約1年で月間閲覧ユーザー数5倍と急成長している実名型グルメサービス『Retty』。Google出身のエンジニアや元リクルートの顧問を迎えるなど注目される。社員20名に対し、インターン25名というチーム編成も特徴的だ。そんなRettyが考える理想のチームづくりとは?CEO武田和也さんに伺った。
2014年12月、月間閲覧ユーザー数500万人を突破し、破竹の勢いで成長している実名型グルメサービス『Retty』。そのサービスの拡大と並行し、CFOに三菱商事出身の奥田健太氏、CTOにGoogle出身の樽石将人氏、顧問としてリクルート出身の本田浩之氏を迎えるなど注目されている。
同時にユニークなのが組織形態。社員20名に対し、インターン25名という編成で、驚くべき成長を続けているのだ。スタートアップが組織を拡大させていくにあたり、中途採用、新卒採用、そしてインターンをどのように位置づけているのか。スタートアップにとって「理想的なチームづくり」とは何か。
インターンでいえば、学生と企業間で給与や労働条件、業務内容においてギャップを問題視する声もあるが、Rettyとしてどのように捉えているか。
このあたりの問題意識も含め、CEOである武田和也さんにお話を伺った。
― 新卒採用やインターンを積極的に行なうRettyですが、創業当初から採用は積極的に行なっていたのでしょうか?
Rettyをリリースした時は5人ほどメンバーがいたのですが、当然、最初は中途にせよ、新卒にせよ、人を雇う余裕はありませんでした。社員というカタチではなく、夜や土日に来てもらって「手伝ってほしい」と。協力してくれたメンバーも楽しそうだからという理由で参加してくれていました。
そこから、Rettyの場合、iOS、Android、WEBでの展開を早くから始め、規模が拡大していったので、社員も増やしていきました。
― どのようにメンバーを集めていったのでしょうか?
とにかくたくさんの人に会って、素の自分を見てもらう。話をするということをやってきました。たぶん数百人という数の人に会ってきたと思います。で、実際、オフィスにも来てもらって、見てもらいながら、やりたい事を理解してもらう。もし、興味を持ってもらえれば、次もオフィスに来てくれて。
もちろん、入社してほしい方でも、タイミングが合わないことはありましたね。ただ、その時ではなかったとしても、誰でもいずれ「転職しよう」という時が来るので、その時にジョインしてくれたら、と。もちろん会社のタイミングもあって、両方がハマった時に上手くいくもの。だから「つながり」を大切にしてきた部分はあると思います。
Rettyを始める前に知り合った優秀なエンジニアがいて、本当はすぐ入社してほしかったのですが、他のスタートアップでエンジニアがいなくて困っていて。それで彼を紹介したことがあるんです。そういった「つながり」から、めぐり巡って今ではウチの社員として働いてくれています。
採用とは少し違う観点かもしれませんが、僕らも色々な方に助けてもらって今があるので、困っている人がいたら、できる範囲で助けていく。そういった事から結果的にいい採用につながっていくことは多いと感じます。
ただ、組織として規模が大きくなるにつれて、さまざまな問題も出てきて。Rettyに興味を持っていただけた方に対して、ご迷惑をかけてしまうなども2014年はありました。こういった部分に関しては、これから一つひとつ真摯に向き合っていければと考えています。
― 創業時と現在で、採用する人に求める要件に変化はありますか?
大きな変化はそこまでないかもしれません。というのも、スタートアップは、向いてる、向いていないも重要ですが、やるしかない役割って絶対出てくるので、そこにどんどんコンバートできるかどうか。大企業みたいに役割が明確で「とりあえずそこだけを高速で回す」ということができません。どんどん役割を変えたり、逆に専属でやってみたり。
前職の会社で同じチームだった長束と一緒にRettyを始めたのですが、二人ともプログラミングのスキルがゼロだったのですが、勉強して。そこから少しずつ彼がエンジニアとしての役割を果たすようになっていきました。単にやるしかなかったというところもあって。
― 普通だと「適材適所」というか、ポジションありきの採用ですが、その前提が違うと。
もちろん「こういう役割の人が必要だから採用したい」なのですが、それだけでは解決できないことが山のように出てくるんですよね。当然、スキルベースで「何でもできる人」なんていないので、結局はスタンスの問題になると思います。そもそもスタートアップで働く覚悟があるか。個人が会社の成長のフェーズに合わせてどんどん変化していく。そしてチームとしての成果を最大化する。これが理想だと思います。
― 新卒採用を始められたのはいつ頃でしょう?
2年くらい前からインターンをはじめて、採用も徐々にできるようになっていきました。Rettyとしては大きなところを目指しているので、スケールさせるためにも人員は必要ですし、会社のカルチャーを創っていきたい。こういったところで中途、新卒に関わらず広く探しているという感じです。
新卒だけではなくて、採用全体にチカラを入れているといったほうがいいかもしれません。社員全員で採用チームを作って、Wantedlyで募集するとしても、目標やKPIをカッチリと決めてPDCA回す。けっこう徹底していると思います。
― そこまで社員全員で採用にチカラを入れるスタートアップも珍しいですね。インターンも独自の制度を導入していると伺いました。
『Retty Business School』という制度なのですが、一般的なインターンとは少し違って。ビジネススクールを銘打っているので、ビジネスを実践で学べる場としてインターン生に提供するというコンセプトです。インターン生にもクラス分けがあって、スタート時は「C」で、「C」→「B」→「A」→「S」とクラスが上がっていく。給料もクラスに応じて異なります。
一番のポイントは、“社員がインターン生の成長に真剣に向き合う”という部分。社員がメンターとして、毎月必ず目標設定とフィードバックを実施します。それを全て評価シートに残していく。「BからAにクラスを上げる」「インターンの給料を決める」というのも、メンター社員の役割です。インターン生はもちろん、教える側が成長していくというのが大きなメリットですね。
― 社員側にも、学生側にも「成長が促進される」といったメリットがあると。一方で、インターンは賃金や労働時間など認識の相違で、学生と企業間でトラブルが発生するケースも聞きます。そのあたりRettyではいかがでしょうか?
ほとんどないですね。大事なのは企業側がしっかり情報開示をするということだと思っていて。給与にしても、学べることにしても。あとRettyだと事前に面接をちゃんとしていて、10数名と会って1名に来てもらうかどうかといった倍率なんですよね。そういった意味ではお互いがWIN WINになれるかどうか、見極めていくことが大切だと考えています。
― その面接とRettyでの仕事を経て、優秀なインターンに内定を出していくということでしょうか?
Rettyのカルチャーに合ってビジョンに共感してもらえれば、内定ということはありますが、じつは自社で囲い込もうとは全然思っていないんです。実際、Rettyのインターンを卒業して起業し、VCから出資を受けている人もいます。
Rettyを卒業したインターン生と広くつながって、色んな業界の中心メンバーになってくれたら、というのが純粋に楽しみなところでもあるんですよね。僕が昔いたネットエイジ(現ユナイテッド)も起業家が集まる会社でした。今のネット業界を支えているような人が育っていった。そういう環境は日本にとってプラスですし、自分自身でつくってみたいという思いがあります。
― 長期的な「つながり」を生み出し、結果的に自分たちにも良い影響が生まれるようにする、そういった戦略なのでしょうか?
そこまで深く考えているわけではないのですが…ただ、「この目的を果たすために、これをやろう」と視野が狭くなってしまうと、大切なことを見逃してしまう気もします。できるだけ大きな「何か」に向かって動く方がワクワクしますし、そのほうが色々な化学反応が起きやすいのかもしれませんね。
― 最後に採用における今後の課題を教えてください。
インターン生でも複数名を面接し、厳選して来てもらっているのですが、ビジネススクールという打ち出し方をしているので「何かを教えてもらえる」と勘違いして来てしまう学生がいて。これは中途でも、新卒でも同じだと思いますが、会社としても規模が大きくなればなるほど、指示待ちだったり、受け身だったり、そういうメンバーが出てくると思っています。そこはしっかりと組織としてのブランディングや採用時の見極めをやっていきたいですね。
― Rettyの成長と連動して、また次のフェーズの採用活動や育成にシフトしていくイメージですね。今後も成長・変化するRettyというチームを追っていければと考えています。本日はありがとうございました!
[取材・文]白石勝也
編集 = 白石勝也
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