タクシー配車アプリ「MOV」をデザインしたDeNAの久田歩さんと向井毅男さんが登場。「徹底的な現場ヒアリングと”言葉”をはじめとするUIの細部まで考え抜いたデザインがUX向上の鍵だ」と語った。
今回の「UI Crunch」のテーマは、私たちの日々の生活に根付くサービスの体験をつなぐUIについて。より愛され、長く息のできるサービスは、どのような思考によって生まれているのだろうか。イベントの内容で語られた内容をご紹介します。
配車に関わるサービスはここ数年で急増している。株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)が提供するタクシー配車アプリ『MOV』もそのひとつだ。
サービス設計において重要視したことは徹底的なヒアリングだという。
「アプリを開発する上で、一番知らなければならないのはタクシー業界のこと。タクシーを利用することはあっても、そこでの働き方についてはほとんどなにも知りませんでした」
業界全体のこと、職場内のこと、法律や規制など、さまざまな情報をヒアリングしながら、タクシー運転手が日々抱える課題や思考を整理していった。
「一日助手席に座って、運転手の働き方を観察したり、配車システムがどのような仕組みになっているのか、車載された無線機や決済端末をどのように使われているのか。実際に現場に足を運んで知ろうとしました」
ヒアリングを重ねた結果、配車アプリ『MOV』の設計において意識しなければならないことは以下の3点だった。
・安全第一
・スマートフォンに馴染みのない方でも利用しやすいフローやUIの設計
・既存システムとの融和
「タクシー運転手の目線に立って考えてみると、そもそもスマホ自体が不慣れな方も多い。”アプリの文字が読めない”、”フローがわかりにくい”など問題点はさまざまです。また、ヒアリングを続けることで、タクシー運転手は安全のため、あらゆることに注意を払いながら働いていることがわかりました。そこで、できる限り集中力を削がないためのシンプルでわかりやすいフローを設計する必要があったんです」
続いて語られたのは、”言葉”の重要性について。
デザインと聞くと形や色などの見た目の話になりがちだが、それらと同じくらい”言葉”のデザインが大事だという。
実際にMOVでは、アプリを設計する際、言葉を適切デザインすることを意識していたという。なぜなら、言葉さえあれば人の行動を導くことができるからだ。スタイリングやレイアウトなどは、より伝わりやすくするための一要素。UIデザインにおいて”言葉”は重要な役目を果たしている。
アプリ内には、運転手が乗客を見つけやすくするために、乗客ユーザーの見た目の特徴や目印になるものを入力する欄がある。そこでつかわれる言葉の選び方を例に挙げながら解説された。
「”入力してください”と書くと高圧的ですし”特徴”と書くと対象がふわっとしていて書くべきことがわかりづらい。そこで特徴の有無を”はい”か”いいえ”の二択で入力できるようにして、ユーザーの入力ハードルを下げています」
初期案
改善案
最終案
「言葉はユーザーを導く要素であり、言葉が人の行動を左右する」とデザイナーが認識して、責任を持ってデザインする。正しい言葉のデザインによって、『MOV』ではストレスのない体験を実現できているのだ。
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