ日本に興味を持っている投資家ももちろんいるので、資金を引っ張ってきたいのであればそういう人とコネクションをつくっておくことが大切なのかな、と。

佐々木:
康井さんは、生まれも育ちもかなり特殊じゃないですか。もちろん、いい意味で。私も含めて“ドメドメ”な日本人がグローバルな人とつながったり、グローバルな感覚を持つためのヒントってありますか?

康井:
いいアドバイスかわからないですけど、友達をつくるとか、彼女をつくるとかが一番良いと思います。

佐々木:
結構ハードル高いですよ(笑)!

康井:
英語を勉強したいときは、アメリカ人とか英語を話せる彼女を見つけるのが一番早いって思うんですよね。友達に相談されるといつもそう答えています。ハードル高いのかもしれないんですけど…(笑)。ま、あるいは友達ですよね。

必要にかられたときに言語って習得できると思っていて。あと、グローバルな視点・感覚ってときに言語の要素って実は小さくて、それよりもカルチャーというか、笑いのツボというか、考え方というか…。このあたりって、ニューヨークとヨーロッパでもそれぞれ違っていて。日本だとある程度同じベクトルで話が成立するじゃないですか。

佐々木:
なるほど、言語も大事だけど、そういうところが大事ってことですね。まずは彼女を見つけるところから頑張ってみていただきたいですね(笑)。

20代は、何にお金を使うべき?

次のテーマは、[お金]。テーマを選んだオーディエンスからは、「日本の学生ってお金について学ぶ機会がすごい少ないと思う。康井さんの見解を聞きたい」という質問が寄せられました。


康井:
海外の大学だと「どうやっていっちょ儲けるか」って議論を真顔でやり取りするんですよね。日本の場合、そういう機会が少ないのかなって感覚的に感じていますね。でも、それってどうなんですかね?学生時代に、お金の話ってしておいたほうがいいんですかね?

佐々木:
そうですねぇ。自分のお金の使い方とビジネスとしての使い方って違いますもんね。

康井:
ビジネスとしての使い方でいうと日本とアメリカで考え方が違うなってのは思いますね。僕らのいるスタートアップの世界でも。少しずつ日本も変わってきているんですけど、どちらかといえば「単月黒字化」のようにプロフィタブルな状態をつくってスケールさせていきましょうって考えが一般的だと思っています。アメリカでよくあるのが、まずお金を集めて、一定のユーザー数や売上がちょっとついてくると大きいお金を集めましょうって話になって。コストとユーザー数や売上は当然比例しているので、トップラインもコストに引きづられて伸びてくるんですよね。全然黒字化されていない状態でも、「前回のファイナンスで僕らはこれだけトップラインが伸びたじゃないか。だからもっとお金を集めればもっと成長するんだ」って資金を集めるというサイクルを繰り返すアメリカの会社が多く、そのへんのお金に対する考えはずいぶん違いますね。ビジネスメンタリティも、投資に対するダイナミクスも異なりますし。とはいえ、どちらが良い悪いの話ではなくて、それぞれの哲学の違いって話だと思います。

佐々木:
個人だとどうですかね?20代から30代前半くらいの人たちは何にお金を投じるべきだと思いますか?自己啓発本を買ったほうがいいのか、とか。

康井:
僕、自己啓発本読んだことない…(笑)。なんですかね?なんかやっぱり面白いプロジェクトにお金を費やすのが一番楽しいんじゃないですかね。人に誇れるようなものというか。人の時間って限られていて、会う人も数も限られているわけじゃないですか。

別に大学のサークル活動が悪いって話じゃないんですけど、サークルでテニスやって、飲み会やって、授業出て、卒業…という人よりも、「こんな面白いことやっててね」っていう人の方が次につながる可能性も単純に増えるなって思っていて。そうやって人と違うことにお金をかけるのが一番いい道なのかなって思います。選択肢が2つあって10人いたときに、9人が片方を選んだら、僕は選ばれなかったほうを選びたいなって。

佐々木:
斉藤ウィリアムさんと話したときも、大学教育という点で、日本は親に払ってもらいますけど、アメリカは自分で払ったり、奨学金で払ったりっていうのが多いじゃないですか。だから本気度が違う、と。日本の場合、“身銭を切る”っていう経験が社会人にならないとできないのかなって思うんです。そこも大きいのかなって思うんですけど、大学教育についてはどう思いますか?

康井:
アメリカの大学って勉強しに行くんですよね。日本の大学って僕の経験上、単位を取りに行くっていう方が多いと思うんですよね。そのあたりのメンタリティはすごく違うのかなって思いますね。

佐々木:
日本の大学生活はつまらなかったですか?

康井:
大学の外で仕事をしていましたね…(笑)。

佐々木:
そうなんですね(笑)。私は20代でお金を貯めてもしょうがないんじゃないかなって思っていまして。どう自分のお金を投資していくかで、30代のリターンは決まるなと。最近20代で積立投資を始める堅実な人もいますけど、そういうのってもったいないなって。20代で積み立てたものってリターンが無限に返ってくるじゃないですか。一生。だから、投資しまくったほうがいいんじゃないかなって。ま、自分が貯金がないからこんなこと言ってるんですけど(笑)。

康井:
僕も同じですね。とにかくお金は使わなきゃ返ってこないので、いろんなものに投資してみるっていうのがいいと思います。もちろん株式市場に投資するのもいいんですけど、「面白いプロジェクトやろうぜ」ってなって、それを実現するためにお金がかかるから、みんなで出し合って、どうせなら株式会社の仕組みでやろうって。面白いプロジェクトとか、アイデアをカタチにするプロセスとかに投資するのが、若いうちのお金の使い方としてはいいのかなって思います。

TWDW Day5 UZABESE/Origami Sasaki

経営者の役割と、“クオリティの高いメンバー”を見つける方法。

続いて取り上げられたテーマは、[ビジョン]。いいビジョンを持つことは企業や個人の武器になるのか、それを叶えるためにどう行動していけばいいのか、という点について議論がなされました。


康井:
経営の役割としてはシンプルに考えて、3つしかないと思っています。1つ目が人を引っ張ってくること、2つ目はお金を引っ張ってくること、3つ目が仕事やパートナーを引っ張ってくることだと思っていて。その3つの役割とは違う次元で必要になってくるのがビジョンだと思っているんですね。「こんな世界をつくりたいから、同じ船に乗ってくれ」って言えるかどうかだと思うんです。

起業って、不確実じゃないですか。「アイデアがあって、こんな世界があったらいいよね」っていうのを一人の人が信じ込んでるだけなんですよね。それが実現される保証はどこにもなくて、実現する唯一の方法はその“不確実”を周りの人に真実になると伝えることだと思うんですよね。「世の中の市況や競争環境があって、これをやれば世の中が変わると思うんだよ」って。それに賛同して色々な人やお金が同じ船に乗っていく。人やお金が入ると物事が動き始めて、そうなるとパートナーが「じゃあ私も」ってなって、ビジネスが大きくなっていくんです。この一連の原動力となるのがビジョンだと思うんですよね。ビジョンなくしていい会社はつくれないので。

僕はアイデアにあまり価値を感じていなくて。サーフィンで例えると、大きな波が来ているとき、どんなにうまいサーファーでも突進していったら勝てないんですよね。波が大きすぎて。だから、ちゃんと波が起きようとしているタイミングでうまく乗っかってサーフィンしなきゃいけないってのは、どんなうまいサーファーでも同じなんですよね。そのときに乗っているサーフボードが1万円か100万円かってのは問題じゃなくて、うまいサーファーであれば1万円のサーフボードに乗ってもいいサーフィンができるんですよね。アイデアの価値はその程度だと思っています。

あと、一番大事なのは誰が乗るか。パーフェクトタイミングで波が来て、300万円のサーフボードを用意しても、素人じゃ波に乗れないんですよね。だから、とにかく市場環境を読む力と、誰が乗るかっていうチームの部分が大事だと思っています。

佐々木:
いい例えですね。サーフィンするんですか?

康井:
3回くらい…(笑)。

ここで再びオーディエンスから質問が。「人が大事」と語る康井氏は、どうやってOrigamiのメンバーを選んできたのかというクエスチョンが投げかけられました。

康井:
僕がOrigamiをつくったときに何をしたかというと、たとえば「今月3人採用したい」と思ったときに、自分は20人会ったら1人は口説けるだろうと思っていたんですね。勝率は5%。1ヶ月で3人採用するのであれば、平日は20日なので1日3人に会わなければいけないってなって。で、毎日のスケジュールを確保して、そこをいかに素敵な人で埋めていくかっていうのを徹底していましたね。

素敵な人の明確な定義は自分の中でも答えは持っていないんですけど、ビジョンに共感してもらえて会ったときにビビビってくるものがある人と組むのが一番なんじゃないかなって思います。

TWDW Day5 UZABESE/Origami


…と、他にもさまざまなテーマについて語られ、康井氏と佐々木氏、そしてオーディエンスを巻き込んで行なわれた90分はあっという間に過ぎていきました。イベント終了後のオーディエンスの様子を見てみると、何かを掴んだような明るい表情をしていたのが印象的でした。もしかしたら、今すぐ使える“武器”を見つけられたという方は少なかったかもしれません。しかし、今後仕事や人生で岐路に立ったときに、この日の康井氏と佐々木氏の言葉を思い出すのかもしれませんね。


編集 = 田中嘉人


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