2012.09.28
《世界一の朝食》を仕掛けた男・中村貞裕に学ぶ、“流行”の作り方。[前編]

《世界一の朝食》を仕掛けた男・中村貞裕に学ぶ、“流行”の作り方。[前編]

“世界一の朝食”で話題のカジュアルダイニング《bills》。行列の絶えないこの店を日本で仕掛けたのがプロデュース集団『TRANSIT GENERAL OFFICE』だ。今回は代表の中村貞裕さんを直撃。手がけるスポット全てをブームに仕立てている彼に“流行”の作り方を聞いた。

話題のスポットを立て続けに仕掛ける、知る人ぞ知るプロデューサー。

冒頭にあげた《bills》をはじめ、デザインホテルの先駆け《CLASKA》、《渋谷ヒカリエ》のレストラン《シアターテーブル》、《東急プラザ 表参道原宿》のカフェ《オモハラ カフェ》スペースなど、話題のスポットを生み出し続ける『TRANSIT GENERAL OFFICE』。プロデュースという黒子の役割を担っているため表舞台に出ることは少ないものの、業界内ではその実績と手腕は広く知れ渡っている。

いかにして多くの人々の目を惹き、いかにして流行を生み出すか。あらゆるビジネスに通じる“ブームの作り方”を探るべく、TRANSIT GENERAL OFFICE 代表の中村貞裕さんにお話を伺った。


中村さん01


流行は作るものではなく、見つけるものである。

― 中村さんの実績を見ると、まさに“流行を作る”ことを生業にされているんだと感じます。今日はその秘訣を探れればと思うのですが…?


ありがとうございます。でも、実は僕自身にトレンドを作っているという意識はあんまりなくて。むしろ、流行りそうなものを見つけて大きくしていると言ったほうが近いかもしれない。

そもそも今の世の中、“0”を“1”にするってものすごく難しい。発明ですから。よっぽどのスペシャリストでもない限りそんなことできませんよ。“0”を“1”にしようって意気込むと、ものすごいストレスで全く前に進まないです。

でも“1”を見つけるのは、僕にとってはすごく簡単なことで。だから「“1”を見つけて、それを“10”にする」という発想でやるようにしているんです。

それでも、結果的に“0”を“1”にしているように見てもらえるんですよ。僕らよく“カフェブームの立役者”って紹介されたりするんですけど、それも実際のところは少し違っていて。もともとは山本宇一さんがまず《BOWERY KITCHEN》っていうカフェを出して、僕らはそれを見て「カフェっていいな」ってすぐ飛びついただけなんです。決して1番目じゃないといけないわけじゃなくて、2~3番目でもやり方によっては“立役者”と言われるようになれる。それはやる人自身が決めることじゃなくて、世の中の人たちが後から決めることなんですね。

そしてもう一つ、海外では当たり前になっていることでも、日本に持ってきて流行らせたら“トレンドを生み出した”ことになる。

だから僕らは、あくまで東京で流行る“1”を探す旅をしているだけ。そして自分の中で「イケる」と思える“1”を見つけたら、あとはそれをいかに大きくしていくか。それだけなんです。

「ジェネラリスト的インプット」で、流行のタネを見つける。

― では、その“1”を見つけるための方法は?


中村さん03

あくまで僕のやり方ですけど、とにかく「ジェネラリスト的にインプットすること」だと思いますね。

例えば僕がどこかに隔離されていて、一ヶ月前に日本に戻ってきたとする。そこで1日くらい本屋さんで立ち読みさせてくれたら、片っ端から100冊くらい雑誌を読んで、いま何が流行っているのか大体つかめると思う。

誰だって一日中テレビを見て、日本で出ている全雑誌・全新聞を眺めれば、少なくともいま何が話題になっているのか分かるでしょう?「いま領土問題がタイヘンだぞ」くらいは十分つかめるはず。

それって「みんなが取り上げている」から確信できるわけですよね。どこか1紙にしか出ていなければ疑問だけど、ほとんどの新聞に出ているニュースだったら、「それが日本の話題なんだ」と分かる。

僕はそのアンテナの範囲をもっと広げて“トレンド”を探しているだけ。感覚的にはホットなニュースを探しているのと一緒です。普通の人は探そうとしてないから流行ったあとに気づくんだけど、僕はものすごく意識して、真剣にインプットしているから人より一歩先に見つけることができる。

僕にとっての真剣勝負は「インプットの瞬間」です。海外旅行に行ったり、いろんな人としゃべったり、立ち読みしたり。とにかくインプットはものすごく真剣にやります。逆に、アウトプットしているときが最も気楽ですね。一番リラックスして楽しめる。


― そこでキャッチアップするのは、「いま流行っているもの」なんでしょうか?


いや、「いま“流行りそうな”キーワード」ですね。それはもう幅広く、いろんな情報を入れていけば感覚的に掴めてくるもので。

雑誌だったら、アグレッシブな雑誌もフォロワー的な雑誌も決め打ちせずにすべて読む。いろんな人と会って、いろんなものを見て、いろんな場所に出かけて、いろんな国に行って。あとはもう、それをどこまでやれるか。100個を1000個に増やせばそれだけ精度は高まるし。

だから結構疲れますよ。僕は仕事だからやってるけど、それが苦になるっていう人には向いてないやり方かもしれません。ただ“慣れ”の部分もあると思いますけどね。筋トレって最初は正しいやり方も分からないし、効果もすぐには出ないし、なかなか続かないじゃないですか。でも慣れてくればわりと普通に続けていける。それと一緒です。


― ご自身の著書『中村貞裕式 ミーハー仕事術』でも、スペシャリストにはない、ジェネラリストならではの強みについて書かれていました。


スペシャリストが1つのことについて100知っている人だとすると、僕は1つのことについて1しか知らない。それがずっとコンプレックスだったんだけど、でもたとえ1しか知らないことでも、それが100個集まったら、“1×100=100×1”で対等に戦えるじゃないか、と。そう気づいてから、広く浅くいろんなことを知ってるミーハーとして生きる道もあるんだ、と思えるようになった。

スペシャリストは確かにすごいですけど、でも情報や知識に偏りがあるから、これから何が流行りそうかを掴むのは難しい。でも僕のようなジェネラリストは偏りなくいろんなものに触れているから、最大公約数的に何が流行りそうかを導き出すことができる。それがジェネラリストの強みだと思います。流行とかトレンドというものに関して言えば、情報や知識はたくさんあればあるほど導きやすいですから。


(後編につづく)

[後編]はこちら

TRANSIT GENERAL OFFICE 公式サイトはこちら

中村さんの著書『中村貞裕式 ミーハー仕事術』はこちら

関連記事

特集記事

リーダーたちの
迷いと決断

経営者たちの「現在に至るまでの困難=ハードシングス」をテーマにした連載特集。HARD THINGS STORY(リーダーたちの迷いと決断)と題し、経営者たちが経験したさまざまな壁、困難、そして試練に迫ります。

ぼくらの新人時代

「新人時代をどう過ごしていましたか?」テック業界の先パイたちに、こんな質問を投げかけてみる特集企画です。知識もスキルも経験も、なにもない新人時代。彼ら、彼女らは”何者でもない自分”とどう向き合い、どんなスタンスで学んできたのか。そこには「ぼくら」にとって重要な学びが詰まっていたーー。

イノベーターたちの「習慣」と「実践」

『7HACKS』は世の中を沸かし、仕掛けつづけるイノベーターたちの「習慣」と「実践」に迫るキャリアハックの特集です。イノベーターたちの知られざる日々の習慣から、読書法、自らに課したマイルール、ライフハック、仕事に対する考え方まで、幅広くご紹介。明日からの仕事への活力が湧いてくる、そんなコトバと共にお届けします。

お問い合わせ
取材のご依頼やサイトに関する
お問い合わせはこちらから