アバター、ゲーム、ライブ配信が一体化した新世代コミュニケーションアプリ「REALITY」。リリース3年で世界63か国に展開。海外で飛躍的にシェアを広げており、アクティブユーザーは1日に170分も滞在するという。そんなREALITYを牽引する「RIOさん」と「超簡単さん」が語った、メタバースとこれからのUI、UXにおいて必要なこととは?
※2022年1月19日に開催された【UI Crunch #16 メタバースのUI -仮想空間に接続するデザイン-】よりREALITY株式会社の「RIOさん」と「超簡単さん」によるピッチを書き起こし形式でお届けします。
RIO:
まずは私(@djrio_vr)から会社全体の紹介、取り組んでいる事業、UIについての考え方をお話しします。その後、UI、UXデザイナーの「超簡単」に引き継いで、よりデザインの具体的な部分についてお話しさせてください。
REALITYはGREEの100%子会社で、六本木にオフィスがあります。2つの事業を行なっていて、1つが『REALITY』というスマホアプリ事業です。もう1つが法人向け事業で、法人のメタバース参入、メタバースでバーチャルイベントを開催したい時のソリューションや支援などです。
今日は特に、この左側の『REALITY』について掘り下げてお話できればと思います。
まずREALITYですが、超ざっくり言うと、こういった事業をやってます。
『REALITY』はアバター、ゲーム、ライブ配信が一体化したスマホ向けのコミュニケーションサービスとして始まりました。これをグローバルに展開し、5G、XR時代に世界的なメタバースになることを目標に進んでいます。今、2ステップ目ぐらいまで来ています。
大きな特徴として、
・スマホ1台でアバターが作れる・ライブ配信、ゲーム実況を通じてコミュニケーションがとれる
かと思います。全てスマホ1台で完結できる「スマホ向けメタバース」です。どちらかに特化したり、カバーしているサービスはありますが、スマホで一気通貫、全てができるサービスはレアな存在だと思っています。
この会場にも『REALITY』のアバターを使ってくれている人が何名かいますね。このように作ったアバターを持ち出せる機能もあります。
RIO:
2018年頃から提供を開始し、3年半ぐらい経ったところ。コツコツと続けてきて、この1年くらいで大きな成長を遂げています。2021年の頭くらいからグローバル展開をスタートし、すでに世界中63カ国・地域で配信されています。アプリも12言語に対応し、8~9割は海外ユーザーとなっています。グローバルなコミュニケーションプラットフォームになっていることも大きな特徴です。
もう一つ大きな特色は、極めてエンゲージメントが高いアプリであること。アクティブユーザーにおける1日の滞在時間は170分もあります。見るだけではなく、自分も配信したり、誰かとコミュニケーションをアクティブに取ったり、そういった比率が高く、極めてアクティブなコミュニティになってきました。
ここから目指すのは「メタバースになっていく」こと。「2年ぐらいかけて『REALITY』がこうなっていくぞ」という動画を作ったので、ご覧ください。
ご覧いただいたように、現在『REALITY』は「スマホ向けアバターSNS」といった位置づけですが、より広い世界に広げていきたいです。いろいろな人とコミュニケーションをとったり、自己表現をしたり、完全没入型のゲームをしたり、そういった世界にしたいと考えています。
特に、REALITYが作ろうとしているメタバースは、3つのポイントを重点的に伸ばしたいと思っています。
1)リアルタイムアバターコミュニケーション
2)ユーザの手により創造・拡張される空間
3)クリエイターエコノミー
まずは、より多くの人がリアルタイムで身振り手振りを踏まえてコミュニケーションできるようにします。また、ユーザーの手でいろいろコンテンツを作り出せるようにする。そして、お金を得られるようにできればと考えています。
RIO:
ここからはメタバース領域のサービスにおいて、どうUI/UXについて考えているのか。あるいはその領域でUIデザインをやるおもしろさ、将来性について簡単にお話しします。
まずメタバースがおもしろいのは、「全部の要素が入っている」ところです。僕らが作っているのはスマホアプリですが、静的なアプリではありません。常にそのアプリの中でコミュニケーションやビデオチャット、ライブ配信、テキストチャットなどが行われており、非常にリアルタイム性の高いコミュニケーションプラットフォームです。
スマホアプリはApple、Googleなどのインターフェースガイドラインがあり、非常に論理的なデザイン思考が求められます。それに加え、メタバースは3Dでインタラクティブなゲームの要素も。アニメーションを含め、
・触っていて気持ち良い
・楽しい
・ワクワクする
といった要素も作っていくことになります。スマホだけでもそうなので、これからXRデバイスなどに対応していくと、3D空間における「一人称型のUXデザイン」が求められるでしょう。とにかく必要な要素が多いため、自分の幅を広げられるし、あらゆる領域で求められていくはずなので、おもしろいと思います。
僕はプロダクトをずっと作り続けてきましたが、プロダクトを作る人から見た『REALITY』のおもしろさをお話したいと思います。
まずは「スマホ発である」ということ。じつは、スマホから出てきているメタバースに関連したサービスは意外と少ないのが現状です。VR向け、PCゲームからスタートしているケースが多い。その点、スマホは地球上のほとんどの人が肌身離さず持っているデバイス。そこからスタートしており、仮想空間の中での行動もPCやゲーム前提とは全く違う行動が起きています。
たとえば、REALITYを開くと「料理をしながら配信をしている人」や、「お風呂の中から配信してる人」がけっこういて。スマホでアバター配信ができるため、カメラにも自分が映らず、どこにでも持っていける。このように生活に密着しているコミュニケーションサービスとなっています。
あとは「グローバルプロダクトである」ということ。日本発のアプリでありながら、現在、世界中で使われています。日本発のゲーム、アニメはいいコンテンツがいっぱいありますよね。ただ、コミュニケーションサービスや、プラットフォームにおいて、日本発の大きなサービスはほとんどありません。ここが非常におもしろくて。当然、向き合わなきゃいけない課題は多いですが、世界中で使われている、さらに使われていくだろうという楽しさがあります。
あとは「ユーザー規模が大きい」のも楽しいですし、正義だなと思っています。幸い、世界中でいろいろな人が使ってくれていることで、アバター人口が増え続けている。多くのユーザーに提供する難しさはありますが、ちょっと新しい機能を出したり、みんなが望んでいた改修したりすると、世界中から反応がもらえるのはおもしろいですね。
僕からは以上です。ここからはいったん「超簡単」にパスしようと思います。
超簡単:
では、RIOちゃんに続いて、私、超簡単(@choukantan)から話をさせてください。REALITYでプロダクトデザイナーをしています。Twitterでよかったらフォローしてください。
ここからは『REALITY』におけるUIの考え方、設計の難しさを話していこうと思います。
まずは『REALITY』におけるUIの考え方です。みなさん「3Dゲームとメタバースの違い」って考えたことありますか? 僕は「アバターへの自己投影感があるか」だと捉えています。ゲームでいうと、ロックマンがすごく好きなのですが、ロックマンを動かして何か行動しても、それはロックマンで遊んでいるだけですよね。仮にこの場で僕がロックマンの姿になって話をしても、それはただ「ロックマンを使って話をしているだけ」だと思います。
つまり、そこに自分自身の自己投影感がなければ、「単なるアバターを使ったサービスでしかない」と僕は思ってます。アバターに自身を投影できて初めてメタバースと言えると考えています。
超簡単:
では、「アバターへの自己投影感」をプロダクトにどうやって落とし込むか。みなさんが、リアルな肉体で自身を認知するとき、たとえば、鏡やガラスに映った自分を見て「あ、自分がいる」と認知すると思います。
このBefore Afterを見てみてください。
Beforeは『REALITY』の生配信を視聴する画面でコメントをしても、コメントが出るだけで「顔や名前」が表示されませんでした。一方でAfterでは、コメントや入室をする度に自分の顔、アバターが出るようになっています。これもひとつの自己投影です。
続いては、配信終了画面について。
ライブ配信終了後、自分のアバターを登場させるようにしました。このアバターを出す必要性でいえば、ほぼありません。ですが、さっき申し上げたように自己投影感を持ってもらうために出しています。
最後にプロフィール画面です。
Beforeは、初期のプロフィール画面ですが、サムネイルが乗っかっているだけで、すごく簡素な画面です。一方でAfterはドーンと自分のアバター、顔が映るUIを作っています。小さくて見にくいですが、画面右下タブのアイコンに、自分の顔が映ります。これによって「自分のアバターがここにいる」と思える仕組みをつくっています。
このようにところどころにアバターを表示させる工夫をし、アバターへの自己投影感を感じてもらう工夫をしています。
では、「自己投影感があるアバターがあればメタバースなのか」と疑問を持つ方もいると思うんですけれど、そうではありません。現実世界でも同じですが、自分がいるだけの世界、空間はあり得ないわけです。いろんな人と話したり、遊びに行ったり、ゲームをしたり、いろいろな人とコミュニケーションをとる、生活の場があります。同じようにメタバースにも「生活の場」が必要です。REALITYは、その生活の場としてワールドやコミュニケーション、アバター、ライブ配信を提供して、みなさんに、そのメタバース上で生活してもらおうと考えています。
なので、リアルだからとか、バーチャルだから、ということはなくて、リアルもバーチャルも同じだと考えています。
ちなみに最近「ビデオチャット機能」をリリースしました。コミュニケーションベースの機能です。画面を見るとこんな感じになってます。
ビデオ会議によくある機能ですが、アバターでも使えるようにしたもの。下にカメラボタンがあり、 それをタップすると自分のアバターが非表示になります。
「ちょっと待て。アバターなのに、なぜカメラをオフにする必要があるんだ」と思う方もいますが、たとえ、アバターであっても現実世界と同じように見られたくない姿がある。「現実だから」とか「リアルだから」などと分けずに、リアルもバーチャルも同じようにUIを考えています。
まとめるとアバターへの自己投影感を大切にしつつ、リアルとバーチャルはあえて分けない生活の場をつくることが大切だと思ってます。
最後に技術的なところに軽く触れると『REALITY』はUnityとネイティブアプリをがっちゃんこさせたアプリなので、それを考えながら設計するのがけっこう難しかったです。このあたりを楽しめる方には向いていると思います。
超簡単:
最後に、グローバル展開に向けて、こういったところを頑張っています。
・12言語に対応したローカライゼーション
・海外ユーザーの定着率をあげる
・既存 UI のブラッシュアップ
・デザインチームの立ち上げ
僕は今まで1人でやってた時期が長かったので、既存のUIのブラッシュアップが出来ていません。前期になってようやく1名入ってきて、もうすぐ1名入る予定です。このように人数が増えてくると、どういった考えをもとにチームとしてやっていくのか、決めていかなければいけません。とはいえ、全くデザイナーが足りませんので、絶賛デザイナー募集中です。TwitterにMeetyのリンクを貼っておきますので、ぜひご興味のある方はご覧ください。
RIO:
最後にメタバースの潮流ですが、PC向けのインターネットが出てきた時や、スマホが出てきた時に次ぐような「大きな変革点」だと思います。端的に言えば、これまでほとんどのウェブ、インターネットの体験は、テキストや写真中心で二次元の世界でした。これからは三次元の世界にどんどんユーザー体験、サービス内容が移っていくと思っています。
技術的にも、デザイン的にも大変革の中で、新しい波に飛び乗っていくのは、すごくおもしろいです。3年ぐらいこの事業をやっていますが、ちょっと前だったらSFとしか思えないようなことを本当にいっぱい目にしました。どんどん世の中が動いていっていると感じています。
REALITYとしては「なりたい自分で、生きていく」をビジョンとしていますが、こういうことに興味がある人がいたらメタバースに関わる仕事はおもしろいと思います。
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