2014.03.04
「誰も味わったことのない体験を」|『BIRDMAN』築地ROY良が語るクリエイターに問われる覚悟。

「誰も味わったことのない体験を」|『BIRDMAN』築地ROY良が語るクリエイターに問われる覚悟。

『Intel(R) Push for Ultrabook(TM)』やSONYハイレゾ体験イベント『オンガクの結晶』など誰も見たことのない体験を創るBIRDMAN。話題のキャンペーンには必ずと言っていいほど彼らの名がクレジットに刻まれている。そんなインタラクティブの旗手が考える未来のクリエイターとは?

0 0 12 0

デジタルコンテンツの旗手は、クリエイティブの先に何を見るか。

テクノロジーの進化により、広告コミュニケーションのあり方が変化している昨今。デジタルを駆使した次世代のクリエイティブが求められるなか、最も注目されるチームの一つが『BIRDMAN』だろう。

ユニークなデジタルコンテンツで広告賞を多数受賞。直近では『KIRIN DREAM RACE』で、世界的に権威のあるWEBデザインアワード『FWA』で賞を受賞した(Mobile of the Day)。




この『KIRIN DREAM RACE』だが、驚くべきことに、ライブ中継システムから、SNSプロフィール画像とハード(画像モニター)を連携させる仕組み、レース会場となるジオラマまで全て自作。WEBとリアルが違和感なく繋がったその先…「自分が主役となってレースに参加できるワクワク」というユーザー体験をつくりだした。

もう、これまでの広告やプロモーションとは全く異なる発想・手法・技術でつくられるインタラクティブコンテンツ。その旗手である彼らが考える広告の未来、そして求められる次世代のクリエイター像とは?代表であり、クリエイティブディレクターの築地ROY良氏に話を伺った。

“インタラクティブ”が、広告業界の主役となる時代へ。

築地ROY良

BIRDMAN 代表 築地ROY良氏


― 現在、広告やプロモーションの世界ではインタラクティブコンテンツが非常に注目されています。チカラを入れる企業も増えてきましたよね。その中でもBIRDMANは尖ったコンテンツを量産していて…特に意識しているのは部分とは?


ここ数年でいえば、「その時、その場所でしかできない体験を提供する」というのが、私たちが得意とするところだと思います。それは、今の時代、みんなが「体験」に価値を感じるようになってきたと言い換えることができるのかもしれません。

音楽業界にしてもCDは全然売れないけど、ライブだとチケットが売れたり、グッズが売れたり。それって「その時、その場所にいかなければ味わえないワクワク」があるから価値になるわけですよね。


― それを、WEBやデジタルでやっていく、と。


そうですね。これからの広告を考えた時、デジタルやインタラクティブなコンテンツが広告業界の主役になっていくと考えていて。

たとえば、新聞を読む人達はどんどん年齢層が高めになっています。そういった層に訴求するならそれでいいのですが、20代、30代をターゲットにするなら、もう新聞広告はほとんど使わない。

若者にとってはWEBやネットでの「体験」や「生活」が当たり前になっています。そんな彼らが歳をとった時、新聞という紙媒体があるかどうかさえわかりません。

生活の中心にテレビがあった時代は、テレビCMのコンセプトやトーンに合わせてWEBをつくる…というのが主流でした。でも、今は「どんなインタラクティブコンテンツをつくるか」から考え、そこから他のメディアやイベントなどに派生させることも。これもテレビのCMでは届けられない価値を感じてもらえるようになったから、と言えるのかもしれません。

とはいえ、テレビCMの波及力はやっぱりスゴイわけで。いくら頑張ってバナーを作っても、CMを一発流した後のWEBへの誘引数は全然かないません。

しかし、今まではテレビはテレビ、グラフィックはグラフィック、イベントはイベント、OOHはOOH、WEBはWEBというように別々で動いていましたが、それぞれのメディアが連動して同じストーリーを作っていくことでさらにもの凄いパワーが生まれ、人が動くと思うんです。そのストーリーの中心になってくるのが、デジタルだと思っています。

これからのクリエイターは東急ハンズで素材や道具の調達から?

― 人々の生活やコミュニケーションがデジタルによって変化し、広告のあり方も変わる。そういった中で、最先端のクリエイティブを生み出すために大切なことはなんでしょうか?


クリエイティブディレクターでいえば「度胸」ですし、デザイナーやディベロッパーでいえば「地道な努力」や「好奇心」ですかね。できるかどうかわからないけどやってみる。誰もやっていないことをやる、というか。


― 「度胸」と「努力」「好奇心」ですか?!…センスや技術ではなくて?


もちろんセンスや技術力も大事ですし、最低限のレベルはクリアしているとして。

たとえば、SONYのウォークマン(R)でハイレゾの音源を音と光で体感するインスタレーションをつくったのですが、これは本当に大変で。





音の振動によって砂で模様を描く「クラドニ図形」を使っているんですけど、公開当日ぎりぎりまで「本当にこれできるのか?」と不安な状況でした。とにかくBIRDMANのなかでも外でも誰もやったことがないし、見たことがないものだったので。


― もともとの着想はどこから得たのでしょうか?


この企画は電通さんと一緒にやらせていただいたのですが、企画会議の時、Youtubeでクラドニ図形というものがあるらしいぞ、というのを一人が見つけて来まして。「おおー、これは面白い」となって。

それで、その「クラドニ図形」を研究してる人が八王子にいるらしい…と電話でアポをとるところからスタートしています。実際に装置を使って「どんな音圧や音量だとどのような模様になるか」とじっくりと見学させてもらったんです。

あとは東急ハンズにいって自分たちで道具を買ってきたり、どんな粉や砂であればキレイな模様になるか試したり。砂じゃなくてゴマがいいのか、小麦粉がいいのか…ちょっとずつ音量や音圧を変えながら「この音はこんな形になるんだ」といろいろな周波数を自分たちで検証しました。でも、砂を乗せるガラスのサイズによって模様が変わってしまって、また最初からやり直し…この実験は永遠に続くのでは?という感じでしたね。

すぐにプロトタイプがつくれるようなチームを。

― 「クリエイターが生き残るためにはスキルの幅を広げるべき」とはよく言われることですが、まさかそんなところまで…。


デザイナーに関していえば、本来どのようなメディアや道具で何をデザインするか?いろいろな表現をイチから考える存在ですよね。ディベロッパーにしてもモノをつくるためにさまざまな技術を検証できたほうがいい。


― そう思うとメディアや「場」を超えるのは、本質的といえば本質的なのかもしれませんね。


インタラクティブは「双方向でのやりとり」ということなので、別に「メディア」や「場」は関係ないんですよね。極端にいえば、紙でもできます。そう思うと、この領域のクリエイターがやることは必然的に増えていくのかもしれません。

あとは「つくってみる」というところが本当に大事。だからこそ、プロトタイプが必要不可欠だと思います。クライアントへの提案も、机上の空論では話が通じないので、プロトタイプをつくり、できるかどうかあたりをつける。

もちろん一人で全てつくれるわけではないので、チームでやっていく。できれば全て自社でやれたほうが、できることの制約はなくなっていく。「次世代のクリエイターとは」というと少し話が大きすぎますが、少なくともBIRDMANではこういったスタイルを追求したいと思っています。


▼築地ROY良氏のインタビュー第2弾
「やらざる得ない環境こそが、クリエイターを育てる」|築地ROY良と考える人材育成

[取材]白石勝也 [文]高橋梓


編集 = 白石勝也


関連記事

特集記事

お問い合わせ
取材のご依頼やサイトに関する
お問い合わせはこちらから