WEB・IT・ゲーム業界で活躍する女性クリエイター・エンジニアの仕事観やキャリアビジョンを伺う、HACK GIRL企画。第8回は女性プログラマとして活躍中の武田麻衣子さんのインタビュー。就職活動の面接では“将来は海賊になりたい”と本気で語った彼女が目指している理想のエンジニア像についてを伺いました。
WEB・IT・ゲーム業界で活躍する女性の生き方やキャリア感に迫る“HACK GIRL”。今回は、ユーザー数550万人を突破した大人気女性向け恋愛ソーシャルゲーム「イケメンシリーズ」や本格サッカークラブ育成ゲーム「バーコードフットボーラー」を手がける株式会社サイバードでエンジニアとして活躍されている武田麻衣子さんをご紹介。
小学校から大学院まで一環して「自由な風土」に身を置いてきた武田さん。社会人として「自由」を手に入れるには、プロフェッショナルなスキルを身に付ける必要があると感じ、エンジニアというキャリアをスタートさせた。
プログラミング未経験でエンジニアになった彼女は、ディズニーランドのような存在でありたいと語る。その意味とは?
― 大学時代には“システムデザイン学科”を専攻していたということですが、もともとはデザイン分野に興味があったのでしょうか?
絵を描くのは好きでしたけど、“デザイナーになりたい”とか思ったことはなく「なんか自由そう」と思って入学しただけなんですよ(笑)。もともと、“慣習”とか“しがらみ”とかを気にしないで自由に過ごしたかったので、大学を選ぶ時には、歴史が古くなくて、かつ“1期生”になれる学校を探していて。そんな中見つけたのが、法政大学です。「システムデザイン学科」という新設された学科が「21世紀のレオナルド・ダ・ヴィンチを目指して」というスローガンを掲げて1期生を募集してました。自由な風土が自分に合いそうだなと思って決めました。
― 何かに縛られて生きることが、好きではなかったのは昔からなんですか?
そうですね。幼少期から、自由を感じる環境で育ってきたのが影響しているんだと思います。小学生の頃、大人と一緒になって「小学校をつくる」という体験をしたんです。当時、中国に住んでいて、両親が小学校をつくるプロジェクトに携わっていました。私が「こんな給食があると生徒が喜ぶんじゃないか?」とか「学校でこんな行事があると活気づくんじゃないか?」などの意見を両親含め、先生たちにどんどん出して、意見が反映されて、小学校ができていきました。
中学・高校時代も学校をもっと居心地のいい場所にするために、校長先生に行事や風土形成における意見を伝えていました。そんな経験をしてきたこともあって、大学選びも、自由な風土があるところに行きたいと思ったんです。
― “自由”な環境が身近にあった武田さんにとって、将来「こんな道に進んでみたい」と思うようなものはあったのでしょうか?
大学の応募書類には「将来は海賊になりたい」って本気で書きました。
― えっ?「海賊」ですか?
はい。海賊は“自由の象徴”じゃないですか。当時高校の進路の先生に却下されて。やわらかく「海を冒険したい」って書きなおしましたけど。でも、私は真剣だったので、就職活動の時も書きました(笑)。それでもし「この子は“違う”」って思われたなら、私には合わない所だとすら考えていました。
― では、就職活動をするにあたっては、どんな選択肢を考えたのでしょうか。
それも結構、学生時代と近い考え方でしたね。条件としては、わりと新しい会社で、自分が“素”でいられそうなフランクな雰囲気で、社長とも気軽に会話できるところ。なので、“社員数が数万人”っていう会社は考えていませんでした。
― 「自由な発想で仕事ができて、堅苦しくなくて、社長との距離が近い」となると、ベンチャー企業などが候補になってきますね。ただ、ベンチャーだと将来が不安という思いはなかったんですか?
まったくなかったですね。私は明日より今日を大切にしようっていう考え方なんです。
絵画、彫刻、建築、土木、人体、科学の分野で数々の偉業を成し遂げたレオナルド・ダ・ヴィンチは、やり残したことがあって後悔をしながら息を引き取ったということを本で読みました。その時からいつ死んでもいいと思えるくらい今日を後悔しない生き方をしようと決めました。
― 素晴らしい考え方ですね。では、なぜエンジニアになろうと?
海賊になりたかったのは“自由”になりたかったからだとお話ししましたが、学生時代と違って社会に出たら自分にしか出来ないプロフェッショナルなスキルを身に付けないと、自由を手に入れることができるんじゃないかと思い、いくつかの選択肢の中から「エンジニア」という道を選択することに決めました。ありのままの自分を受け入れてくれたのが今働いている当社だったんです。
入社するまでまったくプログラミングができませんでしたが、会社からは「予習とかしなくていいから、ゼロできてくれて良いよ」って言ってくれていて。「サーバって何?」ぐらいのまっさらな状態だったんですけど、ホントにゼロから教えてくれたんです。思いっきり勉強して、1ヵ月とか2ヵ月ぐらいで簡単なプログラムは組めるようなりました。
― プログラミングスキルを身に付けてから、どんなことをされてきたのでしょうか?
今は『女子カレ』っていう女性向けのiPhoneアプリを作ってます。その前は、女子高生向けのiPhoneアプリを。当時も今も、プログラムを書くのがメインですけど、女子高生向けのアプリの時はゼロベースからのプロジェクトだったので、企画にも携わりました。
そのアプリは男性の企画2人で作っていたので、女子が喜びそうなポイントがあまり取り入れられてなかったんです。私やデザイナーの女性が感じたこと、女子高生から直接聞いた意見も交えながら、企画担当にフィードバックをしました。その時に、もっと女性エンジニアが増えたら、良いサービスが作れるのに。。。そう感じたんです。
― といいますと?
企画とかデザイナーには女性が多い一方でエンジニアは男性が多い。当社ではプロジェクトの中で“男性チームvs女性チーム”みたいになることも多々あるんですよ(笑)。
女性って「もっとカワイく!」とか曖昧な言い方が多いじゃないですか。でも男性は「何色で?」とか具体的な意見を求める。そこで対立が起きてしまう。そういう時、私が双方の間に立って、お互いが言いたいことをうまく翻訳できるように心がけています。
― 女性の持つ「共感力、受容力、包容力」がエンジニアにも求められると?
そうですね。技術的な知識やスキルを身に付けた女性エンジニアが増えることで、プロジェクト間において男女の強みを上手く融合させることができ、もっと良いサービスを生み出せるんじゃないかと思います。
― 武田さんが考える、理想のロールモデルについて聞かせていただけますか?
イメージで言うと、(ONE PIECEの)チョッパーみたいな存在ですね。分かります?いつもすぐ側にいるんだけど、いざという時に「役に立つ存在」。チョッパーは周囲をほんわかとした雰囲気にしますよね。もともと私がピリピリした雰囲気が好きじゃないっていうのもありますけど、“恐怖政治”みたいな環境では良いものは生まれないと思うんです。“たばこ部屋の方が良い企画が生まれる”って言う人もいるじゃないですか?私は常にそんな雰囲気をつくっていたい。会社的にも、上司や部下を問わず何でも言いあえる関係の方が、良いアイデアが生まれやすいと思いますしね。
― 最後に、「エンジニア」としての理想像についても聞かせていただけますか?
当たり前かもしれませんが、エンジニアの世界に終わりはないと思うんです。常に新しい技術が入ってきますし、キャリアも完成系はない。
エンジニアは常に新しいアイデアと工夫を凝らしながら、技術で世の中の問題を解決し、沢山の人を喜ばせるものを作っていく存在です。そう考えると、私はディズニーランドのようになりたいと思っているんです。創設者のウォルト・ディズニーは「ディズニーランドは永遠に完成しない。世界に想像力がある限り、成長し続けるだろう」と語っています。そんな精神が50年以上経った今でも根付いている。ディズニーランドのように常に新しい発想と創造力で、世界中の人々を感動させる。そんな存在でありたいですね!
― とても夢のある話ですね。エンジニアとして高みを目指す、武田さんの今後のご活躍を楽しみにしております!今日はどうもありがとうございました!
(おわり)
[取材] 梁取義宣 [文]山本翔
編集 = CAREER HACK
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