2019.06.17
奇抜なだけのアイデアはいらない。CRAZY WEDDING 山川咲の企画術

奇抜なだけのアイデアはいらない。CRAZY WEDDING 山川咲の企画術

いい企画って何だろう? こんな疑問に、世界でたった一つのオリジナルウェディングを仕掛けてきた山川咲さん(CRAZY WEDDING)と考えました。そこには、依頼主さえも気づいていなかった「思い」をカタチにするプロセスが!

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「アイデア」に溺れてはいけない

とてもユニークなオリジナルウェディングを仕掛けてきた山川さん。彼女がつくる結婚式は一見、奇抜でクレイジーと評される。ただ、彼女が大切にしてきたのは「依頼主にとことんよりそう」というスタンスだった。

やっぱり結婚式も「企画」そのものなんだと思うんです。ただ、「やってること」のおもしろさは、そこまで重要ではなくて。

たとえば、私たちがプロデュースする結婚式って確かに"普通じゃない”ことが多いです。

「ビーチでゲストと一緒に大縄跳び」とか
「海沿いの廃工場を披露宴会場に」とか
「高砂に大きな鳥居と美しい紅葉を」とか…

+++「縁日」がコンセプトの結婚式(参照:https://www.crazywedding.jp/case/501

ユニークだよねとか、新しいねって言われるけど、こういった企画の本当の魅力は「その二人だからこそできる」というところ。

それは「必然性があるかどうか」と言い替えてもいいと思います。ただ単に「雰囲気がオシャレだから」とか「そのキャラクターの世界観が好きだから」と表面だけをなぞった理由でつくってもオリジナルにはなりません。

CMや広告に置き換えても同じだと思うんです。

その人だから、その商品だからこそ言えることを言っている?と。

パロディだったり、モチーフだったり、よくあるのが、アイデアだけが先行しちゃっていることですよね。「企画がひとり歩きしている」感じ。そうなっている時って、本当に感動を届けられる企画にはならないと思います。

+++

【プロフィール】山川 咲(やまかわ さき)
大学卒業後、人材教育系コンサルティング企業に5年間従事。人事責任者として数々のプロジェクトやイベントの立ち上げを経験する。自身の結婚式で感じたウェディング業界の「クレイジーさ」を火種に、28歳で完全オーダーメイドのCRAZY WEDDINGを創業。2016年には念願の「情熱大陸」に出演。その後産休・育休を経て、現在はブランドマネージャーとして活躍している。

コンセプトづくりは、いつも“深い対話”から

そして話してくれたのが、企画におとしこむ前段階について。山川さんのコンセプトづくりは、いつも深い対話からはじまる。

たぶん企画っていきなり生まれるものではなくて。私たちが大切にしている方法として、まずはコンセプトをつくること。そのためのキーフレーズを置くところからはじめています。

たとえば、「夜明け」というコンセプトの結婚式を企画させていただいたことがありました。じつは依頼主である新郎新婦の「好み」や「イメージ」はそんなに反映されていない(笑)それでもすごく感動的なウェディングになったんですよね。

どのようにコンセプトに落とし込んでいったか。やっていることはシンプルで、とにかく対話を重ね、お二人の“真ん中”に何があるのか、突き詰めていきました。

なんて言ったらいいんだろう、「二人が結婚する意味」みたいなものを探るというか。

対話を繰り返していくなかで、少しずつコンセプトの輪郭みたいなものが見えてきた。はじめはなかなか心をひらいていただけなかったのですが、同じ時間を共有していくなかで、幼い頃のツラい思い出なども語っていただくことができました。「ずっと孤独を感じていた」と打ち明けてもらうことができて。

新婦もまた似た経験があり、過去の体験から「いろんなものが信じれない」といった悩みを抱えていらっしゃったんですね。

私はそういった気持ちについて、ただただ耳を傾けていきました。するとお二人の口から自然と「一緒にいると、少し世界が明るくなるんです」といただけた。

その瞬間、「ああ。そうか。お二人にとって結婚は孤独で盲目的な夜が明け、少しずつあたりが明るくなっていくためのものなんだ」とそんな意味にたどり着いたんです。

そういった意味でいっても、太いコンセプトにはやはり必然性がある。意味や目的がはっきりとしたときに立ち現れるものなのかもしれません。

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いつだって「課題」は見えづらいところに

もうひとつ、彼女が「企画」と向き合うときに大切にしていのが、課題を根本から見直すということ。

たとえば、「もっとみんなが結婚式をしたくなる企画を考えてみましょう」というお題を出すと、「結婚式をもっと安く、手軽なものに」といった案を考える方が多いんですよね。

そうなってしまう理由は「結婚式は高額で、手間のかかるもの」だと、課題設定してしまっているから。アタマのどこかで「結婚式を挙げない多くの理由は、費用と手間の問題である」と限定してしまっている。

確かに費用が高すぎるのは、結婚式を踏みとどまらせる要因だと思います。でも、本当の課題はそこなのかな?と疑ってみてもいい。

私たちはむしろ「そもそも結婚式の価値が理解されていないこと」のほうが解決しなきゃいけないことかなって思うんです。

つまり価値のあるものだと思われていないから「そこに300万円も400万円も使うなら別のことに使いたい」と感じる人がいる、と。その企画によって何を解決するか。一歩踏み込んで考えてみると、アウトプットもまた全然違うものになるかもしれません。

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今はまだカタチになっていない「声」にヒントがある

依頼主と向き合う、課題を根本から見直す…山川さんなりの企画に対する考え方が伺えた。そこに貫かれているのは「人々の本音」と向き合うスタンスだ。

私たち、CRAZY WEDDINGがやるべきことは、世の中をあっと驚かせる企画を仕掛けることじゃないんですよね。

今思っているのは、みんなが本音を言える場所、ありのままでいられる場所をつくり続けることなんじゃないかなって。それがいつか大きな声になり、次の「当たり前」になっていったら最高だよねという話をしているんです。

こう思ったきっかけのひとつに、昨年行なったTwitterでのプロモーションがありました。「#結婚式に自由を」のハッシュタグをつけて結婚式への本音をつぶやいてもらったんです。

スタートしたのは11月22日で「いい夫婦の日」でした(笑)「今の結婚式は不自由だ」ということの裏返しでもある。少し挑発的なメッセージでもあったので、はじめは不安もありました。ただ、フタを開けてみると、私たちもびっくりするくらいの広まり方をして。

「ご祝儀が3万円って誰が決めたの?」
「なんで引き出物はバウムクーヘンなの?」
「ほぼ喋ったこともない上司を招待するのは嫌だ」

こんな風に「本当はこう思ってた」の声がどんどん投稿されていきました。私たちの中にも「みんな言いたくても言えないのでは?」という仮説があり、それを確かめることができました。

そういった意味でいうと、今はまだカタチになっていない「声」にこそ、新しいモノのヒントがあるのだと思います。

そして最後に語られたのが、常に「新しいものをつくり続ける」そのための考え方だ。

私たちは、ずっとオリジナルウェディングにこだわってきました。だからこそ、ずっとアイデアを更新し続けないといけない。

2019年2月には初めてのリアルスペース『IWAI OMOTESANDO』をオープンしたのですが、そこは「会場があって、装飾がなくて、コンセプトのない結婚式」をテーマにしています。

じつは「会場がない」「装飾がある」「コンセプトがある」というCRAZY WEDDINGが大切にしてきた3大アイデンティティをすべて否定したものなんです。そういった意味でいえば、私にとって企画は「壊し続けるもの」なのかもしれませんね。

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※本記事は、大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDOにて開催されている連続講座、「企画でメシを食っていく」(通称・企画メシ)の講義内容をキャリアハックにて再編集したものです。
*「企画メシ」の記事一覧はこちら

撮影:加藤潤


文 = 長谷川純菜
編集 = 白石勝也


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