2019.06.20
完全食スタートアップ『BASE FOOD』の戦い方|米国でもヒットの兆し!

完全食スタートアップ『BASE FOOD』の戦い方|米国でもヒットの兆し!

完全栄養食『BASE FOOD』は、1食で「1日に必要な3分の1の栄養素」をとることができる、というスグレモノ。アメリカでも大ヒットの兆しを見せる。たった1人でスタートしたスタートアップ。安全で、しかもおいしい。そして安定したデリバリーをどう実現していったのか?

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1食で1日に必要な3分の1の栄養素をとることができる、完全栄養の主食。クラウドファンディングでたちまち話題に。『BASE PASTA』は販売開始4日で3000食が完売し在庫切れに。Amazonの食品カテゴリーでもNo1へ。また『BASE BREAD』『BASE NOODLE』など、商品ラインナップも豊富。Burger Maniaやラーメン凪とのコラボレーションでも話題となった。

スーパーで買ってきた食材で試作。遊び半分で始めた『BASE FOOD』

もともとDeNAで新規事業開発を担当していた橋本舜さん。「だれでも簡単に栄養をとれる主食をつくりたい」という思いから、本業と並行して『BASE PASTA』の開発に着手した。知り合いの栄養士や栄養学の教授からアドバイスをもらいながら、試作品をつくっていった。

はじめは好奇心で週末につくりはじめたんですよ。麺とかパンって粉から出来てるなら、栄養価の高い食材を混ぜ込めるじゃんって。

健康志向の料理本に「ビタミンCが豊富な食材ベスト10」みたいなランキングが出てたりするじゃないですか。

いろんな栄養素からそれぞれランキング1位の食材ばかりをピックして、全部、麺に練り込んでみたんです。

そしたら、最初にできたものが、めちゃくちゃ不味くて(笑)。見た目は黒くて、茹でると溶けてペースト状になってしまいました。

まるで麺職人だった

食べ物はおいしさが命ですので、そこからは「味」との格闘。栄養素が高く、かつ味のバランスが良いものに…いろんな組み合わせを変えながら調整していきました。

具体的には、近所のスーパーでどんな自然の乾燥食品があるか端から端までメモをとって、Excelでリストをつくる。そのリストをもとに必要な食材をAmazonで仕入れてひたすら試作品づくりです。その頃には、行ったことないスーパーで食材を開拓するのが趣味になってました(笑)

だんだん、一緒に住んでいたシェアハウスの友だちから「美味いじゃん」って言ってもらえるようになって。「え、この味でもいいの?これはいけるかもしれない」と『BASE PASTA』を正式に商品化する決断ができました。

まるで麺職人みたいに100回以上は試作品づくりをやったと思います。

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売れすぎてピンチに!?

商品をリリース後、4日で3000食を完売し在庫切れになるなど、想像以上の反響だった『BASE PASTA』。一方、世間から注目を集めたことで、橋本さんたちは安全かつ安定したデリバリー体制を構築する必要に迫られた。しかし、当時は社員2名。このピンチをどう乗り越えたのか。

はじめは2人でなんとかがんばっていました(笑)ただ、さすがに苦しくなって、最初に着手したのがCxOクラスの採用です。

まずマーケティング・ファイナンス・食品開発デザインができるCxOクラスを揃え、販売開始3ヶ月後には2名から6名と体制を整えました。

今も社員は少人数ですが、各社員を通して、多くの方に協力して頂いています。例えば、食品開発チームの麺担当者は数十社の原材料メーカーや複数の製麺所に加え、食品の分析機関等ともやり取りしている。リードしている人数は100人に迫ると思います。

次に考えていかないといけなかったのが、衛生対策です。

食品会社は安全安心のものを作ることが何よりの責務です。僕らは麺の製造を製麺所に委託していますが、任せきりにするのではなく、一緒に完全栄養の麺の衛生対策を組み上げてきました。

お金をかけずにPRし、たくさん売って値段を下げる。

もうひとつ、大きな課題として価格面があったと振り返る。価格を抑えるために、どんな施策を実行したのだろうか。

もともと1食540円だったんですよね。それが今では定期購買で1食350円にできたのですが、高いままだったら一部の人にしかウケなかったと思います。

やっぱり商品の値段を抑えるにはたくさん売らないといけない。そのためには、認知を拡大させる必要があると考えました。

ただ、広告宣伝費はそこまでかけられなかったので、なるべくメディアに取り上げてもらえるようにプレスリリースなどPRに力を入れいった。

おかげでたくさんのメディアに取材していただき、『BASE PASTA』の価格を1食350円まで抑えることに成功しました。

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シェフのみなさんから「声」をもらう

さらに『BASE FOOD』の継続率をアップさせるために取り組んだのが、「味」の改良だ。橋本さんはシェフや一般のお客様のヒアリングを繰り返した。

まず料理のプロであるシェフの方にご意見をいただこうと考えました。やり方はかなりアナログですが直接取引先のお店に出向いてヒアリングをして。

まずは試食してもらって、『BASE PASTA』を使った料理をお客さんにも提供してもらい、間近で見たお客様の反応をフィードバックしてもらいました。

「これくらいの年齢の方にはこんな反応だった」
「こんな料理を出したらこんな反応だった」
「もっとツルッとさせたほうがいいね」
「もっと歯切れをよくしたほうがいいかも」
「麺の苦味はプラスになることもあるから、隠さないほうがいいよ」
「逆に、この味は隠したほうがいいかもね」

こんな風にすごく細かいところまで「声」を反映させていった。シェフのみなさんにご協力いただけなければ、完全食なのにおいしいといった評判は得られなかったと思います。

3ヶ月に1回はアップデート

さらには一般顧客の「声」も大切にしていったという。

一般のお客様の場合、調査方法はさまざまでした。例えば、電話インタビューの場合は、『BASE FOOD』を好きな理由、嫌いな理由をじっくりヒアリングしていって。

Webでユーザーヒアリングも行なっていき、Slackにお客様の「購入理由」や「解約理由」が流れるようにしておく。みんながそれをいつでも見れるようにしておきました。そうすることで、あらゆる職種の人が「お客様」の声に触れられ、改良のアイデアがでるようになっていたと思います。

こうした調査の結果を踏まえながら、『BASE PASTA』はこれまで4回大きなリニューアルをしてきました。細かい改善を入れれば数え切れませんが、3〜6ヶ月に1回はアップデートしていることになります。

米国では時価総額1兆円のフードスタートアップも登場

最後に橋本さんは今後の展望について語ってくれた。日本ではフードテック領域のリーディングカンパニーを目指し、視野に入れるのはアメリカ進出だ。

やっぱり海外進出を成功させたいですね。現にいまアメリカにもオフィスを構えていますし、僕自身もアメリカに定期的に足を運んでいる。「美味しさ」や「健康」は日本の強みなので、アメリカでも受け入れてもらえる。そんな再現性のある事例をつくれたら、と思います。

実はいま、アメリカではフードテックがすごく盛り上がっていて。日本ではあまり知られていませんが、アメリカの植物肉メーカーであるビヨンド・ミートって時価総額1兆円超えてるですよ。

いまCNNやブルームバーグを見ると金融系の話題は大体ビヨンド・ミートで持ちきり。そんなビヨンド・ミートクラスのフードテック企業がアメリカでは続々と立ち上がっているんです。

それに対して僕らはまだ4億円しか調達できていない。ただ、『BASE BREAD』はグローバルで見てもビヨンド・ミート並みに高い評価を得ています。プロダクトとしての品質は世界でもトップクラスなので、もし僕らがアメリカで創業していたらとんでもない時価総額になっているはず。日本のシリースAレベルにとどまらず、もっとステージを上げていきたいと思います。

その上で、最終的には健康を当たり前の世界にしたい。ちょっと前までインターネットがない時代でしたけど、いまでは当たり前ですよね。それと同じように10年後には、「え、健康っていちいち考えなきゃいけないの?」という社会にできたら、と思います。

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橋本 舜|ベースフード株式会社 代表取締役
1988年生。東京大学教養学部卒。株式会社DeNAに新卒入社。月商10億円規模のソーシャルゲームのプロデューサーを経て、新規事業部署に移り、駐車場シェアリングサービスのakippaの立ち上げ支援、及び、自動運転タクシー・バスの開発を行うロボットタクシーの立ち上げに従事。2016年6月に退職し、ベースフード株式会社を創業。「主食をイノベーションして健康を当たり前にする」をビジョンとし、世界初の完全栄養の主食”BASE PASTA”を開発。販売開始後、日本のAmazonで食品人気度ランキング1位を獲得。国内での普及や海外展開の準備を進めている。


文 = 田尻亨太
編集 = 大塚康平


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