2016.01.21
元Google社員が、なぜ大阪のスタートアップに? Uターン転職の新しい可能性 akippa広田康博

元Google社員が、なぜ大阪のスタートアップに? Uターン転職の新しい可能性 akippa広田康博

Googleを経て大阪のスタートアップ「akippa」にジョインした広田康博さん。彼がUターン転職を決めた理由、その選択の裏側にあった思いとは? どんな場所で働き、何を大切にして暮らしていくか。これからの時代におけるキャリアと人生の選択、その新しい可能性について考えてみたい。

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元Google社員が選んだ大阪へのUターン、そしてスタートアップでの挑戦

大阪に本拠地を置くスタートアップ、akippaをご存知だろうか。

駐車場の空きスペースを活用したシェアリングエコノミーサービスを展開しており、DeNAや三菱UFJキャピタルなどから 約5.5億円の資金調達を完了。IVS Launch Pad(2014 Fall Kyoto)で優勝したことも記憶に新しい注目のスタートアップだ。

現在、コインパーキング業界において)約4,200箇所の駐車場拠点数を確保しており、その実績は業界3位(2015年12月時点)。Uberなども利用するPayPal モバイル SDKを国内で最初に搭載し、キャリア決済を実現するなどサービスを進化させている。

akippa

Uberなども利用するPayPal モバイル SDKを国内で最初に搭載した。


そのサービスの進化を支えているのがakippaで働くメンバーたち。スタートアップの場合、大阪に拠点を置くことで東京と比較して人材面では不利になりそうだが、GREE、楽天、カルチュアコンビニエンスクラブなど出身の優秀な人材が集まっているという。

そのなかでも今回注目したのがGoogleを経て、同社にジョインした広田康博さん。なぜ「大阪へのUターン」、しかも「スタートアップ」への挑戦だったのか? そんな広田さんの人生における選択をきっかけに、これからの時代における「脱東京」の働き方、新しいキャリアのあり方について考えてみたい。


[プロフィール]
広田康博 (akippa株式会社 執行役員CMO兼事業企画室長)

1982年生まれ。アクセンチュアを経て、当時社員数17名だったRSS広告社(現:Fringe81)に入社。経営企画・営業・広告運用・経理などを担当する。Googleでは大手企業の広告営業・コンサルティングを担った後、2015年7月、第2子の誕生に伴い、大阪に本社を構えるスタートアップakippaに入社。CMO兼プロダクトオーナーとして指揮を取り、早期でのリニューアルリリースなど実績をあげ、チームに欠かせない存在となっている。

世界を旅してスタートアップ、そしてGoogleへ。

― はじめに広田さんが「働く場所」についてどう捉えているのか、伺っていきたいと思っています。大学卒業後、アクセンチュアに入社してからは、東京を拠点にしていたんですか?


そうですね。メインの拠点は東京でしたが、はじめの1年間は愛知、次の3ヶ月は中国に常駐して、工場の業務改革プロジェクトなどを担当していました。


― 「働く場所」や「暮らす地域」にこだわりはありましたか? 「絶対に東京で働いていきたい」など。


もともと、あまりなかったかもしれませんね。アクセンチュアにしても「3年働いたら海外を旅してみよう」と考えていて。実際、3年間務めて退職して、1年かけてユーラシア横断の旅に出てしまったくらいなので(笑)陸路で東南アジア・中東・ヨーロッパなど30ヶ国くらいまわったのですが、いろいろな価値観が世界にはあるんだと肌で感じることができました。

同時に「働く場所」という意味でいえば、自分がやってみたい仕事、人とのご縁もあって、自然と「東京で働く」という選択になっていたと思います。旅から帰国してしばらくフリーでコンサルの仕事をしていたのですが、アクセンチュア時代の同僚に誘われて、当時17名だったRSS広告社(現:Fringe81)に入社して、それも東京でしたね。経営企画、広告営業、メディア営業、広告運用、経理など、会社が成長するために必要なことは何でもやっていました。そこからまた人の紹介もあってGoogleへ…というのがキャリアの大まかな概要です。


― Google時代に担当されていたお仕事でいうと?


職種でいうと「広告営業」ですが、かなり自由度が高く、いろいろなことをやっていました。たとば、Googleが保有するデータを活用した経営課題の解決、経営理念の実現を手助け…本当にいろいろで、広告の話は最後にチラッとしかしないなんて時もありましたね(笑)そういったコンサルティングを3年もやらせてもらえたので、すごくいい経験になりました。

Uターンという決断。仕事も、家庭も、大切にしたい。

akippa_広田康博


― そこからGoogleを退職して、なぜ関西に?


きっかけは第二子が産まれたことです。子どもと一緒にご飯を食べたり、遊んだり、コミュニケーションの時間を増やしたいという気持ちがありました。あとは、子どもたちが熱を出したり、病気になったり、そういう時にもすぐ対応できるようなワークスタイルを考えていて。

いろいろと考えたのですが、子どもが2人になることで妻の負担も増えるし、両親が近くにいてくれる地元である関西のほうが安心だと決断しました。

…同時に、欲ばりかもしれませんが、仕事もやりがいのあることしかしたくなかったんです。これまでFringe81やGoogleというチームで働いてきて、やはりWebで世の中に大きなインパクトを与えられる仕事がしたい、と。

数社からオファーをいただいたのですが、多くの会社は自社の素晴らしさを語っていたのに対して、akippaは自社ができていないことを語ってくれた。そういう素直さや、社員が集まって世の中の不便・困り事を200個書き出して産まれたというakippaの成り立ちに共感しました。このような素晴らしいサービスがスケールしないことは勿体ない、自分が入ることでより成果をあげることができれば、少しは社会貢献ができるんじゃないかと思いました。


― 入社後はどういった仕事に取り組まれたのでしょうか?


入社直後は主にマーケティング業務を担当して、特にGoogle広告は3ヶ月で10倍の成果を挙げることができ安心しました(笑)その後、事業企画室長とakippaのプロダクト責任者を兼務し、先日無事リニューアルしたアプリをリリースできました。これから停めたい駐車場のキャンセル待ち機能、プッシュ通知で空き状況を知らせる機能などを追加して…そこからカンタンに決済ができるなどより便利にしたいと考えています。また、現在は大手企業との提携も進めており、ぜひ期待いただければと思います。

― いわゆるプロダクトマネージャーとしての業務も担当されているということでしょうか。入社半年で、もともと広田さんの専門領域であるWeb広告やコンサルとは別のところでも、ご活躍されていますね。


Fringe81のときもそうですが、「何でもやれる」というのがスタートアップのおもしろいところですよね。もっといえば、東京よりも大阪のスタートアップは人材が不足しているので、枠をこえたチャレンジがしやすい環境といえるかもしれません。Googleは本当に素晴らしい環境だったのですが、大きな裁量が与えられるスタートアップで、世界を変えるサービスを作ることは、それにも勝る楽しさ・やりがいを感じますね。

関西に住むようになってから大阪のスタートアップとの関わりが増え、やはり「いい人がいない」という話はよく聞きます。一方、東京で働いているが、機会があれば関西にUターンしたいという人も実は多くいて、マッチしていないのは非常に勿体ないですね。そのような中でもakippaは東京からUターンしてきて、大阪で働いている社員が他にも2名います。akippaは世界を目指しているし、関西からでも世界で戦えるようなスタートアップを作りたいですね。

Uターン転職で生活の質があがった!?

akippa_広田康博


― 続いて、生活についても伺いたいのですが、関西に戻ってきて、実際のところ生活はどのように変化しましたか?


東京で暮らしていたころに比べて、のんびり生活ができていると思います。というのも、オフィスがある大阪ではなく、いまは妻の実家がある奈良県に住んでいるんですよね。電車で通勤しているのですが、比較的空いている電車に通えていますし、仕事しながら通勤することもあります。やはり東京に比べるとやっぱり全体的に人が少ない。働き方もフレキシブルになり、自宅で仕事をするケースもあるのですが、子どもと話す量は圧倒的に増えましたね。

生活費というところで言うと東京に比べてかなり安いです。東京だとクルマの駐車場代だけで月数万円とられるところもあるじゃないですか。それが奈良だったら半分以下。クルマの維持費が安く抑えられて凄くいいですよね。家族とクルマで出かける機会も増えました(笑)

…あと一番大きいのは、妻の両親が関西にいるということ。東京で生活していた頃は私と妻、2人で家事や子育てを分担していたのですが、仕事もしているし、お互いにストレスが溜まることも多かったんです。

いまは妻の両親と私たちの4人で子育てをしていて、妻のストレスや負担も少し減ったんじゃないかな。いろいろな価値観がありますし、両親には頼りたくないという考え方もあるかもしれませんが、私たちの場合は妻の両親も孫が近くにいることで喜んでくれていますし、子どもたちも話し相手が増えて楽しそうだし、いいコトばかり。とくに若い子育て世帯にはUターンをオススメできると思います。

ただ、課題もあります。

私自身、akippaを経営している一人として考えているのは、「生活水準を下げないとUターンできない」という状況にしたくないということ。できるだけakippaに共感してくれて、入社してくれる人たちにも東京の基準と同等、それ以上を提供できるように努力したい。もちろんそのためには事業を成功させなければならない。まだまだ挑戦はこれからです。


― akippaが大阪発のスタートアップ企業のモデルケースとなり、大阪のスタートアップが盛り上がることで東京からのUターンも増えていく。そんなご活躍を期待しています。ありがとうございました!



文 = 白石勝也
編集 = 瀧澤和也


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