平日の夜と土日を使って2週間で開発された、デザインに関する記事をシェアするサービス「siori.design」。最速でプロダクトをつくる上でデザイナーは技術を、PM・エンジニアはデザインを、フルスタックで理解する重要性が垣間見えた。
プロダクト概要
「siori.design」…デザイン関連のWebサイト・記事にコメントを添えて投稿・共有できるサービス。2018年2月26日にリリース。
プロジェクト概要
夜の時間と週末の時間、わずか2週間で開発。Slack、GitHub、Sketchを駆使しながら全員がリモートで連携をとった。最初は小島氏がWordPressを使ってプロトタイプを作成。そこに吉竹氏が参加しデザインを、さらに熊田氏が加わってRuby on railsを使って本番のアプリを開発した。
ー そもそも、なぜデザインに特化した共有サービスをつくろうと思ったのでしょう?
小島:
デザイナーたちの情報発信に変化が起こっていて、日本でも情報を流通させるプラットフォームが必要になると考えました。ロゴの制作過程やブランドストーリーなどをブログに書くケースが増え、記事もめちゃくちゃシェアされていますよね。
でも、日本には米国の「Designer News」のようなコミュニティがない。最近はピースオブケイクに深津さんが入り、noteでのデザイナーの記事も盛り上がりはじめましたし、発信の数もこれから増えていくはずだ、と。
ー 共有する記事に縛りやルールは?
吉竹:
今は特に設けていません。ただ、『siori.design』が扱う情報が「デザインに関するもの」と「デザイナーが関心を持ったもの」のどちらがより良いんだろうというのは、判断が難しいと思っています。今はとりあえず「デザイナーが関心を持った記事全て」に設定しています。ヘタすると「デザイナーが好奇心を持った物事すべて」となるけど、今はそれでいいと思っているんです。大事なのは「デザイナーの視点や考え方」が共有されることかな、と。
吉竹遼|デザイナー
フェンリル株式会社にてスマートフォンアプリの企画・UIデザインに従事後、STANDARDへ参画。UIデザインを中心に、新規事業の仮説検証や既存事業の改善などを支援。現在は よりデザイン としてデザインツールのワークショップやロゴデザインも手がける。著書に『UIデザイナーのための Sketch入門&実践ガイド』(ビー・エヌ・エヌ新社)など。
熊田:
じつは「さすがにこれは趣旨と違う」という記事もある。正直、削除しようか迷ったりもしたんですけど、静観しています。ユーザー自身が空気を察し、徐々にコミュニティの空気感をつくっていきたい。
小島:
もちろん運営側として「こうしたい」はありますけどね。今ってフロントエンドの話が凄く少ない。デザイナーにとって重要なところなので、ぜひ投稿をお願いします(笑)そういった意味でユーザーを「職種」でフィルタリングしたくないし、あまり職種で縛るのは意味がないと思っています。
― 今回の開発期間はわずか2週間。めちゃくちゃ早いですね。
小島:
実は開発はほとんどリモートで行われました。それぞれ別の仕事をしていたり、熊田くんについては遠方に住んでいてすぐに会える状況ではなかったんです。全員が揃って顔を合わせたのも今日が3回目(笑)…で、特に気をつけたのは、仕様を最小限にしたこと。思い切っていろいろと捨てました。
熊田:
他のディレクターの人だったらまだリリースできていないかも。「もっとコレやろう」と言っちゃいがち「必要最低限の仕様」がどこまでか、盲目になりがちで。
小島:
どうしてもスピーディーにやりたかった理由もあって。デザイナーが集まるイベントが2月26日にあるから「そこで宣伝したいね」と話し合いました。
熊田:
あ、もうひとつ…テストでTweetしたら見つかっちゃったんですよ(笑)
小島:
そうそう。『siori.design』の記事をTwitterにテスト投稿してた。誰も気づかないと思ってたんです(笑)。そうしたらユーザー登録が自然とはじまり、投稿もしてくれた。ポジティブな反応が多く、普通に使われ出しちゃって。ああ、これはいつリリースしてもいいねってなりました。
あとは、有名なデザイナーの長谷川恭久さんや、その他にも本の執筆などをされているデザイナーさんたちにクローズドで使ってもらって、機能に対して過剰か過不足か、的確にフィードバックがいただけて。答え合わせしながら、リリースができました。
小島芳樹|プロデューサー兼フロントエンドエンジニア
会社員として、Webデザイナー・フロントエンドエンジニアを経て、現在は事業開発・マーケティングの仕事に従事。個人でブログ「TECHNICAL CREATOR」を運営中。
ー 2週間で開発できた一番のポイントはどこにあったのでしょう。
小島:
僕がフロントエンドエンジニアとして、熊田くん・吉竹くんとそれぞれサイト制作をしたことがあったのは大きかったです。お互いに個性や出来ることをわかっていたのが大きかったと思います。ここまでは口出ししよう、こんな進め方をしよう、と。
熊田:
前提として、ある程度それぞれの専門分野で独り立ちしているメンバーでした。デザイナー側は吉竹さん、エンジニア側は熊田、その中間のつなぎ役としてフロントエンドエンジニアをやっている小島さんがいたので、コミュニケーションはかなり円滑でした。
吉竹:
この3人体制の相性がめちゃくちゃ良かったですよね。ガッツリ作ったあとに見せて、「やっぱりできなかった」という出戻りがないだけでもかなりスムーズになりますからね。
熊田裕明|バックエンドエンジニア
ウェブ制作会社を転々としインフラ構築やRails、PHPを利用したウェブシステム開発技術を習得。業務委託でベンチャー企業を中心にチーフエンジニアとして参画しながら個人でも日曜大工的にWEBサービスの開発を日々行なっている
ー 最後に今後の展望は?
熊田:
機能を増やしたい(笑)SNS同時投稿、Google Chromeのエクステンション、カテゴリーの追加、広告枠……絶賛検討中です!
小島:
まだまだ不足している部分はあるので、利用してくださってるユーザーさんにも一緒に育てていただけたらうれしいですね。正直、僕らもこの先、どうやって運営していこうかは悩んでいて(笑)。せっかくいいモノができたし、きちんと運用したい。ある程度、お金を稼げたらもっと色々なことが出来るかもしれないので、スポンサーさんを募集中です(笑)
吉竹:
ユーザー観点だと、いまデザインに関わってる人とか興味ある人が、なにか「いいな」と思った情報を、気軽に投稿して吐き出せる場所を作っていく。ここがまずは1つ目のゴールなのかなと考えています。
文 = 大塚康平
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