ビジネス的な評価も高い“ソーシャル旅行サービス”《trippiece》。代表の石田言行さんに、「ソーシャル系サービスのこれから」を訊くインタビュー第2弾。ソーシャルグラフをどう捉えるかによって、サービスの在り方や提供できる価値は大きく変わる。
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ソーシャル系サービスがビジネス的成功を収めるための3原則―《trippiece》の視点[前編] から読む
― ソーシャル系サービスが隆盛な昨今ですが、儲けるという点については、なかなか上手くいっているところが少ないんじゃないかと思うんですね。既存の枠組みの中で上手に稼いでいる人からすると、「アイデアは面白いけど、儲けるのはヘタだよね」みたいな見られ方をされるというか。
うーん。どうなんでしょうね。僕らのようなスタートアップにとって、お金を儲けるというのはそんなに重要じゃないと思うんです。
もちろん、ビジネスをドライブさせていくためには資金は必要ですし、事業に対する評価を得るための、分かりやすい指標ではあると思います。
ですが、なぜ僕たちが新しいサービスを立ち上げ、試行錯誤しながら大きくしていこうとしているのかといえば、それは世の中を変えるためです。大げさに聞こえるかもしれませんが、少なくとも僕はそう思っています。
『trippiece』というサービスがこの世になければ、得られなかった体験や出逢いというものがあるんじゃないか。そういった体験や出逢いを、多くの人に得てもらいたい。そういう想いでやっているんですね。
ゼロからイチを生み出すことが僕は好きで、そのほうがずっとクールだし、価値があると思うんです。お金儲けがしたいという価値観を否定するつもりはありませんが、儲けることがビジネスの全てじゃないよね、というのは思いますね。
…なんて、将来trippieceが上場したら言えなくなるかもしれないですけど(笑)
まあでも、ソーシャル系サービスを手がけているスタートアップの中には、「やろうと思えばすぐにマネタイズできるけど、あえてやっていない」というところもたくさんあると思いますよ。
― 『trippiece』のサイト自体も、いわゆるおカネの匂いが感じられません。
商業っぽさは徹底的に出さないように気をつけています。ユーザーに旅の企画を立ててもらう際にも、あえて最初は予算を入れられないような仕様にしているんです。まずはどんな旅がしたいのか、という部分が大事なので。
とりあえずは現実の細かいことを気にせず、皆で自由に夢を膨らませる、というところから『trippiece』の旅は始まっているんです。
― あくまでも、“trippieceだからこそ提供できる価値”に重きを置いている、ということですね。
そうです。僕自身がその価値の重要さを教えてもらった出来事がありまして。ウチはユーザーさんとの距離が近くて、よくユーザーインタビューをさせてもらうんですが、あるユーザーが話してくれたんです。
彼はマチュピチュとウユニ塩湖に行く企画に参加したんですが、その後でナスカの地上絵を見に行くオプションも組んでいたんです。
で、朝5時にナスカに向けて出発する、という日の前夜。この旅で知り合った仲間と夜中までお酒を飲んで騒いでいて、結局寝たのが3時頃だったそうなんですね。なんとか5時に起きれたんですが、目が覚めたときに「あいつらと飲んで騒いだの、楽しかったな。もしナスカに行けなくても、それでいいや」 と思ったそうなんです。
彼はそのとき、そんなふうに思える仲間を作れたtrippieceってスゲー…と感じたと。
それを聞いて僕自身も感激したというか、改めてこのサービスが提供できる価値の重要性を認識したんですよね。
― そのエピソードはスゴイ。感動的ですね。
― ここまで、主に『trippiece』について伺ってきましたが、今度は少し大きめなお話を聞かせてください。ソーシャル系サービスは、今後ビジネスとしてどのような展開可能性があるとお考えでしょうか?
ソーシャル系サービスの定義にもよると思うのですが、シンプルに言えば、ソーシャルとは“個が繋がる”ということだと思います。
で、基本的には、やはりオフラインのほうがお金が動きやすいと思うので、ビジネスとして考えるならば、“個の繋がり”によって人が動き、お金が動く、ということなんじゃないでしょうか。
僕たちのサービスも、旅行あるいは旅行代理店に人を送り出すことによって収益を得ていますし、それがグルメ系サービスの場合は飲食店へ、リクルーティング系であれば企業へ、というように、人を運ぶ、というのが一つのカギになるかなと。
オフラインだけで完結するビジネスモデルもありますが、まだまだ限定的かなと思います。マネタイズポイントとしては広告収入ぐらいでしょうか。ソーシャルゲームなどではコンテンツへの課金による収益もありますが、そもそも、ここで話をしている文脈としてのソーシャル系サービスなのかというと、少し別モノかなと。
コミッションモデルというのも、まだそんなに収益化できている例はないですよね。もちろん、提供している価値を人々のプラットフォームにまで一般化することができれば、サービス自体にお金を払ってもらうことも可能だと思いますが、『trippiece』はまだまだそこまで達していないですから。
― “使われるサービス”と、“収益力のあるサービス”というのは違う、ということですよね。
そういうことですね。ビジネススケールとしては、100億円規模ぐらいまでは、あらゆるソーシャル系サービスに可能性があると思います。ただ、1000億円を超えてくるとなると、簡単ではないだろうなと。既存ビジネスをリプレースしたサービスの場合、そもそものマーケット規模によって規定される部分も大きいですし。
旅行業については、市場規模的には充分可能性があると思っています。あとは僕たち自身の頑張り次第で(笑)『trippiece』が提供する価値を一般化して、プラットフォームになるまでにしないとな、と思っています。
そうすることで、“個の繋がり”がどんどん増えていって、旅を通じて得られる素晴らしい“体験”や“出逢い”もまた増えていく。そのときに、世の中が少し変わっているんじゃないかなと思います。
― 石田さんのお話しを聞いていて思ったのは、『trippiece』というのは“ソーシャルグラフをいかに使ってビジネスに繋げるか”というものではなくて、“ソーシャルグラフそのものを増やし、大きくなっていくサービス”なのかなと。
ああ、そうかもしれませんね。更に言うなら、オンラインの関係を増やすだけじゃなくて、それをオフラインでの関係性に繋げていくというところまで含めてのサービスかなと。
SNS上の関係というのも、今のところその多くは日常の社会生活の延長でしかないですよね。会社の上司・同僚とか、友人・知人とか。だからこそ、SNS上でも疲れてしまっている人も出てきてると思うんで。
そんなときは、ぜひ『trippiece』を使って、新鮮な出逢いと体験をしてみてはいかがでしょうか(笑)
僕も最近、友人・知人がいない旅に参加するほうが面白くなっちゃってまして。一度体験すると、病みつきになると思いますよ。…って、なんだか宣伝みたいになってますね、すみません(笑)
― ソーシャル系サービスを考える上での貴重なお話しを聞かせていただきましたから、大丈夫です!私もなんだか、旅に出たくなりました(笑)
(おわり)
編集 = CAREER HACK
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