ツクルバが運営するシェアードワークプレイス《co-ba》。代表の村上氏によれば、いまco-baでは利用者同士の協業から、新たな事業・サービスが生まれてきているという。先日、増資も決定した注目のWEBサービス『CoffeeMeeting』もその一つだ。 果たして、co-baでいま何が起きているのか?
▼シェアードワークプレイス《co-ba》の取材レポート第1弾
シェアードワークプレイス《co-ba》に学ぶ、“コミュニティデザイン”の心得。 から読む
東京・渋谷にある、シェアードワークプレイス《co-ba》。ここ最近、各所にコワーキングスペースが増えつつある中でも、そのコンセプチュアルな空間づくりで、特に注目を集めている場所だ。
運営を手がける株式会社ツクルバ CEOの村上浩輝さん曰く、co-baを利用する起業家やエンジニア、クリエイターが、その場所での出会いをきっかけにプロジェクトを立ち上げ、会社やWEBサービスを生み出す流れが定着しつつあるという。
累計100万DLのスマートフォンアプリ「チロルチョコアプリ」や、ソーシャル映画レビュー&ランキングサイト「CineMatch」も、“co-ba発”のサービスなのだそうだ。
CAREER HACKの取材中にも様々な方がco-baを訪れていたのだが、その中には株式会社レレレのファウンダー山本大策さんの姿も。今年2月に2000万円の資金調達を受けた注目のWEBサービス「CoffeeMeeting」も、実は山本さんがco-baでの出会いをきっかけに、作り上げたものなのだという。
co-baで起きているムーブメントを紐解くべく、山本さんとツクルバ代表 村上さんにお話を伺った。
― 山本さんは、以前はリクルートにいらっしゃったそうですね。在職しながら、オフの時間でco-baを利用し、CoffeeMeetingを開発されたと。
山本:
そうですね。そもそもCoffeeMeetingというサービス自体、いままで面識のない人同士が、お互いの時間を共有するというコンセプトです。だったら、自宅にこもって一人で開発するより、いろんな人が集まる場所で作ったほうがいいだろうと。co-baに入居されている方にユーザーテストを行なって、そのフィードバックを反映させていったほうが、より良いサービスになると思いました。
村上:
山本さんは、サービスのプロモーションにも、co-baの環境をフル活用していましたよね。co-baに集まる人って、ソーシャルメディア上でも影響力のある方が多いんです。そういった方々に、サービスを率先して使ってもらうようにする。そうすることで、彼らのアクティビティがSNSのタイムラインに流れ、自然と拡散していきます。言ってみれば、CoffeeMeetingの“エバンジェリスト”になってもらったわけです。
山本:
今やアマゾンウェブサービスのようなクラウドサービスが充実しているので、開発のためのインフラ整備に悩む必要はほとんどありません。ですが、開発したサービスを広めるフェーズになると、課題は山積みです。本格的にプロモーションをうつとなれば結構な費用がかかりますし、ノウハウもありません。
そういう意味でも、co-baで出会った人たちの存在はとても大きかったと思っています。co-baなしではこのサービスは生まれてすらいないでしょうし、これほどユーザーに使ってもらえるサービスには育たなかったと思いますね。
― それを会社に在籍しながら行なうことができた、という点も大きいですよね。個人でサービスを開発する、起業への足がかりをつくるということも、コワーキングスペースでなら可能だと。
山本:
そうですね。今、所属している会社を辞めてサービスを開発し、起業するというのはリスクが大きくて、なかなか出来ないことだと思います。でも、自分のように、業務時間外でプライベートプロジェクトとしてサービスを開発していくやり方であれば、あまりリスクを取る必要がありません。
ただ、それを一人でやるとなると、どうしても視界が狭くなりがちです。ですが、co-baのような空間で開発すれば、他のクリエイター・エンジニアとの接点が生まれ、先ほどお話したようなさまざまな恩恵を受けることができる。これは間違いなくプラスだと思います。
村上:
いま日本でも新しいWEBサービスが続々と生まれていますが、一方で、小さなWEB制作会社にいてその将来性に不安を感じていたり、あるいは独立せざるを得ない人、勢いで独立した人というのも少なくないと感じています。
一昔前だったら、フリーのデザイナーでも大手広告代理店の仕事だけで1000万円レベルの収入を得ていたという話を聞いたことがありますが、リーマンショック以降は一気に状況が変わり、非常に厳しくなっていると聞きますね。
そんな「とりあえず現状を変えなければいけない」という人たちに対して、新しい働き方がある、それを実現できるコミュニティがあるということを僕たちは示していきたいと考えています。
例えば、チロルチョコのアプリを開発した時のケースですが、もともとチロルチョコさんから“何かやれないか”という話をいただいていて、僕らのほうでco-ba利用者を中心にエンジニアやデザイナーを募って、開発しました。
制作費は一円も頂いていませんが、アプリ内広告からの収益をベースに、決して大きな金額ではないですが、上がった利益をみんなで分配しています。
― それは収入のモデルとして、とても面白いですね。人と人とのコラボレーションで価値を生み出すというのは、co-baのような場所ならではの動きだと感じます。
村上:
全く違う組織に属していて全く別の職種の人たちが、同じ場所にいるという状況。これを作り出すことが、何よりも重要だと思います。
Copresence(同じ場所に一緒にいる)
Communication(言葉を交わす)
Collaboration(一緒に何かをやる)
この一連の流れを生み出すことが、コミュニティデザインのキーポイントです。
― お話を伺っていると、co-baの取り組みはある意味、クリエイター・エンジニアの働き方にイノベーションを起こそうとしているようにも受け取れます。
村上:
昔からあった「モノを生み出せる人がビジネスの上流にいけない」という状況は、いまなお、なかなか解決されない問題として残っています。だったら、クリエイターやエンジニア自身が自分たちでビジネスを起こせるようになればいい。そうすれば、きっとモノを生み出せる人たちの価値も変わっていくと思うんです。
ただ、自分一人でビジネスをはじめるとなると難しい。そこで、co-baのような場所が役に立てればと考えています。クリエイター・エンジニアが同じ空間を共有し、そこで生まれるコミュニケーションをCoffeeMeetingの山本さんのようにビジネスに活かしてほしいです。
― co-ba発の企業やサービス、これからもどんどん生まれてきてほしいですね。今日は貴重なお話、ありがとうございました!
(おわり)
編集 = CAREER HACK
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