まだまだ女性開発者の割合が少ないプログラミングの世界。「もっと気軽に学べる場所がほしい」という人も多いはず。そんな中、じげんで定期的に開催されている『Swift Girls』という勉強会に注目した。その狙いや成果とは?主催者であるじげんのエンジニア具志堅雅さんと、参加者である竹村恵美さんに伺った。
■具志堅雅(Masaru Gushiken)
じげん エンジニアユニット在籍。『Swift Girls』主催。SIerでのエンジニア経験を経て、Webエンジニアに転身。ハッカソンや勉強会などへも積極的に参加。第1回アフィリエイトソン(楽天・ヤフー・リクルート共催】にて最優秀賞を受賞した。
■竹村恵美(Megumi Takemura)
1991年生まれ。サイバーエージェント、ログバーなどでインターンを経験。Uberにてアンバサダーを担当。2015年1月現在、学生起業家としてサロンモデル検索『Coupe』代表兼プログラマとして活躍中。第一回『Swift Girls』に参加した。
― まずは『Swift Girls』がスタートした経緯から伺ってもよろしいでしょうか?
具志堅:
じげんのエンジニアたちはよく勉強会に参加するんですけど、「女性が参加している勉強会って少ないよね」とランチの時に話をしていました。実際、女性のエンジニアやデザイナーに話を聞いてみたら、「勉強したいけど、参加しづらい」という声が多かったんです。そういう人たちに向けてやりたいと思ったし、自分たちが学んだことをアウトプットするいい機会にもなると思いました。
むずかしい話をするのではなくて、自分たちでつくってみて動かすとか、サンプルコードがあって勉強会が終わったあとも使えるとか。少しずつコンセプトが決まっていきました。実際、『Swift Girls』を開催する前に、自社でリハーサル的に勉強会をやってみて女性社員から「今の説明は速すぎてよく分からないとか」「こういうのがあったら良いよね」と、ヒアリングしながらカタチにしていきました。
― そもそも、なぜ、プログラミングの勉強会は女性が参加しづらいのでしょうか?
具志堅:
女性のプログラミング人口が少ないというのもありますが、エンジニア独特の気質も関係しているのかもしれません。どんなプログラミングでも、「だいたいここまで覚えているべき」「ここまでやれて当然」みたいな暗黙のハードルみたいなものはありますよね。初歩を知らなかったら「Googleで検索するなど自分で基礎を身につけてから参加するべき」みたいになってしまう。そんな場所に、プログラミング初心者の女性が一人で乗り込むって結構厳しいですよね。
どんな人でも「何をググればいいかさえわからない」というレベルからのスタート。自分で解決できなくて悶々としている人ってたくさんいて。だったら、ハードルを下げて一緒に解決していこうというスタンスでやろうというのが近いかもしれないですね。
竹村:
私自身、いくつかプログラミングの勉強会に行ったことがあるんですが、やっぱり女子ってほとんどいなくて…いたとしても理系。私は超文系で。そういった意味で『Swift Girls』はかなりポップというか。「とりあえず来てみた」が許される雰囲気で。ケーキ食べながら開発とか(笑)そういうのも女性の心をくすぐりますよね。楽しいし、好きですもんね。
具志堅:
新宿が近いので、デパ地下で割とおいしいケーキを選んだんですよね。それも僕らのような男性が決めても、だいたいヘンテコなやつになっちゃうので、女性メンバーにおすすめのスイーツを聞いて決めました(笑)「デザート、良かったよね」という感想でもいいから、とりあえず参加してほしいと思っていました。
― 女性が気軽に参加できるプログラミングの勉強会は少ないんですか?
竹村:
最近だと勉強会は少しずつ増えているイメージはありますね。「プログラミングを学ぶ」ってイケている習い事みたいになってきたのかな。ただ、私はいま学生ですけど、フツーに大学生活を楽しんで就活して…という女の子だとプログラミングを勉強しようという子はあまりいないですよね。
フランス文学科で9割くらいが女子で、就職先とかって金融とかサービスとかが多いんです。そもそもインターネット業界というのが入っていない。さらにエンジニアとなると違う世界の話みたいな感じ。
学生の友だちと進路の話になって、私は「エンジニアがいいじゃん」とか言うんですけど…「えー、私はショップ店員でいいよ」っていう反応だったり。そのあたり、イメージを変えられたらいいなって思いますね。女子にとってもプログラミングってすごくいいスキルですよね。家でシゴトができたり、手に職がついていけば企業に入ったあともフリーになれたり。
― 竹村さん自身だと、『Swift Girls』で一番ここが勉強になったというのはどういうところですか?
竹村:
「ひとつのアプリが出来るにはこういう手順を踏むんだ」という一連の流れが学べたのが良かったです。プログラミングの講座って「いま、自分が何をやっているのか分からない状態」ってすごく多いんですよね。先生がつないだプロジェクターでコードを見ながら「こういう風にやってください」って真似して、「はい、動きました」みたいな…で、今のは何だったのだろうと(笑)
『Swift Girls』だと流れに沿った説明資料がちゃんとあって、それに沿っていけばできるし、後から見返してもわかりやすくて。もっとSwiftをやりたいなという気持ちになりましたね。
私は自分でも『Coupe』というサービスを運営してて、アプリもSwiftで開発中です。もともと私自身、PHPは少し触ったことがあったので、自分で勉強して…と思っていたのですが、Swiftを勉強してみて、「これを全部自分でやるとなると1年とか掛かっちゃうな」って『Swift Girls』に参加してみて分かりました。だったら、受託でつくろうというのを決めることもできて。
エンジニアの方に協力してもらうにしても、Swiftでつくっているということで興味を持ってもらえることもありますよね。何より私自身もプログラミングのスキルをアップさせたいと思った時、ちゃんとSwiftができるようになっていたかったんです。
― 主催者の側としては、Swiftに注目したのは、どういった背景があったのでしょうか?
具志堅:
僕自身の体験もあるのですが、もともとRailsをメインにやっていたWEBエンジニアで。全社的にiOSアプリの開発を強化していくことが決定したのですが、Objective-Cからやろうとすると、知識のキャッチアップが上手くいかなかったんです。書き方が独特というのもあって、ソースコードがめちゃくちゃ多くなったり、管理が大変だったり。そんな時にタイミング良くSwiftが出てきて、触ってみるとすごく使いやすい。
もちろん話題になったというのもあるんですけど、自分たちも勉強していて伝えやすくて、勉強したい人も多かったから、Swiftがベストだったという感じですね。
― 具志堅さんに伺いたいのですが、自分たちで主催して得られこととは?
具志堅:
もともとじげんでは手を挙げたエンジニア全員(エンジニアの7割)が、Swiftの勉強に自主的に着手していたのですが、『Swift Girls』を開催していくことで、自分たちの理解度を知るいい軸になっていきました。中途半端に分かっている状態だと、うまく説明ができないんですよ。当然、相手もよくわからない。どのくらい伝わっているか?伝えられるか?ここは自分たちがどれくらい理解しているか?というところの裏返しでもあるんですよね。
で、実際に事業でも『アルバイトEX』というアルバイト検索アプリをSwiftで開発をして。僕がいるチームで開発を担当したのですが、『Swift Girls』と並行させながら、約1ヶ月半という短期間でアプリをリリースできました。
多分、開発だけに専念したら、勉強の機会が減っていたと思います。『Swift Girls』でインプットとアウトプットを繰り返し、理解度を深めていく工程があったからこそ、チーム一丸となって、これほどスピーディーにリリースが出来たのではないかと。
具体的には、『Swift Girls』をやっているとX-codeの使い方など初心者が躓くところがわかるんですよね。そうすると、同じようなミスを事前に共有しておいて防ぐことができる。
社内的にも「Swiftで新しいことにチャレンジしている」ということで、ただ「アプリを開発している」というよりも、非制作職を含む全社にエンジニアの存在感を発揮することができていたのではないかと思います。
― 社内外でエンジニアの存在感を発揮する、そのためにも「勉強会を主催する」ということが機能しているということですね。『Swift Girls』は継続的に開催されているということで、これからの展開も楽しみにしています!本日はありがとうございました。
[取材・文]白石勝也
編集 = 白石勝也
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