スマホ、PC、VR…全てで遊べる「cluster」。より身近なメタバースプラットフォームを掲げ、ユーザー数を増やす。B向けにもバーチャルイベントを支援するなど、メタバース業界を牽引する。そのUIの変遷と未来とは。ハンドコントローラーは無くなり、新しいスタンダードが生まれていく…?
※2022年1月19日に開催された【UI Crunch #16 メタバースのUI -仮想空間に接続するデザイン-】よりクラスター社の加藤直人さん、吉岡航さんによるセッションを書き起こし形式でお届けします。
加藤:
まず「cluster」についてご紹介したいと思います。最近でいうと、こういったTwitterで広告動画を流しているので、見たことある人も多いかなと思います。
簡単にいえば、アバターを使ってバーチャル空間で遊べるサービスです。
よく「VRデバイスじゃないとできないんでしょ?」と思われますが、スマホでもできるので安心してください。多くがスマホでやってくれていたりもします。「つまり「VRでも、スマホでも、どこでも遊べる」ことを特徴とした、メタバースプラットフォームとなっています。
さらに機能としては、
・あつまる
・つくる
・あそぶ
この3つが主なものとなっています。
加藤:
大枠を知っていただいた上で、よく「cluster社ってお金のほうは大丈夫なんですか?」と心配されることもあって。そのあたりは、収益をあげていく上でも、法人向けにエンタープライズ事業などもやっています。
さまざまな企業、団体から「バーチャル上で何かしたい」とご相談いただくことが増えてきました。イベントをまるっとやることもありますし、「メタバースに参入したい」とスケールの大きい相談をいただくこともあって。それらをサポートしています。
これまで、いろいろな法人イベントをやってきて、よくテレビなどで紹介してもらえたのが、「バーチャル渋谷」だと思います。渋谷区公認でハロウィンなどのイベントをやらせていただきました。その他にも、環境省さんをはじめ、官公庁関連の案件をやらせていただくことも多いです。最近だと「バーチャル大阪」もつくらせていただきました。おそらく開催したイベント数、動員数でいえば、世界的に見ても多いほうで、それだけさまざまな法人イベントをやっています。
加藤:
ここからは、C向けのプラットフォーム事業についてお話していきます。もともと「cluster」はイベントのための機能を発展させてきたのですが、それらをクリエーターキットとして広く提供するようになりました。遊べたり住んだり、ゲームを作ったりできるようになりました。
こちらですが、アバター自体も、バーチャル空間自体もユーザーさん自身で作ることができます。ユーザーさんによって、そのクリエイティビティが爆発しているものも。たとえば、重力がバグった空間が出てきたり、メタバース感があって僕は好きです。
そういった夢の空間、本当に「レディ・プレイヤー1」で描かれているような世界をクリエイター自身が作れます。その中で好きな姿になり、遊べる空間が「cluster」です。
加藤:
ここからはUIの話なのですが、吉岡さんにバトンタッチしたいと思います。他己紹介すると、吉岡さんは「cluster」社の1号社員です。
会社を作る前、僕が「一緒にソード・アート・オンラインを現実に作りませんか?」と声をかけました。「これから資金調達をするので来てくれませんか?」と聞いたら、会社を辞め、東京に来てくれました。今では「cluster」の全てを知っている方です。
当時からUIに関していろいろ試行錯誤してきたので、本当におもしろい話をしてくれるかなと思います。よろしくお願いします。
吉岡:
cluster社のプラットフォーム事業部デザイナーの吉岡です。よろしくお願いします。さっそくですが「cluster」のUIデザインについて、ざっくり紹介していきます。
まず「cluster」はマルチプラットフォームで展開しています。Web、スマートフォン、PC、VR…と、多岐にわたったデバイスに対応しています。
まずWebですが、VRやバーチャルで遊ぶための玄関口となっています。
・ポータルサイトとしてさまざまなイベントを探す
・イベントの情報を編集
・ワールドへの玄関口
といった役割を持っています。
次にスマートフォンです。もともと「cluster」はPC、VRだけでしたが、スマートフォンでも体験できるようになりました。
「cluster」もREALITYさんと一緒で、ネイティブとUnityをがっちゃんこして作っています。イベントに入る前の体験と、そこをつなぐ体験を社内では「アウトルーム」と呼んでおり、ネイティブのiOS、Androidで作られています。
イベントに入った後はUnityで作られていて、このようにゲームを操作するコントローラーを模したUIで提供しています。モバイルだからといって体の身体性をなくしてしまうとせっかくのバーチャルがもったいないので、モバイルの人も手をこのように動かしたりすることができます。
次がPCですね。Windows、macOS、どちらにも対応しています。
モバイルとあまり変わらないですが、キーボードを使って操作するゲームライクな操作方法になっています。こちらもキーボードで、手の操作が可能です。
最後にVRですね。
VRはこのような感じで、宙に浮くUIを展開しています。
あえて、キーボードやスマートフォンなどでもよく見かける雰囲気のUIにしています。VRに対する入り口を、できるだけ抵抗感のないものにしたい。そう考えて3D空間上に置きました。
そのなかでも、少し特殊なのが、表情を出す時のUIです。身体性に関わるものなので、手元ですぐ操作できるようにしています。ここはVRらしい特別なUIとして設計してあります。
吉岡:
ここからは、そのVRにおけるUIが、どういった変遷を辿ってきたか、解説していきます。かなり長い間、UIの改善を繰り返しているのですが、ざっくりこういった変化を重ねてきました。
一番はじめの「ゲームコントローラー版」はヘッドアップディスプレイをかぶると、こういったUIが出てきて、手元のコントローラーで操作する形式でした。
次の「プロトタイプ期」は、ハンドコントローラーを用いて操作できるようになり、VRとUIの未来について、より本格的に考えるようになりました。
現実と同じように「物理的なさわり心地のあるもの」「さわれそうな雰囲気のあるもの」を使うことで操作を促せるんじゃないか?と、この頃は考えていました。
あるいは宙に浮くUIではなく、ワールドに設定されていて、ハンドコントローラーで触れるようなものを置くのはどうか。現実世界における物理的なプロダクトデザインと同じような考えを取り入れられないかとも考えていました。
ただ、将来的には、このハンドコントローラーは無くなっていくのではないか?と、この時点から考えるようになりました。実際、Oculus Quest 2はもう既にコントローラー無しであっても操作ができたりもしますよね。
そして、プロトタイプ2期へ。アプリケーション構想と言って指で触れるようなタイプのUIを考えるようになりました。
さらにそこからいくつかのUIを模索していったのですが、まずは「プレート式」のUIでいえば、下のようなイメージです。
その次に検討したのが「タブレット式UI」です。これは今の思想にかなり近い「誰にとっても身近なUI」を目指しはじめたものです。
バーチャル空間上では、ユーザーさんの作ったコンテンツが主役です。それを目一杯楽しんでほしいので、阻害するUIにならないように気を付け、作成しています。現在のUIは、このようにレーザーポインターで操作し、表情も手元でこのように変えて遊ぶことができます。
時間が来てしまったので、結論なのですが、いまこのVRのメタバースを作るのは、今後10年後、20年後のスタンダードをつくる行為だと思っています。活躍できる分野はたくさんあるので、ぜひいろいろな方にメタバースに参入していただければと思っています。
編集 = CAREER HACK
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