2017.10.18
日本初の快挙!『STUDIO』が世界の注目度No.1プロダクトになれた理由|石井穣

日本初の快挙!『STUDIO』が世界の注目度No.1プロダクトになれた理由|石井穣

日本発のデザインツールが、いま世界で注目されている。ドラッグ&ドロップでデザイン、コーディングができる『STUDIO』だ。いかなる日本のチームも達成できなかった快挙、WEBトレンドメディア「Product Hunt」デイリー1位に! 日本発で海外でも注目される理由とは?

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世界が注目する『STUDIO』。 Product Hunt1位という快挙

WEBサイトの制作プロセス・デザインに変革を起こそうとしているプロダクトがある。ドラッグ&ドロップだけで、簡単にデザイン、コーディングができるツール『STUDIO』だ。

人気の秘密は、Sketchなどのツールとはレイアウト方法が全く違う直感的にデザインができるUI。操作はドラッグ&ドロップだけ。デザインしたものは瞬時にコードに変換され、その後のコーディングは必要なし。

画像などのパーツもピタリとはまる特許も取得したオリジナルのレイアウト手法。レスポンシブ対応とスマホ対応を勝手にやってくれる機能にも、大きな反響があったそうだ。


STUDIOdragdrop

株式会社オハコからMBOを行ない、直後にはIDEOがLPとして出資しているD4Vなどから増資した。


WEBプロダクトの最新トレンドを発信しているメディア「Product Hunt(*1)」にてデイリーランキング1位(#1 Product of the day)に選出。日本発のデザインツールとして、世界中から注目を集めている。

日本製品がProduct Huntに取り上げられることは珍しく、1位は初の快挙(*2)。そのことについて「STUDIO」のCEO 石井穣さん(26)は次のように語る。


「実は狙ってたんですよね、Product Huntにハントされるの。上位はいけると思っていましたが、まさか1位が獲れるとは…僕らも驚きました」


2017年4月にβ版をリリースし、ユーザーは着実に増え続けている。2017年10月時点ではユーザー数1万人。うち、海外ユーザーは約60%だという。

今後は本格的な海外進出を見据え、オフィス拠点を海外に移すことも検討しているという。そんな勢いにのっている『STUDIO』は、なぜ世界で評価されているのだろうか。

そして、世界基準で戦えるプロダクト開発の思想とは?


「STUDIO」Facebook Pageより


※1|Product Hunt…世界中のWEB開発従事者や投資家たちが、新たな事業/サービスを求めて訪れているメディア。
※2|自社調べ(2017年10月18日現在)


[プロフィール] 石井 穣(いしい ゆたか)|STUDIO株式会社 代表取締役CEO
大学在学中にWeb制作会社を起業。その後、旅行系のスタートアップ「Travee」を立ち上げ、取締役CPO(Chief Product Officer)就任。約2年間の運営後、大手旅行会社に事業売却。2016年12月に株式会社オハコプロダクツ(STUDIOチーム)にジョイン。MBOを経て代表取締役CEOに就任。

『STUDIO』誕生秘話。実体験から感じた「ムダ」をゼロにしかった

石井穣


― 日本生まれのプロダクトがProduct Huntに取り上げられ、かなり海外で話題になって…。すごいです。


じつは「自分たちがガチでほしいプロダクトをつくろう」として生まれたのが『STUDIO』だったんですよね。

WEBサイトを構築する過程には、コーディングをする場面が必ずあって。このコードを書く「面倒」をゼロにしたいと考えました。

学生のころから受託制作を幾つも経験してきて。現場だと多種多様なWEBサイトを扱うんですよね。その過程で、設計・デザイン・エンジニアリング・運用というWEBサイトの制作フローを毎回辿ります。ある程度パターンがあり、重複作業も多い。コーディングは似たものの繰り返しになっていく…ホントにここってムダだよなって。

同じような作業があるなら、そこは自動化し、デザイナー独自の価値が発揮できる時間をつくるべき。それを『STUDIO』で実現しようとしているんです。

デザイナーが介入する価値は、もっと設計の段階など上流にある。そう僕らは考えています。

ボツ機能も公開。泥臭い検証が生んだ「共感」

― その課題が世界中のデザイナーに共感されたというわけですね。


おかげさまで、順調にユーザー数を伸ばしています。ただ、STUDIOを作るにあたって、じつは事前調査ってほとんどしていないんですよね。プロダクトアウトの考え方で勝負していこう、と。求められている前提があるプロダクトではなくて。

ただ、どこかで”イケる”という自信がありました。サービス開発者って世界共通でいっぱいいる。で、僕たちもその開発者の一員で。本当に僕たちが納得できる、めちゃくちゃ良いものを作れば、その何万人の開発者も同じように共感してくれるって。盲信に近いですね(笑)

Product Huntに取り上げられて多くの人に認知されたことで、みんな同じ課題を感じていたとわかってうれしかったですね。


― 今年の4月にβリリースされてから、約4ヶ月でProduct Huntに取り上げられたということで、めちゃくちゃ早いですよね…。


そうですね。ただ、カンタンではありませんでした。『STUDIO』が解決する「課題」について共感は得られても、実際に使ってもらえなければ意味がない。とりあえず試験的に機能をリリースしてみて、そのフィードバックを元に改善しています。実際、リリースしたけど想定した反応が得られず、引っ込めたりした機能もあって。


― それはどんな機能だったのでしょうか?


たとえば、この外部のAPIを読み込んで、デザインに反映させることができる機能ですね。これは一度リリースしたもののボツにしました。


STUDIO_API


これは、SpotifyのAPIを叩いたら、アルバムのジャケット写真を取得し、デザインに即座に反映できるという機能でした。こういったリアルデータを用いたデザインは、ユーザビリティを確認するために重要だと、アメリカだと主流になっています(*3)。

ところが、APIを取得するなど知識が必要になる。ハードルが高いわりに、そこまでは求められていないということが出してからわかってきて。

海外で主流だからといって、『STUDIO』上でも求められているわけではない。どんな機能をどのように実装すればユーザーのためになるのか、こだわり抜いて考えているつもりです。あたりまえですが、いきなりパッて浮かんできたアイデアが、正解だったということはほとんどないですね。

Product Huntの影響で急速に認知されたので、あまりそう見られないのですが…実は僕たちも”もがきながら”作っているんです(笑)


― 伝わってきました(笑)その他、UXを向上させるために、サービスの機能以外に気をつけていたことは?


ひとりひとりのユーザーとコミュニケーションして仲良くなること。ファンになってもらおうってことは意識していますね。

そのためにユーザーからの問い合わせや意見にはできるだけ速く回答するようには心がけています。Product Hunt上でもコメントが100件ぐらいドバーッてメッセージが来て、めちゃくちゃきて…。アメリカだと昼夜逆転なので寝ずに対応していました(笑)

あとはインターコムというチャットのCSツールを使っているんですが、チャット感覚で随時問い合わせメッセージもできるだけ即レスするようにしています。


※3|参考:Josh Puckett「Modern Design Tools: Using Real Data」

世界標準でいこう。海外ユーザーが有志でサポートも

studio ishii


― 『STUDIO』は海外プロダクトのようなデザインですよね。


そうですね。海外に出すことを前提にデザインしています。そもそもウェブだったら世界共通じゃないですか。日本とか海外とか、あんまり意識していなくて。クリエイターが抱える課題や、実現したい世界観は、どこの国とか関係ない。グローバルで共通ですね。もちろん言語を合わせたりローカライズはしていますが。


― ローカライズはどのように?


たとえば、スペインでは「無償で手伝うよ」って名乗り出てくれた人がいたりして。彼は、スペイン語に翻訳してくれたり、Twitterのヨーロッパアカウントを作って勝手に運用してくれたり…めちゃくちゃ助かってます(笑)「現地でイベントやろう」なんて話も進んでいたりしますね。

中国やロシアにも結構ユーザーがいるんですけど、そこもネイティブのユーザーに手伝ってもらおうとしています。スタートアップは開発でめちゃくちゃ忙しいですけど、ユーザーを大切にする。仲間という意識のほうが強いかもしれない。当たり前のことを守っていれば、言語の壁なんてあっという間に超えていけるんですよね。


― サービスが共感されてどんどんファンが増えていくっていうのは、めちゃくちゃ面白いですよね。働き方も変わっていきそう。


どう実現していくかはこれからですが、実際に海外から「働きたい」という連絡ももらっています。現在はリモートで働ける体制ではないですが、今後は柔軟で多様なチームを作りたいと思っています。


― 最後に伺わせてください。「コードを書かなくてもアイデアをカタチにできる世界」でなにを実現させたいのでしょう?


想いを持っている人の実現スピードを上げたいです。技術スキルの制約がアイデアを実現するハードルになってはいけない。そのために「良いアイデアがあるからとりあえず作ろう」と誰もが思える環境をつくりたいんです。そうすれば、挑戦の機会を増せる。もっとよりよいサービスが生まれる。本当に革新的なサービスは、その先に生まれるはず。『STUDIO』でその手助けができれば最高ですよね。


STUDIO 石井穣



文 = 大塚康平


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