創業68年の今治タオルメーカー「IKEUCHI ORGANIC」。広報として活躍するのが牟田口武志(むたぐちたけし)さんだ。もともとAmazon、CCCでデータを駆使するマーケターとして働いてきた。なぜ、IKEUCHI ORGANICに? そこにはデータの向こう側、「人の感情」を大切にしていきたいマーケティング志向があったーー。
ーAmazon、CCCにてマーケターとして働いてきたと伺いました。なぜ、今治タオルのIKEUCHI ORGANICに?
一番は、自分が信じられるもの、心から愛せるもの、得意なことに特化してやっていきたい。こういった思いがあったんですよね。
今はもう60歳=定年ではないですし、身体が元気なうちはずっと働き続けていきたい。そうなった時、なにが大切になるのかな、と考えるようになりました。前職では3年くらい働いたタイミングで、働き方も含めて将来のことを考えはじめていた。
そのときにふと思い出したのが、IKEUCHI ORGANICのことだったんです。ぼくの中にあったイメージは「環境、安全性にこだわり、長年ものづくりをやってきたメーカー」といいうもの。
じつはIKEUCHI ORGANICには、2003年に民事再生を申請した歴史があるんですよね。SNSもない時代、当時のファンの方たちが「がんばれ池内タオル(旧社名)」という応援サイトを作ったそうなんです。「勝手に応援サイトが立ち上げるなんて、愛されてるブランドなんだ」と知りました。
また、2013年の60周年。ナガオカケンメイさんにお願いし、会社のロゴやブランディングもしていた。翌年には「池内タオル」から、IKEUCHI ORGANICに名称を変更してて。
すばらしい商品と考え方がある。変革期を迎えている。何よりもファンに愛されている。もしWEBを専門でやってきた自分が入社したら、会社を、そして社会をよい方向に動かす、何かきっかけづくりができるんじゃないかと思いました。ホームぺージの問い合わせからメールを送って、2015年に入社することになりました。
ー入社したころの状況でいうと?
まずオーナーの池内は当時66歳。「ものづくりを引き継ぐ、事業継承しなければ」という課題感が全体にありました。
話をしていくうちに、本人も「社員1人1人がもっと出て行って、みんながIKEUCHI ORGANICにしていきたい」と意向がかたまっていきました。じゃあどうしよう、広報とブランディングのやり方を考えよう、となっていったんです。
その中で、僕が進めた1つが、社員の声を集めたインタビューサイトでした。
ー「社員にメディアに出てもらう」ということは、スムーズに理解してもらえたのでしょうか?
明確に反対はされなかったですけど、出てもらう社員さんからは「なんで出るの?」という質問も。
やったことは本当に地道で。経営陣にも職人さんにも「社内のインタビューサイト」をなぜやるのかを伝えていきました。
そのあとは力技ですね(笑)僕と、もう1名のメンバーで、全社員に1人30分ずつくらい取材して記事にする。文字起こしも自分たちでやったし、確認と校正もしました。その結果、社員一人ひとりがどんな考えで仕事をしているのかがとてもわかりやすくなったと思います。
ーお話を伺っていると、牟田口さんご自身、IKEUCHI ORGANICのことが好きなんだとすごく感じました。すごく楽しそうに仕事されているというか。
それはホントにそうですね(笑)先日も、休日だったのですが、IKEUCHI ORGANICのタオルを入れてくれたレストランに足を運んだりして。タオルを使ってくれている美容院、銭湯には、普通にお客さんとしても通ったり。必ず様子を見に行くんですよね。「ちゃんとタオルが育っているかな」って(笑)
まだ面識のないお店などで「じつはIKEUCHI ORGANICの者で」と、すごくびっくりされますね。でも、皆さんすごく喜んでくれるんです。人の顔が見えると、それは単純なビジネスではなくなる気がして。仕事であり、プライベート。明確にそこの分断はできないし、しない。だからこそ、楽しそうに見えるのかもしれませんね。
>>>前編 創業68年、老舗タオルメーカーのSNS戦略|IKEUCHI ORGANIC
編集 = 白石勝也
写真 = 黒川安莉
取材 / 文 = 平野潤
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