せっかく家具を買ったのに、部屋にマッチしない…。そんな失敗がなくなるかもしれない。 スマホサービス『KAREN』は自分の部屋にピッタリな家具をプロが選び、3Dでインテリアのイメージを提案してくれるスグレモノ。そんな画期的なサービスの開発のウラ側について武藤諒俊さんにお話を伺った。
・オンラインで質問に答えたり部屋の写真をアップロードするだけ
・独自基準で採用したインテリアのプロがコーディネートを提案してくれる
・写真のようにリアルな3Dの完成イメージを確認できる
・コーディネートに使われた家具はそのまま購入できる
・1部屋7980円という業界最安価格
[プロフィール]
武藤諒俊 ASHBERY 創業者 代表取締役CEO
サンフランシスコbtrax社でUX業務を経験後、2015年リクルートホールディングスに新卒で入社。プロダクトマネージャー、UXデザイナーとして3度の新規事業立ち上げに従事。2018年、3Dインテリアコーディネートサービス『KAREN』を運営するASHBERYを創業した。
ー 家具購入の失敗って私もあります…(笑)でも部屋はオシャレにしたいけど失敗したくない人にとって待望のサービスだと思います。着想はどんなキッカケが??
もともとはぼくの、失敗体験からでしたね。
1LDKの物件からワンルームの物件へ引越ししたんです。使っていた家具を新居に持っていくと、サイズやテイストが合わなかった。足の指をぶつけないように移動したり、住みづらくなってしまいました(笑)。
同じような課題を持っている人がいるんじゃないかと、まずは友人にヒアリングしたんです。自分のようにサイズ感で失敗したくないことに加えて、おしゃれに対して高い理想を持つ女性が多かった。インスタグラムやピンタレストでおしゃれな世界観のインテリアを見ているけれど、いざ実践しようと思うと、自分の部屋に馴染まないと。
さらにリサーチをしようと、スキルシェアサービスの『ココナラ』を見てみたんです。すると、個人のインテリア・コーディネーターがたくさんいて、500件くらいの取引がある。しかもほとんどがMAXに近い高評価。これは裏付けを見つけたと思いましたね。ユーザーへのインタビューを重ねて、サービスの想定ターゲット像を固めていきました。
この『KAREN』の原型となるアイデアを思いついたのが昨年5月末。楽天にM&AしたFablicにいたエンジニアの水谷と2人でサービスを作りはじめました。
6月初旬にはテストサイトを作ってフェイスブック広告を出したら反応が良くて。7〜9月に開発をして、11月からテスト版のサービスを運用してきました。
市場リサーチをかなり念入りにやった結果、想定通りのターゲットユーザーに利用いただけている状態です。
ターゲットユーザーは2つのパターンに分けていて。まずは30代前半の主婦です。ライフステージが切り替わるタイミングで部屋の大きさや必要なインテリアが変わるんですが、特に子どもがいる家庭だと、家に友だちが来ることが圧倒的に増えるようで。見られてもいいような部屋にしたいと悩む女性が多いようです。
もうひとつのターゲットが20代後半〜30代前半の単身女性です。日常のほとんどを仕事に費やして、部屋にいるのは週末くらいなんだけど、だからこそ自分が癒されるためにインテリアにこだわりたいという人たちです。
ー 「インテリア選びに失敗したくない」というニーズはずっと昔からあったようにも思います。同様のサービスがなかったのはなぜでしょうか。
これまで、個人のインテリア・コーディネーターに頼むか、店舗スタッフが対応してくれる無料サービスという二択がほとんどでした。前者は数十万円かかるようなサービスで主に高所得者層向け。後者だと、自社の商品しか提案してくれません。他にもインテリアの3Dコーディネートツールはあるのですが、自分で家具を選択しなければならず、それだと、考えるのが難しく、選べない人が出てくる。また、3Dの品質が64レベルでクオリティが低いので、見ていてワクワクしないんです。
『KAREN』では、とにかく、インテリアコーディネート自体の普及とオペレーションの効率化を意識しました。これまで限られた層にしか使われていなかったサービスを、手軽に多くの人に使ってもらうことを前提に価格を大幅に下げ、一般に普及していこうと考えました。また、これまで対面で長い時間をかけていたヒアリングや採寸などをオンラインに置き換えて自動化することで効率化を測っています。
ー インテリア・家具はレガシーな業界だと思います。そこで働くひととの連携はすごく大変じゃなかったですか?
やはり採用ですね。『KAREN』のサービスはインテリア・コーディネーターさんが居なくては成り立ちません。現在は50人前後いますが、最初は人づてに建築系の人から紹介してもらったり、家具屋の店長に依頼したり、とにかく地道に人を探しました。
IT業界だとSNSを使ったダイレクトリクルーティングも増えてきましたが、インテリア業界ではそういった動きがないですから。また、そもそもウェブアプリの製作には慣れていても、インテリアや3Dの知識に疎かったので、業界の当たり前を知ること、そのキャッチアップは重要でした。
加えて、人を介さないオペレーションも重要なテーマでしたね。人力作業を減らすことがユニットエコノミクス成立の前提になっています。ただ、現状の業界標準があまりに非効率なので、ちょっとでもオンラインに置き換えるだけで圧倒的に効率化できたりします。
例えば、インテリアの好きなテイストを自ら言語化することが難しいと思うんです。この課題に対し今まで人が対面でヒアリングしていたところを、KARENではオンラインの診断テストを開発し、人を介さず好きなテイストをキャッチアップできるようにしています。
この例は一部で、将来的にはAIを使った自動化もやっていく予定です。とにかくコーディネーターがクリエイティブなことに集中できる環境づくりを心がけています。
ー 提案に使う3Dイメージはめちゃくちゃリアルですよね。これを実現するのは技術的に大変だったのでは?
3Dイメージを見て、自分が求めていた新しい暮らしを画面の向こうに感じられなければいけないので、ワクワクできるような3Dイメージを提案できるよう注力しました。でも、3Dイメージって技術面よりも、コスト面が大変なんです。例えば1枚のイメージを作るために数万円かかることもあって、これは普通の低価格サービスだとペイできません。
イメージって提案資料でしかなくて、提案が終われば必要なくなるので、通常はここのコストを抑えがちなんですね。でも『KAREN』では、提案の先にECサイトがあって、購入してくれると僕らに収益が入る仕組みになっています。だから3Dイメージが綺麗なほど、売り上げにつながる仕組みなんです。
3Dイメージのクオリティーをとにかくあげたことも、これら女性に支持を得た大きな要因だと思います。
ー 提案の先にECサイトがあるという、これまでとは異なるビジネスモデルだからこそ、なしえたサービスなんですね。
大事にしているのは、ユーザーファーストであることが、収益につながる構造でなければいけないということです。『KAREN』でいえば、コーディネートと3Dイメージの質を上げることで、家具を買ってもらえる。プロが選ぶことで、誰もが知っているブランドではなく、自分では知らなかったようなブランドに出会えるというメリットもあります。
そのために、まず使ってもらうことも重要です。だから、無料体験できるLINEアカウントを作りました。LINEでは3Dイメージや具体的な商品提案はない代わり、『KAREN』で実際にコーディネートをしているプロに無料で相談することができます。『KAREN』のイメージをここで掴んでもらい、次に引っ越すときに使ってもらえるような潜在ユーザーをストックする狙いがありますね。
ー インテリアの買い替えの機会はそんなに多くなさそうです。
よく言われるのですが、誰もがワンルームに住んでいるわけではないので、一部屋使ってよければ、また他の部屋のコーディネートを依頼してくれるんです。
すでにリリース後の1カ月で注文件数が数十倍になりました。ありがたいことに、利用してくれた人が自分の3DデータをSNSで拡散してくれたりもして。ただ、利用者が増えると、対応できる人員に限界がある。今後は蓄積されたデータを使って自動化・効率化を図りつつ、実際の人員の強化もしていきたいです。
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