大人顔負けのアプリを作った小学生プログラマ。彼らによる『Tech Kids School』発表会が10月25日に開催された。つくる楽しさや子どもらしい視点に溢れた素晴らしいアプリとプレゼンに会場からは拍手喝采!また、サイバーエージェント藤田晋氏とのトークセッション・質疑応答でも会場を大いに沸かせた。
サイバーエージェントグループ(CA Tech Kids)が実施している『Tech Kids School』という取り組みをご存知だろうか?子どもたちが楽しくアプリ開発を学べる小学生向けのプログラミング教育事業だ(CA Tech Kids代表上野氏へのインタビュー記事はコチラ)。
そんな『Tech Kids School』第一期奨学生4名による開発アプリの発表会が10月25日、AppleStore銀座にて開催された。小学生4名は半年間(約100時間)にわたってプログラミングを学習。とてもユニークな視点で大人顔負けのアプリを開発した。そのプレゼンの様子を書き起こし形式でお届けする。
発表されたアプリは全てAppStore、Webで公開されている。ぜひお手持ちの端末のDLしてみてはいかがだろうか。
皆さんは日記を書き続けられたことはありますか?私の場合は、いつも気合を入れても三日坊主になってしまいます。そこで私は一言日記アプリをつくりました。一言日記アプリは「日記を書くページ」「日記を見るページ」「日記の説明ページ」の大きく分けて3ページがあります。これを実際に動かした動画があるので見てください。
「心の一言日記とは?」というところを押すと日記の説明画面へいきます。「書く」を押すと日記を書くページにいきます。日付はその日の日付が自動的に出てきます。日記は50文字しか書けないように制限してあります。「今日の総合点数」では、一日の気持ちを点数で表すことができます。最後に「重要か、普通か」を決めることができます。
次に工夫した3つのポイントをご紹介します。
1つ目は0~100点までの得点を点けられるようにしたところです。2つ目は日記を50字文字しか書けないように制限したところです。こうすることによって日記をダラダラと書かずに済むと思ったからです。そして、3つ目は重要か普通かを決めることができます。なので、重要な日記と普通の日記をわけて見ることができます。
続いて苦労したところです。
今回苦労したのは「日記を見るページ」です。最初は「全部の日記を見る」と「重要な日記だけを見る」にプログラムにしようと思ったのですが、難しくてできなくて、結局「普通の日記を見る」と「重要な日記を見る」というプログラムになってしまいました。今後は今回できなかった部分をできるようにしたいです。
これはストーリーボートと言って画面の構成です。画面は全部で8ページあります。私は今このアプリを使って日記を書いています。私の「心の一言日記」はApp Storeからダウンロードできるので、みなさんもぜひアップロードして使ってみてください。
ありがとうございました。
『心の一言日記』http://itunes.apple.com/jp/app/id916451496
みなさんは宿題が好きでしたか?小学生もけっこう忙しい。僕は5年生ですが、学校から帰ると4時。そして小学生にとっての残業「宿題」が山ほど。友だちとオンラインゲームをしたい。時間がいくらあっても足りません。ダラダラ宿題をすると時間切れ!「ゲーム時間ナシ」なんていうことも。ゲームが出来ないなんて僕にとってこんなにツライことはありません。
そこで僕が考えたのが、設定した目標時間より早く宿題を終わらせたら、その分だけ賞金がもらえるアプリです。賞金をもらうためにテキパキ宿題を終わらせて、思う存分ゲームができるんじゃないかと考えました。それが…ぼくのつくった『Time is MONEY』です。
アプリの紹介をしたいと思います。「使い方」は子ども向けの説明が書いてあります。保護者の方へは「保護者用の説明」があります。スタートボタンを押して、パスワードを入力。目標タイムを設定します。今日の宿題の目標タイムは…20分。宿題スタートです。さぁ僕は目標タイムより早く宿題が終わるのか?
ダラダラやってしまった失敗例を紹介します。
残り1分、急がなきゃ。あーどうしよう!どうしよう!どうしよう!…終わらなかった。この場合、賞金はナシです。
次はテキパキ終わった成功例をご紹介します。
あと5分…終わった!お母さんは「よくがんばったね」といって僕に200円の賞金をくれました。
このアプリのシステムを紹介したいと思います。パスワード設定、タイマー設定、賞金設定とこのアプリにはアプリを終了しても、データが残るコードを使っています。
このアプリがあれば、ダラダラしないから集中力アップ!学力もアップ!そしてグングン成績もアップします。素晴らしいですね。なにより…がんばった分だけ大好きなゲームができる。プラスおまけ。お小遣いの交渉で親子のコミュニケーション能力がアップします。しかも、ママは宿題をするぼくにイライラしなくなる。つまり『Time is MONEY』はみんなをハッピーにするアプリなのです。
時は金なり。
ありがとうございました。
『Time is MONEY』http://itunes.apple.com/jp/app/id916087037
これから私がつくった『元素図鑑』というアプリについて説明します。そもそも元素ってどんなものでしょうか。たとえば、プログラミングに使うパソコン、本体はアルミニウムという元素が主成分です。今年50周年を迎えた新幹線。時速500キロを出し、東京と名古屋を40分で結ぶリニア新幹線も動かす、超伝導磁石はニオブとチタンの合金です。
小惑星探査機「はやぶさ」のイオンエンジンの燃焼はキセノンでした。このように宇宙に存在する物質は全て元素で出来ています。私は理科の先生から教えてもらった元素をもっと知りたいと思って、このアプリをつくりました。
元素図鑑は、元素の特性をわかりやすく解説した化学の勉強アプリです。元素周期表では元素記号をタップすると解説画面になります。上に原子番号と元素名、下に解説、右に用途がわかる「ゆるキャラ」が表示され、ひとめで元素の特性がわかります。また、矢印の再生ボタンを押すと、私が録音した英語音声を聞くこともできます。
また、2種類のゲームがあります。これは周期表をつかった元素パズルです。すべての元素を当てるノーマルモードと、基本的な元素を当てるイージーモードがあります。イージーモードでは21番以降の部分は色を薄くしています。
そしてこれは制限時間のなかで表示された元素の位置をあてる「元素かるた」です。このようにゲーム感覚で、化学で大切な元素の位置を覚えることができます。
プログラミングではメモリを使い過ぎないように解説画面を一つにして、元素によって送るデータを指定し、中身を変えています。イラストやサウンドも配列で指定しています。元素パズルでは、構文をつかい、問題を繰り返し出題しています。
一番がんばったのは、タッチイベントをつかって、指の動きにアイコンがついてくるようにしたところです。押した時、動いている途中、動き終わった時の3つのメソッドを使っています。
今回、元素図鑑をつくってみてわかったことがあります。この緑で囲んだ元素は古代から人間が知っていたもので、発見者は不明です。20世紀の中頃まではほとんどの元素はヨーロッパ人によって発見されています。1940年以降はアメリカ人によって発見されています。このように元素の発見者にはかなり偏りがあるのです。そして、2004年に第113番元素だけが日本の理科化学研究所で発見されました。
この元素はまだ確認待ちで仮の名前になっています。私のアプリでもまだ卵から富士山が生れようとしているイラストです。日本の発見が認定され、「ニッポニウム」という名前になったら富士山に日本の旗をたてたいと思います。
どうもありがとうございました。
『元素図鑑』http://itunes.apple.com/jp/app/id916072956
こんにちは。今回ぼくはiPhoneアプリではなく、WEBアプリというものを開発しました。
ところでみなさん海外旅行は好きですか?海外旅行の最大の楽しみはやはり買い物ですよね。でも…ぼくの最大の悩みは「お母さんの買い物が長ーい!」ということです。
海外での買い物にはいろいろな悩みがあります。為替、税金、為替レート、正確な円貨がわからない、何を買ったのか覚えていない、どのくらい買ったのかわからない、買うべきか判断に迷ってしまう…
そこで今回ぼくが開発したのは、海外でのお買い物の悩みを解消する『Wallet Manager』です。『Wallet Manager』の主な機能を紹介しましょう。
1.為替、税金、為替レートを換算した正確な円貨を表示します。26カ国の海外旅行に対応します。
2.日付順に商品情報と日本円価格を一覧表示します。
3.カテゴリー別に購入計画の合計額を棒グラフで表示します。
4.予算内の残金をシミュレーション表示します。
5.Googleで商品情報や類似商品、他店価格などを検索します。
6.残金がマイナスになると予算オーバーを赤文字で警告します。
これで海外旅行に行った時、ホテルでひたすら電卓を叩いているお母さんとはおさらばです!『Wallet Manager』は海外旅行のお買い物に必要な機能がすべて入っています。海外旅行の買い物が楽しくなることは、うけ合いです。
開発で苦労したところは、Yahoo!のAPIから為替データを自動でとってくるところでした。今後については、人口知能とITを融合させたロボットの開発などをしてみたいです。
『Wallet Manager』はサイバーエージェントのホームページ公開されていますので、ぜひ使ってみてください。これで僕のプレゼンテーションを終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。
『Wallet Manager』http://www.cyberagent.co.jp/special/techkids/wallet_manager/
※プレゼン後に行われたトークセッションの様子をお届けします。
― まず藤田社長、感想としてはいかがでしたか?
藤田氏:
最初は日記や宿題とかで小学生らしいと安心して見ていたんですけど、最後は業務用みたいな感じですごく面白かったですね。まずみんなプレゼンが上手ですよね。これが小学生が作ったのかというものばかりで本当に驚きました。
― 配列をつかったり、APIを引っ張ってきたり、技術的にもすごいですよね。
藤田氏:
もうウチで働けるんじゃないかと思いました(笑)
― 続いて作るのにどのくらい時間がかかったか聞いていきたいのですが、トモミさんはどうですか?
トモミさん:
毎日やって1日2時間くらいやっていました。
― カエデさんは構文や配列など使ったそうですが、難しくなかったですか?学校で習ったりはしてないのでは?
カエデさん:
小学校では習っていないけど、スクールで習ったことを応用しました。教科書とかをいろいろみながらやりました。
藤田氏:
『元素図鑑』は本当にすごい完成度でしたね。“元素界”では一番いいアプリなんじゃないですか?他にもっといいアプリってあるんですか?
カエデさん:
App Storeにあるんですけど、ゲームのやつと、1400円のアプリケーションがいくつかあって。同じくらいの完成度を目指しました。
― シンノスケくんは、お母さんとの日々の攻防戦を想像させるアプリでしたが、実際にアプリをつかって勉強はしていますか?
それでもやっぱりバトルはおきています。タイマーを設定していても「今日は賞金いらないからゆっくりやろう」とか。お母さんにその戦略を読まれていたり。
― そういったところに対応する新機能などは考えているのでしょうか?
いま保護者メニューから賞金や制限時間を決めたりできるのですが、じつはパスワードを変更することができないんです。だから、子どもにパスワードがわかってしまうと、勝手に賞金を増やしたり、「30分で終わるでしょ」と言われていたのに、勝手に延長して59分にしてしまったり。
― なるほど、今後はお母さんにとって使いやすい機能を…というところですね。
※続いて質疑応答のコーナー。同じ会場にいた小学生からも質問が飛び出して会場は盛り上がった。
― (会場の小学生から質問)半年やったらどこをどうすればどうなるって覚えてしまうんですか?
トモミさん:
だいたいわかるんですけど、時々忘れちゃったりとか似たようなものが出てくるので、やっぱり覚えなおしたりとかは必要だと思います。
シンノスケくん:
たまに学校の行事とかがあって、1週間行かないだけで基本を忘れたりするので、みんなとやっていても「アレ?」みたいなことはあります。
― プログラミングをやっていてどうしても出来ないということはありますか?それを乗り越えるためにどうしていますか?
カエデさん:
家でどうしても解決できないエラーとか警告があるときは、1週間まってメンター(先生)に相談したり、あとはできるだけ基本・応用を忘れないようにメモ帳にプログラムをメモしたりしています。
トモタカくん:
僕のお父さんとお母さんは超がつくほどITのド素人で、プログラミングをきける環境ではないんです。だから、メンター(先生)に聞くのとよく起こる定番エラーってあるからインターネットでエラーを解決する方法を調べたりしています。
― (会場の小学生から質問)自分でもびっくりしたことってあります?
トモミさん:
めったにないですけど、できて嬉しかったことはあって。自分の成長にびっくりしたのかも…いま思うとあります。
― 何か他に習い事はしていますか?
シンノスケくん:
レゴスクールに通っています。マインドストームやEV3っていうモーターやセンサーをレゴにつけて、それをプログラミングしてロボットにしたり。ロボカップというのがあって、レゴスクールの子たちは出ています。ロボットも「動いた!」という時は楽しいですが、一番楽しいのは自分が大好きなゲームを自分でつくれるほうです。
― はじめてプログラミングに興味を持ったのはいつですか?また、そのきっかけとスクールに入ろうと思った理由もあれば教えてください。
カエデさん:
私は新しい言葉を学ぶのが好きで、ピアノをはじめたきっかけも譜面を読みたくなかったからなんです。きっかけはそれと同じです。小学校4年生の時に興味を持って、お父さんが体験会をススメてくれてやってみたらすごい楽しくて始めました。
トモミさん:
三年生の夏休みの自由研究で、お父さんと一緒にScratch(※マサチューセッツ工科大学で作られた子どもが学べるプログラム言語)でブロック崩しというゲームをつくったのがきかっけです。体験会に誘ってくれて始めました。
― (藤田氏より)『Tech Kids School』に通った感想をぜひ。不満でもいいですよ(笑)
シンノスケくん:
えーっと…不満はないです(笑)。いいところはすごいメンター(先生)がやさしいところ。「全然知らないじゃん」っていう人がいなくて、わからないって言ったら3秒くらいでコードを書く。恐ろしいです、本当に。そういう人たちに教えてもらえているから作れたのかな、という気がします。
― プログラミングができるようになったことで、勉強だったり、友だちとも関係、将来の夢が広がった、自分のなかで変わったと思うことはありますか?
シンノスケくん:
学校の朝の会で一分間スピーチがあって、一日に3人が担当するんですけど、「プログラミングでこんなのを作ったよ」って言うとすごい!ってなることはあります。
カエデさん:
算数のノートの式の書き方がすごく上手だと先生に褒めてもらえるようになりました。桁数やイコールを揃えて書くから…。プログラミングではキレイに書かないとどこに何を書いたがまったくわからなくなる。エラーが入っている箇所がわからなくなってしまう。解決に時間がかかっちゃうので、わかりやすくコードを書くことをがんばっています。
― シンノスケくんがゲームを自分でつくりたいと思う理由はなんでしょうか?
シンノスケくん:
ゲームだと勝てないところが出てきて。やれることがないかと探していたらプログラミングがあって。Scratchとか簡単なのからやっていると「このゲームはこういう仕組みで動いているんだ」とわかるところもあります。こうやったら倒せるかなとか攻略法が頭に浮かんだりするので、プログラミングもゲームも両方大切だと思います。
― プログラミングのおもしろいところは?
シンノスケくん:
がんばれば、とにかくなんでも作れちゃうところが、おもしろいと思います。
トモタカくん:
一緒なんですけど、自分が思ったアイデアを実現できるのは、プログラミングだけなので素晴らしいと思います。
― みなさんの将来の夢、やってみたいことを教えてください。
トモタカくん:
最新のテクノロジーをつかって革新したい。よい社会をつくることに貢献したいです。
トモミさん:
2020年のオリンピックに役立つようなアプリがつくりたいです。
カエデさん:
プログラミングのコンテストがあって、この前もU22プログラミングコンテスト、アプリ甲子園とかやったんですけど、他の人のアプリケーションって面白いし、アイデアもすごく良くて。やっている人の意見を参考にしながら、新しいアプリをつくっていきたいです。
シンノスケくん:
宇宙が大好きで、宇宙飛行士になりたいんですけど、得意分野がないとなれないんです。医師とか、研究する人とか、ぼくは宇宙で動かすロボットをプログラミングしたい。宇宙飛行士のロボットエンジニアになりたいです。
終始、和やかな雰囲気で進んだ発表会。子どもたちもそれほど緊張した様子はなく、のびのびと発言していたことがとても印象的だった。大人になってしまうと「これが動いたら凄い」「つくるって楽しい」と純粋に感じられる機会はどうしても少なくなってしまう。そういった意味でも子どもたちの発表からは「ものづくりの喜び」がストレートに伝ってきて、刺激をもらうことができた。
また、『Tech Kids School』の今後について藤田氏は「このコンセプトで規模を拡大させたい。もともとは社会貢献を考えていたが、有名な経営者のお子さんも通ってくれるなど良いと思ってくれている人が増えた実感がある」と語っていた。『Tech Kids School』を運営するCA Tech Kids代表の上野氏は「今後は民間だけでなく、ここで培ったノウハウを公教育に活かしていけるよう働きかけたい」と語ってくれた。まだまだ日本のIT教育は進んでいるとは言いがたい。そんな中でも『Tech Kids School』の取り組みは、子どもたちが楽しそうに語る姿からも、これからの大きな可能性を感じることができた。
[取材]白石勝也
編集 = 白石勝也
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