2014.09.18
ウェアラブル最前線に、おもちゃで挑む!|「Moff」高萩昭範に聞くハードウェアスタートアップのススメ

ウェアラブル最前線に、おもちゃで挑む!|「Moff」高萩昭範に聞くハードウェアスタートアップのススメ

ウェアラブルなスマートおもちゃ『MoffBand』を開発するMoff代表取締役 高萩昭範さんへのインタビュー。活況を呈していると言われるものの、あまり情報の入らない世界のウェアラブル市場で、日本発のハードウェアスタートアップが見出した戦い方について伺いました。

日本のハードウェアスタートアップは、世界のウェアラブル市場でどう戦えばいいのか

2014年9月9日。スマートウォッチ『Apple Watch』がとうとう発表された。Appleの参入により、ウェラブルデバイスの開発競争は世界中でさらに加速していく。

市場の拡大時、そこに現れるのは大手プレイヤーだけではない。そう、我こそが次の成功者!と大きな野望を抱く数多のスタートアップが登場する。これまでの10年、我々はWEB/IT/ゲーム分野におけるスタートアップの勃興を見た。これからの10年は、その役割をハードウェアのスタートアップが担っていく時代になるのかもしれない。SNSやソーシャルゲーム黎明期に感じた熱気のようなものが見つかるのか、今このタイミングでウェアラブル市場とハードウェアスタートアップに光をあてたい。

ここに、日本から世界に挑戦するスタートアップがある。スマートおもちゃ『MoffBand』を開発する株式会社Moffだ。今春、海外のKICKSTARTERで資金を募り、48時間で目標金額を達成し、最終的に目標金額の4倍を調達したニュースが記憶にある方もいるかもしれない。資金取得以降も『MoffBand』は、海外のカンファレンスで注目を集め続け、いよいよ2014年10月より世界に向けて販売を開始する。

その肌で感じた世界のウェアラブル市場の状況、そして日本のハードウェアスタートアップが世界で戦う方法を、Moff代表の高萩昭範さんに聞いた。


高萩昭範

[プロフィール]
株式会社Moff 代表取締役 高萩昭範

A.T.カーニーでコンサルタントを経験後、メルセデス・ベンツ日本、食品メーカー社で商品企画を担当。独立後、WEBサービスを作っていたが、「ものアプリハッカソン」で出会ったメンバーと共に株式会社Moffを起業。子供向けスマートおもちゃ『MoffBand』を開発。

海外のウェアラブル市場は、第二段階に突入している

― 高萩さんは、『MoffBand』の展示、スピーカーとして登壇するため、海外のカンファレンスに数多く参加されているとか。まず始めに、私たちがあまり知らない世界のウェアラブル市場の状況に関して教えて頂けませんか?


はい。最近は有名なところだとSXSWとかMobile World Congressで展示を行い、WearableTecnologiesおよびBluetooth関係のカンファレンスにスピーカーとして招待されて行ってきました。特に欧米のカンファレンスは、日本では考えられないほど毎回すごい盛り上がりです。参加するたびにデバイスの展示数は増えているし、全然メジャーじゃないけど素晴らしい製品を展示しているハードウェアスタートアップがあったりして。毎回発見がありますね。Bluetoothアジアのカンファレンスに参加した際、すごくびっくりしたんですけど、「第一次ウェアラブルの波が終わった」というテーマがあって。


― 第一次ウェアラブルの波は、終わった!?


そうなんです。まだ日本には第一波すら来てないよ...と思いますよね(笑)。

ウェアラブルデバイスにも様々な種類があるんですが、その中でもヘルスケア関連のアクティビティトラッカー製品(ワイヤレス活動量計)は、データはとれるけれどもそれ以上のユーザー体験がない、形も機能も似たようなモノが出揃ってしまって低価格化が進行してしまった、それが第一波で終了。で、次は何が来る?みたいな話を皆がしていました。

とにかく周りの動きが早いですし、非常に盛り上がっている印象。ウェアラブル、IoT、それからハードウェアスタートアップの波が来ている!って気持ちになるのですが、日本に帰国するとそんな話全然聞かないし、情報も入ってこない。海外メディアから発信されているはずなのですが...。

自分が手がけたと胸を張って言えるモノを作りたい

― 高萩さん以外に、日本から参加しているハードウェアスタートアップの数は?


まだまだ絶対数が少ないですね。カンファレンスで知り合ったアメリカ人やフランス人に「日本はモノづくりの国なのに、何故IoTやウェアラブル分野のスタートアップの数が少ないの?」と不思議がられます。


― 世界では盛り上がっているのに、何故日本ではまだまだなのでしょうか?


個人的な考えですが、日本人はモノづくりへの意識が強すぎるのかもしれません。ハードウェア側の人は、これまで日本はモノづくり大国でしたから、モノ自体をつくることや、モノ自体の機能・スペックを追求することを好む傾向があるのかもしれません。逆に、ソフトウェア側の人は、「モノづくり=凄そうだけど大変そう」という思いが強く、ハードウェアスタートアップへのハードルを高く感じているのかもしれません。

IoTやウェアラブル分野の開発においては、ハードウェア、ソフトウェア、クラウド、データ解析などを全体として一つのシステムとして捉え構想・設計することが重要となります。またユーザー体験やデザインも、リアル/バーチャル両方について設計する必要があります。ハードウェア単体の開発、ソフトウェア単体の開発とは異なる観点や意識が必要となる部分も多いので、そこも参入障壁が高い要因かもしれませんね。

高萩昭範


― それでも、高萩さんはハードウェアスタートアップを起業された。何かきっかけがあったんですか?


自動車メーカーでは非常に多くのスタッフが企画・開発・製造・販売に関わっているのですが、プロジェクト内の大人数の中の一員でいるより、自分が手がけたと思えるものを作りたくなったんです。

その結果、独立してWEBの世界に飛び込み、コンサルや電子書籍ビジネスの立ち上げを目指しました。わからないなりにプログラムやデザインに手を出してみたり...。迷走していた時期かもしれません(笑)。

そんな時に出会ったのが、クリス・アンダーソンさんの著書「MAKERS」。ソフトウェアとハードウェアの融合が起こり、大きな工場がなくても、大人数で分業しなくても、誰でもメーカーになれる時代が来るというメッセージに興奮しました。自分がいたメーカーの世界とは真逆。これからはやり方が全く変わってくる。「これだ!自分にもできる!」と。


― その後、2013年1月に参加した「ものアプリハッカソン」で今の開発メンバーと出会ったことで、Moffを起業したんですね。そこから今まで約1年半しか経っていない。


いや、遅いくらいですよ。ハッカソンで開発したアイデアは、実は何度もピボットしているんです。そのため、新しいプロトタイプを作ってはユーザーテスト、その結果を検証してから作り直しての繰り返しで半年くらい費やしました。結局『MoffBand』のコンセプトが固まったのは2013年11月頃。最初からコンセプトが決まっていればもっと早かったですね。

世界のウェアラブル最前線で戦う方法は、同じ土俵で勝負しないこと

― 紆余曲折があってスマートおもちゃ『MoffBand』が誕生。KICKSTARTERで投資を集めるなど、先行して海外から高い評価を得ていますね。また、海外カンファレンスでも注目された理由はどんなところにあると思いますか?


カンファレンスに行くと、日本にはないハイレベルなサービスがあって、「おお、スゲー!」と思うんですけど、アクティビティトラッカーの延長線上で似ているモノが多いと感じます。服か手か、他のモノに付けてデータを取って、解析して、数値化してサービスに活かすっていうのがほとんど。スマートすぎるって言ったら変なのですが、ハードの色も黒か白かシルバー。会場がちょっとどんよりしている感じなんです(笑)。

高萩昭範



そんな会場内で『MoffBand』を見せると、「何か、1個だけオレンジがある!」と目立つんです。製品自体、3D画像解析処理で使う高度なセンサー処理を使っていて、そんなスマートデバイスを、「遊びのおもちゃに変えちゃいました!」「しかもウェアラブルで!」って説明すると、皆「ええー?!」「何、その発想?すごいね!」という反応に。『MoffBand』自体、子供の様々な動きに反応して、動きに合った音が出るというもの。言葉が通じなくても感覚的に面白いと評価されるんだと思います。

今から海外製品と同じ土俵で勝負していたらダメだと思うんですよね。そこはもう第一の波が終わっている。相当な蓄積もあってレベルも高いし。そこは違う分野を狙って土俵を大きく変える製品を打ち出す。その瞬間に「ジャパン、やっぱり凄いね!」みたいな独自のポジションで勝負できていると思っています。


― 最後に、もしこれからハードウェアスタートアップを立ち上げたいという方がいたら、どんなメッセージを送りますか?


まだ立ち上がったばかりなので、先に先に動いて成功した者が結果的にプラットフォームを握れるチャンスのある面白い分野だと思います。もちろん失敗もあるかもしれないけど可能性も大きいじゃないですか。ハードウェアスタートアップでは形あるリアルなモノを作ることに携わることができるので、「自分が作った」と実感できるモノを世の中に出せるという醍醐味がありますね。またスタートアップでは、大企業とは異なり、距離の遠い決裁者がいるわけではないし、お客さんが必要と思うモノをすぐに作ることができます。そして何より最先端の技術を込められる。これは楽しい。

今ならプレイヤーの数も少ないから、競合を意識してニッチに行かなければいけないとか、ちょっとだけ改良しようとか細かいことは考える必要はありません。これこそ自分が作りたい!ってモノを、ズバーンと作っちゃえばいいんです(笑)。


― ありがとうございました。日本でこれからハードウェアスタートアップが増え、世界に評価されるウェアラブルデバイスがどんどん生まれれば素晴らしいですね。


[取材・文]手塚伸弥




編集 = 手塚伸弥


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