3カ月間、アメリカでリモートワークをしていたフリーランスデザイナーの土田あゆみさん。どんな働き方をし、そしてどのように仕事の幅を広げたのか?これからサンフランシスコに拠点を置く灰色ハイジさんが対談。働く場所、時間にとらわれない「リモートワーク」はデザイナーのキャリアに、どんな意味をもたらすのか?
働く場所や時間を自分自身で選び、仕事をする「リモートワーク」。トヨタ自動車やリクルートなど、制度として導入しはじめている企業も少しずつ増えてきている。地方在住者や子育てをしながら働きたい人など、それぞれの暮らしと仕事の両立を後押ししてくれるワークスタイルだ。
個々に置かれている状況に応じて、リモートワークのもたらす効果はさまざま。では、デザイナーにとってはどんなメリットがあるのだろう?
リモートワーク×デザイナーの可能性を探るべく、2016年10月5日に開催された、「Remote Style Meetup Vol.1 デザイナーの新しい働き方を考える」での土田あゆみさんと灰色ハイジさんの対談レポートをお届けする。
アメリカに3ヶ月間滞在し、リモートワークを実践してきた土田あゆみさん。これから海外に拠点を移す灰色ハイジさんが質問を投げかける形で進んでいった今回の対談。デザイナーの働き方・キャリアの可能性を広げるヒントが見えてきた。
[登壇者]
灰色ハイジ(フリーランス/LiB)
土田あゆみ(フリーランスデザイナー )
ハイジ:
LiBで働きながら、フリーランスとしても活動しているデザイナーの灰色ハイジです。今日はよろしくお願いします。この1年の間、東京とサンフランシスコを行ったり来たりしていたのですが、夏に結婚しまして。主な拠点をサンフランシスコに移すことになったんです。そこで、デザイナーのリモートワークについて詳しく伺いたいなと思い、実際に海外で実践していた土田あゆみさんに色々と聞いてみることにしました。
土田:
よろしくお願いします。新卒でWeb系の広告代理店に入社し、そこで3年働いた後、フリーランスのデザイナーとして独立しました。現在は、Webデザインとグラフィックデザイン、イラストレーションの3つをメインに仕事をしています。
ハイジ:
まず最初に伺いたいのですが、どうしてアメリカに行こうと思ったんですか?
土田:
もともと海外で働きたい思いはありました。フリーランスとして働き始めた頃から、ずっとカフェで仕事をしていて。ほとんどリモートワークのような状態だったんです。この働き方であれば、周りの人、出会う人を変えて、働く環境を変えた方がいいんじゃないか。そんな思いもあったので、アメリカで働いてみることにしました。
以前、仕事に余裕ができたタイミングで2週間くらいアメリカを訪れてみたんです。現地でクルマを借りて、色んな州を巡ってみたら、サンフランシスコとニューヨークがすごく面白かったので、その二カ所に決めました。
実際に暮らしてみると、サンフランシスコはWeb系のデザイナーが多かったのですが、ニューヨークはグラフィック系のデザイナーが多くて、それぞれで異なる刺激をもらえました。
ハイジ:
日本以外の景色を見て、なにか印象に残っていることはありますか?
土田:
何かを切り詰めて仕事をしている人が全然いなくて。もちろん働いてはいるんですが、みんな仕事以外の時間も大切にしているんです。海外に行ってみて、彼らのように緩やかな時間を確保しなければ、デザインに必要な柔軟な発想は生まれないなと思いました。
たとえば、現地のデザイナーの多くはカフェでゆったりと仕事をしながら、近くにいるデザイナーとコミュニケーションをとったり、仕事が早く終わったら、デザイナーが集うミートアップに積極的に参加したりしているんです。パソコンと向き合うだけではなく、他の人とコミュニケーションをとる時間を大切にしている人が多かったのはすごく新鮮でした。私自身、そういう時間を大切にしないと頭が凝り固まっていってしまうと感じましたね。
ハイジ:
実際のところ、コミュニケーションで何か困ったことってありましたか?仕様のことなど隣に誰かいればすぐに聞けることも、ひとりで作業しているとなかなか聞くタイミングなどが難しそうで……。
土田:
対面でのコミュニケーションに越したことはなくて、早いし、確実だと思います。ただ、私は言語化するのが好きで、チャットやメールだと頭のなかにあるイメージを整理して伝えられるので、リモートワークが逆に自分に合っていたのかもしれません。リモートでのコミュニケーションを苦に感じたことはありませんでした。
ハイジ:
そうなんですね!とても参考になります。
ハイジ:
話は変わるのですが、アメリカでは現地の仕事もたくさん受けていたんですよね。元々コネクションがあったんですか?
土田:
イヤ、全く…。渡米してから仕事を獲得していきましたね。
ハイジ:
どうやって仕事をとっていったんですか?
土田:
とにかくイベントに足を運びました。デザイン系やWeb系のイベントに参加して、そこで知り合った人に、「日本人のデザイナーなんだよね」という話をしてみたんです。そうしたら、「日本のデザインが見てみたい」と興味を持ってもらえて、少しずつ仕事の依頼が来るようになって。とにかく、たくさんのイベントに参加して、自分を売り込んでいったら仕事につながっていきました。
良い仕事を獲得するためには自分自身が良いクリエイティブを提供することはもちろんなのですが、イベント参加やアウトプットなどの積極的なスタンスがセットになって初めて良い仕事につながるということなんだと思います。
ハイジ:
実際にリモートワークされてみて、どんな人が向いていると思いますか?
土田:
リモートワークって一人で作業することが必然的に多くなるので、だからこそ画面越しにいる相手とどれだけコミュニケーションをとれるかが大事ですね。わからないことがあったらドンドン質問して全然イイと思います。特に相手がリモートワークをしている人なら、共通の悩みを抱えているケースも多いので。
ハイジ:
人に質問できるかって重要ですよね。絶対に悩みには直面すると思うので、そのときに恥ずかしがらずに質問することはモチベーションを保つためにも大切だと思います。では、最後にデザイナーはどういったスタンスでリモートワークに臨むべきか、土田さんの考えを教えてください。
土田:
ある程度の自信を持つことだと思います。多くの人が「自信がない……」と思ってしまいがちですけど、自分のことを客観視してみると、強みになる部分が必ずある。その強みをきちんと表現し、アピールすること。これが何より大事なスタンスだと思います。そういう人のもとには仕事が来やすいですし、安定したモチベーションでリモートワークを続けていけると思います。
ハイジ:
土田さんの話を聞いて、サンフランシスコでのリモートワークの不安が解消されたような気がします。そして、デザイナーとしての可能性も広がっていくんじゃないかというワクワクも生まれました。今日はありがとうございました!
(おわり)
文 = 新國翔大
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