メタバースならではの体験とは? どこまで広まる? メタバースへの問い、UI/UXの未来についてキーマンが語る。「UI Crunch #16 メタバースのUI」よりREALITY社、クラスター社、そしてGoodpatchの土屋尚史さん、DeNA 増田真也さんのトークセッションを書き起こし形式でお届けします。
※2022年1月19日に開催された【UI Crunch #16 メタバースのUI -仮想空間に接続するデザイン-】よりREALITY社のRIOさん・超簡単さん、クラスター社の加藤直人さん、吉岡航さん、Goodpatchの土屋さん、DeNAの増田さんによるトークセッションを書き起こし形式でお届けします。
目次
・自分の見た目を、アバターに近づける人が続出!?
・1つのアバターで、いかにプラットフォームを横断できるか
・影響を受けたメタバース的な世界観
・どこまでリアルさを取り入れて、どこからバーチャルらしくするのか
・ゲームに抵抗感のあるおじさんとメタバース
・メタバース内での経済のビジョンについて
・あなたにとってデザインとは?
土屋:
こんにちは、Goodpatchの土屋です。今回のUI Crunchにあたり、じつは「REALITY」を自分でもインストールしていたのですが、Goodpatchのメンバーが「私たちが作りますよ!」と言ってくれて。今日はこのアバターになりました。社員から見ると…僕はこう見えている…ということでいいですかね(笑)なので、今日はこのままいこうと思います。よろしくお願いします。
増田:
DeNAの増田です。よろしくお願いします。このイベントにはOculusで参加しています。じつは急いで使ってみることにしたので、あまり慣れていなくて。タッチするとたくさんメニューが出てきて、いろいろと同時に考えなきゃいけないんだなと勉強になっています。自分が日頃触れるデザインと違いますし、流れが来ていることも実感しているので、そのあたりを深ぼって聞けるのが楽しみです。本日はよろしくお願いします。
土屋:
まずREALITYさん、クラスターさん、それぞれのプレゼン、ありがとうございました。
(参考)
>メタバースアプリ「REALITY」UI/UXの裏側。滞在170分、海外ユーザーが熱狂する没入感
>メタバースのコントローラーは無くなる?「cluster」が考える、メタバース UIの未来
REALITYさんは約3年、クラスターさんはもっと長くやっているわけで、さまざまな試行錯誤があったんだなと。ここが見えてすごく楽しかったです。
増田:
僕もREALITYさんの成長は以前から見ていて、改めてすごいなと思いました。またアバターに愛着を持ってもらう工夫が勉強になりました。クラスターさんは「ここまで出来るようになっているんだ!」と次世代感があり、感動しました。
増田:
トークテーマに沿っていくということで、まずは「メタバースだからこそ実現できる体験とは?」と。これまでのSNSやサービスとの違いでいうとどのあたりになるんでしょう。
RIO:
「REALITY」でいうと、アバター機能があり、みなさん、いろいろなアバターを作っています。アバターが手鏡のように自分と連動して動く。それを日常的に見ていると、それがどんどん「自分」だと思えてくるんですよね。
そして何が起きたのか。リアルの自分の見た目を、アバターに合わせ始める人が続出したんです。たとえば、REALITYで髪の毛をピンクにしていた人が「やっぱり自分はピンクだな」と実際にピンクに染めたり、メイクもアバターに寄せにいったり。リアルとアバターがズレていると違和感が生まれ、リアルな自分もそっちにあわせなきゃ!と、どんどん同一化が進む現象があります。ここはこれまでと全然違うところかなと思います。
土屋:
おもしろいですね。ちなみにRIOさんはもう完全にこの世界の「DJ RIO」を作ってるわけじゃないですか。これはもう意図的ですよね?
RIO:
むしろ、ケモミミ美少女になりたくない人類なんているんですか? みんな、なりたいですよね?(笑)
あと、今日見ていて思ったんですけど、土屋さんと、増田さんはリアル系のアバターですよね。で、僕と超簡単は耳がついてかわいくて、クラスターの2人はまず等身が低い。このあたりにも企業カルチャーが表れていますね。
土屋:
確かに明らかに違いますね。言ってしまうと、今はアバターで出てますけど、リアルは全員おっさんですからね(笑)
RIO:
メタバースのなかだったら、かっこよくなったり、かわいくなったりできます。見た目がかわいければ、みんな優しくなりますよ。
土屋:
超簡単さん、いまさっきピースしたじゃないですか。どうやってるんですか?
超簡単:
人差し指以外の指で、コントローラーを握り込むんですね。あとは親指のボタンにちょっと触れるとピースができます。他にもいろいろできますよ。
土屋:
そうなんだ…すごい。
RIO:
これもまさにメタバースだからこその体験ですよね。リアルタイムでしゃべりながら「かわいいね」とか「それ、どうやるの?」と盛り上がることができます。
超簡単:
じゃんけんもできますよ。
土屋:
確かに!それはおもしろいですね。
加藤:
「じゃんけんができる」という事実、この身体性はこれまでのSNSとの圧倒的な違いかなと思います。
たまに「メタバースはコミュニケーションするという意味で、TwitterとかInstagramの上位互換ですか?」と聞かれることがあるのですが、「バーチャル空間でコミュニケーションを取ること」はSNSの延長線ではないと思います。既存のSNSは、どちらかといえば情報を発信していく。メタバースは、集まってダベる感覚に近い。友だちと集まる部室やマクドナルドの延長かもしれない。クラスターでも最近だと「バーチャル喫煙所」が流行っているんですよね。
超簡単:
ちょうど今朝、行きましたよ(笑)「スライドつくるの疲れた〜」って。
加藤:
そうなんですよね。そういう体験はこれまでのSNSとは大きく違うところ。喫煙の煙で他の人に害を与えることもないので健康的ですよね。
土屋:
よく考えると「cluster」のワールドに、「REALITY」のキャラクターが高精度で入っていて、すごいことですよね。
加藤:
いろいろ要因はありますが、REALITYさんのエンジニアもがんばったし、クラスターのエンジニアもがんばりました。エンジニアは尊い。
土屋:
そうですね。この後、メタバースの中に、いろいろなプラットフォームが出てくると思うのですが、プラットフォームごとにキャラクターをいちいち作るのはイヤですよね。なので、一つのキャラクターでいろんなワールドや別会社のサービスにシームレスに行けるといいですね。
RIO:
そこはけっこう話題に出ますね。アバターというか、もっと広義に言えばアイデンティティのインターオペラビリティ(相互運用性 / 相互接続性)というのかな。
よく取材などを受けて記者の方にも話をするのですが、「あなたはFacebook、Twitter、LINE、Instagram、TikTok、全て実写の顔写真と実名でやっていますか?」という話でもあるんですよね。
一部の公的な人、自分の顔と名前で商売している人たちを除いて、基本的には使い分ける人が多い。ほとんどのユーザーは、SNSに合わせてアイコンやニックネームを使い分けているので、メタバース時代でもどちらもあり得るんじゃないのかなと思っています。
増田:
必ずしも100%、今の現実の世界が置き換えられる必要もないし、みたいな感じですね。
加藤:
ソードアート・オンライン もプロトコルの部分は一緒ですが、別サービスに行ったらアバターを変えないといけない。そんな感じの未来になるのかなと思います。
土屋:
ちなみに、みなさんのメタバース的な世界観について教えて下さい。映画やゲーム、マンガ、アニメなどでいろいろなメタバース的な世界観が描かれてきましたが、みなさんがサービスを作るときに一番影響を受けた作品はありますか?
加藤:
私はソードアート・オンラインかもしれないですね。SFも好きですが、ソードアート・オンラインは原作も全部読んでる原作厨なので。
土屋:
RIOさんとかどうですか?
RIO:
うーん、僕はそんなになくて。あえて言うと、今の「REALITY」を作るにあたって思想的にも、UX的にも、一番参考にしたのがVR Chatです。
土屋:
VR Chatですか?
RIO:
VR Chatのプロダクトそのものではなく、そのなかで起きている現象、そこで作られている空気感をどう持ってくるか。あるいはどうカジュアルに翻訳するかといったことをけっこう考えましたね。
土屋:
次のテーマが、「どこまでリアルさを取り入れ、どこからバーチャルらしくするのか」。線引きのポイントとUIにおける工夫点ってところですね。このあたりはどうですか?
RIO:
これは「リアルさ」と「バーチャルらしさ」という質問自体にいろいろなバイアスを感じますね(笑)我々はバーチャル至上主義ではなくて、「もはやバーチャルとリアルは同じだろ説」の原理主義者なので(笑)
吉岡:
そうですね(笑)ただ、あえて「リアルさ」と言いますが、それを取り入れる最初の段階でいえば、やはり何か現実のテクスチャーの素材感を取り入れ、UIに対して親しみを持たせることは意識しました。そのようなことがヘッドマウントディスプレイ、VRでも起きるのではないかなと思ってます。
RIO:
確かにスキューモーフィズム(別にあったものに似せるためのデザイン・装飾など)は新しい体験を導入する時に、すごく意識しています。
仮想空間の中で音楽ライブなどもかなり行われるようになってきましたが、はじめて入った時に仮想空間でのライブなのに、スピーカーとか照明とか実際のステージっぽく作ってるところに違和感があったんですよね。「物理的な制約がないのに、物理的なものを再現してどうするの?」と。ただ、自分たちがバーチャルライブやバーチャル番組を制作していくなかでわかったのが、やっぱりそういうものがないと何をやってるのかわからない、ということ。
やっぱり最初は現実的な、あるいは前に見たことがあるものを再現するところから始めて徐々に慣れていくことが大切だなと。
iPhoneのUIでも、昔はパッとボタン風に見えていたところがだんだんフラットになり、今やそのボーダーラインすら無くなっていますよね。テキストがなくても「ここが押す場所だ」とわかるようになっている。それと同じで、今のデバイスとかプラットフォームに適したよりネイティブなUXがわかるようになっていくんじゃないかなと思います。
土屋:
映画や物語でも必ずある種の「リアルさ」があるから共感ができる、というのがあると思って。入り口の先に新しさがあるとしても、入り口のところはある種の既視感のあるものじゃないと没入できなかったり、認識できなかったりするのかもしれないですね。
RIO:
それはそう思いますね。
増田:
アバターでいえば、アバターであってもZoomのように「画面オフ」ができる機能はその「リアルさ」かもしれないですね。
RIO:
そうですね。「REALITY」のアプリって、「Unityによる3Dのアバターを描写するレイヤー」と「ライブ配信・SNSみたいなネイティブのUI」を重ねて作っていて。本来は全部3Dで作ってもいいのですが、やっぱりみんなが使い慣れているチャットやライブ配信、動画プレイヤーのUIを踏襲した方がスッと入れるということで、わざわざ複雑なネイティブを重ね合わせたUIにしていますね。
超簡単:
ちょっと「cluster」で質問があって。「REALITY」はモバイルで操作することがメインだから、現実世界からかけ離れたUIはあまりないんですよね。それが「cluster」の場合は、逆にボタン的なUIをやめて、現時点でレーザーポインターが採用されていますよね。あれはどういう理由があったのでしょうか?
吉岡:
「フィードバックをどのように返すかが難しかった」というのが一つありますね。たとえば、iPhoneってたとえ振動があっても、なくても画面上で触った感覚を得られる、ボタンのフィードバックとしてすごく優れていることに気づいて近づけられないかなと思っていました。
当時、ヘッドマウントディスプレイは今よりも解像度が低く、どうしても文字やアイコンを大きく作らないといけなかった。UIが大きくなると操作範囲が広くなり、マイノリティリポートのようにブワッと腕を頻繁に大きく動かして操作するしかない。それはそれでかっこいいけど、操作してて疲れるのが難点でした。感触のないまま、空を切る感じがするので、どうしてもフィードバックもごまかせませんでした。もちろん振動などをいろいろ使って工夫はできたのですが、それでもやっぱり足りませんでした。
加藤:
そのマイノリティリポートのようなUIを表現するために、初期の頃は段ボールでペーパープロトタイピングみたいなこともやっていましたね。エンジニアに段ボールを持ってもらって、ボタンを押すとウィンドウがビュンと飛んでくる、みたいな。ちょうど2016年くらいに海外デザイナーが、ARのプロトタイプみたいなものを作っていてすごくかっこよくて。でも、それを作ると全くよくなかったんですよね。先ほどのRIOさんの話に近くて、よく考えたら指で押してる時点で身体から逃れられていない。身体から逃れることができるのがメタバースの良さなのに、質量や物理法則が身体から逃れられてないという時点で敗北していました。
土屋:
次のテーマは「メタバースが一時的ブームで終わらず、日本で今後発展するには?」という部分ですね。
これは今、みんなが考えていることじゃないですかね。それこそFacebookが社名を変えて、1兆円投資するみたいなニュースもあって。これはクラスターさん、REALITYさんからすると「よっしゃ」みたいな感じですかね。
加藤:
気づいたらまわりがメタバースでめっちゃ盛り上がっていた、みたいなところありますね。
RIO:
一時的なブームをつくるのがメディアの仕事なので、そこは自由にやってもらって、僕らはずっとやっているので、あまり変わらずコツコツやるだけですね。
そもそも、デジタル空間上で自分のアイデンティティを持つこと。自己投影できるペルソナとしてアバターで活動したり、コミュニケーションしたり、それ自体は不可逆なトレンドとして進んでいきます。なので、一時期ブームはメディアが勝手につくり、勝手に無くすかもしれませんが、そことはあまり関係なく、今後も発展していくと思っています。
そもそも何を「メタバース」と捉えるか。FortniteやRobloxがメタバースと言われたりしていますが、それらは全世界で3億人、4億人とユーザーがいて。そういう意味ではもうメタバースってみんなが使っていますよね。
加藤:
そういったメタバースの話をする時、10代、20代の人たちからすると「何をあたり前のことを言ってるんだろう?」みたいな反応だと思うんです。ずっとアバターでゲームをやって、リアルタイムでボイスチャットでつながっていて、普通にやっていること。で、何が変わるんだろう?と。なので「一時的ブームで終わる」と心配しているのは、そういうことをやらずに休日にゴルフに行くおじさんたちなのかなと思っています。だから大丈夫です(笑)
…一応ちゃんとこの質問に答えるとするなら、UI/UXという観点で、もっとハードルを下げてないといけないな、とは感じています。VR一つとっても、まだまだわかりづらいところが多いですよね。
RIO:
むずかしいですよね。確かに今、メタバースと呼ばれているものたちは、ゲームに慣れ親しんでいる人、ボイチャをつなぎっ放しにしている人たちからすると全く違和感はない。ただ、ライブ配信やボイスチャット、ゲームに抵抗のあるおじさんたちにまで使いやすくする必要があるのか?そうした時に若者がいなくなってしまうんじゃないか?というジレンマがある。どこまでUI/UXをユニバーサルにすべきか?という問題があります。
Snapchatも若者向けに頑なに閉ざしていて、おじさんたちの侵入を阻んでいるわけですよね。加藤さんは、クラスターをどこまで広げるつもりですか?
加藤:
どこまでいくんでしょう…(笑)おじさん向けメタバースもあれば、女子高生向けメタバースもあればいいのかなとは考えています。そういう世界にならないと全人類がメタバースを使う状況にはならないんじゃないかなと思います。これはインターネットとかSNSとか、どんなサービスでもそうだと思います。なので1つのプロダクトで全てカバーしていくというのが無理な話なのかなと。
RIO:
UI/UXでいうと、やっぱ最強は「慣れ」ですね。それこそ昔は携帯でメールしているのは女子高生しかいない、という時代もあったわけです。だけど今では誰でもLINEが使える。それと同じでツールがおじさん向きに何かを最適化してきたわけではなくて。あくまでみんなが使っているから「自分もやらなきゃ」と若い人に聞きながら徐々に慣れていく。そういった繰り返しによってユニバーサルになっていった。なのでやっぱり「慣れ」が最強のUI/UXなのかなと思います。UXデザインの仕事をちょっと否定してしまっているみたいなんですけど(笑)でも、そこは無視してはいけないと思うんですよね。
土屋:
あともう一つ重要な観点として、スマホが出てきた時、この産業に優秀な人材がたくさん入ってきたってことがありますよね。今回、メタバースが次の産業として盛り上がっていく時に、どうしてもネットやスマホの開発に比べると技術的ハードルが高そうなイメージがあります。
特にUnityや3D空間、VR空間の構築みたいなもののイメージが湧かなかったりしますし、デザイナーだとしたら「メタバースは興味あるが、何があればこのサービスづくりに関われるんだろう」となってしまいます。そこがちょっとわかりづらさはありますね。
超簡単:
僕はREALITYに入る前はWeb関連の会社で働いていて、本当にiOSもAndroidのことも、Unityのこともわからなかったわけです。はじめからわかっているデザイナーはおそらくほとんどいないです。大切なのは、わからないと思った時、エンジニアに聞いたり、勉強したりを繰り返しやっていくこと。そのうちにわかるようになっていくと思いますね。
土屋:
デザイナーがUnityを触ることもあるんですか?
超簡単:
今のところ、僕はそんなに無いですね。
吉岡:
今は触っていないですが、2021年の始め頃まではかなりな量のUIをUnityで実際に組んでいましたね。
加藤:
吉岡さんはWebも、iOSも、Blenderで3Dモデリングもできるし、Unityも触れる…みたいな人なので参考にしちゃダメですね(笑)。そういう人じゃないとできないんじゃないか?と思われてしまう。今はだいぶ分業も進んでいますので、いろいろ活躍できる場所はあると思います。
吉岡:
そうですね。そもそも、3D空間になったからといって学んできたWebデザイン、UIデザインの知見が全く活かせないかといえば、そんなことはありません。むしろもっとその知見が入ってきたほうがいいUIが作れると思うので、どんどん入ってきてもらいたいなと僕は思います。
土屋:
学んでいく姿勢は当然あるべきですが、学んでいく姿勢以外のところで必要なマインドはありますか?
超簡単:
同僚がこんなケモミミのかわいい女の子おじさんでも文句言わず、受け止めてくれる人がいいですね(笑)
土屋:
そもそもRIOさんは現実世界だとお偉いさんなわけですけど、超簡単さんはリオちゃんと呼んでますからね(笑)
RIO:
あまりに自然すぎる。
土屋:
次はリアルタイムでもらった質問にも答えていければと思います。
「メタバースを通じて今後どうビジネスを成長させるか?メタバース内での経済のビジョンについて」
これはちょっとお堅いですが、売上、利益を上げないといけないのは当然で。「REALITY」は投げ銭でしたっけ?
RIO:
投げ銭とアバターの販売ですね。
土屋:
「cluster」はプラットフォームと、いわゆるクライアントワーク、受託ですよね。
加藤:
そうですね。あとはクリエイターのみなさんが作った物をプラットフォーム内に流通させ、そこから手数料をいただくビジネスがあります。おそらくメタバース的な世界観を志向するプロダクトを作っていると、そこは基本になるかなと思っています。
今までのインターネットは実的な価値、フィジカルな価値が基本にあったので、デジタルなものに価値を持たせづらかったと思います。コピーがいくらでもできますからね。そこでガチャにしたり、広告でマネタイズしたりが基本でした。しかし、デジタル自身にお金を払う人がどんどん増えている。これがメタバースの変遷かなと思っています。普通に数千円でもスキンを買うし、アバターを数万円でも買うことも当たり前になっていくと思います。
このようにデジタルのコンテンツを生み出すクリエイターが生計を立てていく。世界的にそういう流れになっていくし、クラスターでも実現したいと思っています。
土屋:
「cluster」内だと圧倒的に優位に立てるようなアイテムが今後販売されるといったことはありますか?
加藤:
ちょっと答えになるかわかりませんが、多様性の世界なのかなと思います。
たとえば、世界が一つであれば、ゲーム性も一個しかないわけですよね。たとえば、今の資本主義社会だと「お金」という尺度で「お金を持ってる人が強い」となります。
メタバースの良いところは「こういう世界であればいいのにな」をクリエイターが作れるところだと思います。なので、あるワールドでは圧倒的一位になれるかもしれないですけど、別のワールドでは全く役に立たない、ということも起こりえます。また、とあるワールドではあるアイテムがすごい価値を持って売れる、みたいなことも起こると思います。
土屋:
野次馬的な発想ですが、メタバースの世界にとんでもない殺人鬼が現れたり、ワールドをぶっ壊しまくるウイルス的なAIが出てきたり、そういった事件が起きるのではないか?と思います。ちょっと映画っぽいですけど。
RIO:
既にいっぱい起きてますね。マイクラがサーバーハックされ、せっかく作った建物こわされたり、NFTが盗まれて盗んだやつが脅迫してきたり。それでいうと現実と変わりないですよね。
増田:
そういう世界を守る警察みたいな職業とかもできてくるんですかね。
土屋:
そうですね。そんな映画ありましたよね。
RIO:
「竜とそばかすの姫」ですかね。あの世界もメタバースですが、世の中に一個しかないんですよね。かつ、自分のアバターも、自分の身体情報をもとに作られる一体しかない。そう思うと、ものすごい脆弱な世界で。世界がハックされたらおしまい。バンされたらおしまいです。だから複数の世界が並列に存在するメタバースの概念や複数のアイデンティティを持てるメタバースの良さがあまりなかったのかなと思います。むしろ、バンされたら終わり、悪いやつだと思われたら終わり…という現実でもそうなのに、さらにそういった場所が増える、個人的にはかなりつらい世界でしたね。
土屋:
確かにそうですね…!
加藤:
バーチャル上の職業に関して、ちょっと無理やりUI/UXに紐付けると、バーチャル上のUXのデザインは絶対バーチャル上でやったほういいと思いますね。バーチャル上でデザインし、それが反映される。この仕事のあり方は必ず必要になると思います。
増田:
「現実には絶対建てられない建築」とかも立てられるわけで、この世界の建築家とかすごくおもしろそうですよね。
RIO:
そうですね。VR建築の職業は最近増えてきていますね。
土屋:
毎回、UICrunchの最後にゲストのみなさんに聞いてる、すごい抽象的な質問です。本当に答えづらいとは思うのですが、「あなたにとってのデザインとは?」という問いです。特にない方は「あなたにとってのメタバースとは?」と置き換えていただいて大丈夫です。では、一番手前にいる超簡単さんからお願いします。
超簡単:
僕にとってのデザインは「難しいを超簡単」にするためのツールですね。それが僕のミッションというかビジョンです。もう生まれてからずっと同じですね。
RIO:
僕にとっては手段ですね。 必要な目的を達成するための手段です。普通ですみません。
加藤:
デザインって難しいですよね。デザインもメタバースもそうですが、人がどうやったら幸せで気持ちよくなれるか?ここに対する試行錯誤、それがデザインに対する印象ですね。
吉岡:
僕にとっては、クラフトがやっぱり強いかなと思います。デザインって「作ることがデザインじゃない」とよく言われがち。ですが、やっぱり作るのが楽しいし、作っていかないとその「人」と「物」との接点はできていかないと思うので、そこをやっぱり大事にしたいなと思ってます。
(おわり)
編集 = CAREER HACK
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