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BUMP OF CHICKENと初音ミクのコラボを仕掛けた異才、東市篤憲の勝負師魂

2018-10-17

BUMP OF CHICKENと初音ミクのコラボを仕掛けた異才、東市篤憲の勝負師魂

映像監督である東市篤憲さん。BUMP OF CHICKENが初音ミクとコラボをしたrayのMVの仕掛け人だ。パリの名門オペラ劇場に飛び込みでプレゼンするなど、思い切った行動も。「ただの映画好きだった」と語る彼は、いかに映像作家としての道を切り拓いたのか?そこには「ここぞ」の場面で勝負に出る「勝負師魂」があった。

映像監督「東市篤憲」を形づくったシゴトのやり方
・毎日1〜3本の映画を観る
・感想&スタッフの陣営をノートにまとめる
・朝9時に出社し、全フロアを掃除
・炎天下の撮影、キンキンに冷えたお茶を配る
・勝負の勘は、営業経験と麻雀で培った
・パリの名門オペラ劇場に飛び込み営業

BUMP OF CHICKENと初音ミクのコラボを仕掛けた異才、東市篤憲

BUMP OF CHICKEN、結成以来初の試みだった。

バンド史上初のコラボレーション。そのアーティストとして初音ミクを起用したのだ。2014年3月12日にリリースされたオリジナルアルバム『RAY』の収録曲『ray』での出来事だ。

楽曲は配信直後から話題となり、各メディアがこぞって取り上げた。iTunes storeのランキングでも1位を獲得し、日本はもとより世界中を熱狂の渦に巻き込んだ。

このコラボレーションの人気を押し上げたのが、ミュージックビデオ(以下、MV)だ。

CG合成ではなく、BUMP OF CHICKENと初音ミクが同じステージに立って共演する。前例はなく、合成なくリアルタイムに収録し、撮影もプロジェクションマッピングが用いられた。

  

BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」


この音楽業界、映像業界の常識を覆すアイデアを仕掛けたのが、クリエイティブプロダクションA4Aの東市篤憲さんだ。

現在はBUMP OF CHICKENだけではなく、欅坂46、ポルカドットスティングレイ、MY HAIR IS BAD、miwaといった一流アーティストのMV、BLACK PINKのLIVE演出などを次々に手がける注目の映像作家だ。

実績だけに目を向けると、まさに”映像業界の異才”。しかし、意外なことにこれまで歩んできた道のりは決して平坦ではなく、ましてや輝かしいものではなかったという。

「10〜20代の頃は実績はもちろん、技術もないただの映画好きだった。」と笑う東市さん。

いかにして映像業界のトップランナーに躍り出たのか。

彼の軌跡から、世の中をアッと驚かすアイデアのヒントを探りたい。

実績も技術もないなら、ガッツで勝負

東市さん

10代の頃は、岩井俊二さんが大好きだったんです。岩井俊二さんのインタビュー記事を読んだら、「学生時代に映画を1000本観た」って書いてあって。「じゃあ、それを超えてやろう」と思って、毎日1〜3本の映画を観ていました。

当時ってインターネットはなかったけど、CSでスペースシャワーTVや、MTVが見れて、MVを観るのも面白かったから「映像好きになろう」と思って見ていましたね。もしかしたら大して好きじゃなかったかもしれませんが、「俺は映像が好きだ!」って思い込んで無理やり観ていました(笑)。

そんなことをしていたら、本当に好きになっていって。映画の感想や監督、カメラマンなど、スタッフの陣営などをノートにまとめていました。

ただ、大学進学で失敗してしまって。第一志望の美大学へ行けなかったことから、あまり勉強する気もなく、バイト三昧でした。バイトに明け暮れてそこそこ稼いで、友達と麻雀して……みたいな(笑)。結構ダメダメな生活を送っていましたね。

転機になったのは、在学中、父親の口利きでCM制作会社でバイトできることになりました。

ただ、実績はもちろん技術はない。わかってはいたけど、当時の社長から大したコネでもないのに「コネで入ったバカ息子だから何もできないだろ。」って言われたことにカチンときて。

朝9時に出社して、1階から5階までの全フロアを掃除したり、真夏の炎天下での撮影のときに氷を買ってきてスタッフにキンキンに冷えたお茶を配ったり……”技術以外”で勝負し始めたんです。

すると不思議なことに周りが喜んでくれるようになって。社長も「まぁしょうがねぇな」って感じで、社員として入社できたというわけです。

パリの名門オペラ劇場に、アポなしプレゼン

東市さん

その後、東北新社のグループ会社、WOWを経て、A4Aを設立しました。WOW時代に知り合ったのが、音楽家の渋谷慶一郎くんでした。

彼と意気投合して、「一緒につくろう」という話になったのが初音ミクのオペラだったんです。A4Aを設立して最初の仕事ですね。

いろいろ初めての事ばかりで、その時の自分にとっては、大変なことばかりでした。ただ、パリ公演の実現には、学生時代にアルバイトで培った営業経験と麻雀で培った勝負勘がすごく活きて。

パリの名門シャトレ座で公演したんですけど、別にコネクションがあるわけではなく、最初のきっかけはアポなしのプレゼンでした。2分間くらいのトレーラーをつくって、シャトレ座にピンポーンって(笑)。すると、総支配人が、「日本から来たの?明日1時間だけなら話を聞ける」ってことになって。トントン拍子で話が進みました。

衣装もそうですね。当初初音ミクの衣装を予定していた別のブランドは、時間の関係で難しいと言われていたんです。ところが、僕も渋谷くんもそういうときに燃えるタイプで(笑)。「じゃあ、ルイ・ヴィトンに話をしてみよう。」と、すぐにアプローチをかけました。

すると、当時、ルイ・ヴィトンの服飾部門を統括していたマーク・ジェイコブスの側近が日本のアニメが大好きで。「今、初音ミクがキテる」とマーク・ジェイコブスにプッシュしてくれたんです。僕らからも猛プッシュして(笑)

一週間もしないうちに大量のデザイン画が送られてきたときは驚きましたね。

結果的にパリの公演は、現地のメディアにも取り上げられ、とても手応えのあるものになりました。

初音ミクのオペラからつながっていった、BUMP OF CHICKENとのコラボレーション

パリのオペラをきっかけに、スタッフから声をかけていただいて、BUMP OF CHICKENと初音ミクのコラボレーションのお話をいただきました。初音ミクを円形の半透明のスクリーンに投影し、レイヤーになった紗幕にプロジェクションマッピングするという企画を提案しました。それが実際に実現したのが『ray』というMVでした。

撮影のときはバイト時代のお茶の経験を思い出して、別途スタッフ人数分のオリジナルTシャツを用意して……結果として、当時そこまで YOUTUBEが見られていなかった時代に、3日間で100万再生くらいまで達したのは驚きました。

毎回が背水の陣

偉そうに語ってきましたが、結局僕は毎回背水の陣なんですよね。

これまでは、いいものをつくっているつもりでも、賛成も批判もされない状況に少なからずフラストレーションを抱えていた。「これをやったら世の中が自分を覚えてくれるんじゃないか」という想いでやっていました。

しかし、そういうことを考えているうちは脱却はできないんですよ。「最高のものをつくってやる」となったときに初めて一歩抜け出せる。仕事をしていく中で出会ったアーティストとのやり取りの中でそのことに気づきました。

だから、毎回背水の陣のつもりでベストを尽くしていきたいと思っています。

あと、これからはマルチタスク型の人が強い時代になっていくと思っています。ミュージシャンにも絵がかけたり、動画を作れたり、多才な方が多いんですよ。僕も社員には「最低3つのスキルがないと会社にはいられない」って話をしているんです。

これからの時代を活きていくためには、いくつかの技術を総合して多面的に見せていくという道が有効なのかもしれませんね。

※本記事は、大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDOにて開催されている連続講座、「企画でメシを食っていく」(通称・企画メシ)の講義内容をCAREER HACKにて再編集したものです。

撮影:加藤潤



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