岡山に拠点を置く、クリエイティブ・カンパニー『ココノヱ』。子ども向けのインスタレーションを得意とし、クライアントはなんと9割が東京。さらには経産省 Innovative Technologiesをはじめ国内外の数多くの賞を受賞している。彼らの作品が多くの人の心を掴む理由に迫った。
岡山県にとてもユニークなクリエイティブ・カンパニーがある。Web制作だけでなく、子ども向けのインスタレーション、ゲーム制作を得意としている『ココノヱ』だ。
最近では、グリコと一緒に小学生向けのプログラミング学習アプリ『GLICODE』を制作。広告代理店やその他プロダクションなど多くの人たちが関わるなか、ココノヱはUXとデザインを担当した。
2011年に制作した『撃墜王』は、文化庁メディア芸術祭、FITC Awardなど国内外の賞を数多く受賞。自社プロダクトの制作にもチカラを注ぎ、子どもから大人まで多くの人たちの心を掴んでいる。
2016年に10周年を迎えた『ココノヱ』。彼らのクライアントは、なんと9割が東京の企業。信頼を重ね、選ばれる存在となっている。10年間を振り返り、代表の宗佳広さんはこう語った。
“最初の2年間は仕事がなくて、自分たちの貯金を削りながらやっていました。岡山のショッピングセンターから大手メーカーのコンペまで...、コツコツ妥協せずに積み重ねてきただけなんです。”
彼らはなぜ多くの人たちの心を掴むのか? その裏側にあったのは、一つ一つの仕事と丁寧に向き合う姿勢と、自分たちのものづくりを追求するこだわり。『ココノヱ』のものづくりに向き合う姿勢から、クリエイターにとってこれからの働き方を考えるヒントが見えてきた。
― ココノヱの作品は、子どもから大人まで一緒になって楽しんでいる印象があります。アイデアはいつもどんなふうに考えているんですか?
エンジニアもデザイナーも交えて全員でブレストしています。みんなでアイデアを出したほうが、それぞれそのプロダクトやサービスに責任を持てると思うんです。これは自分の作品だ、という意識が出てくるので、力の入れようも変わってくる。
ただ、社内で結構揉めますけどね(笑)
たとえば、dotFes2016で今回展示した『ピーポーパニック!』では、メインビジュアルとなる街並みを対戦中に固定するのか、じんわり動かすのか、どっちにするのかかなり揉めました。
いまだ正解は出ていないのですが、ディスカッションするときに単純に『こうしたい』という主観ではなく、『どうしてそう思うのか?』までとことん話して、メンバー同士考えをクリアにするのを大事にしています。
小さな対話を重ねて、みんなで納得して進めていくことが、最終的にいいアウトプットにつながると思うんです。
まだまだ僕らも試行錯誤している最中なんですけど、今回のピーポーパニックもたくさん改善点があって。子どもたちがどんな反応をしていたか、携帯ですぐメモを取るようにしています。それぞれが気づいたことを持ち帰り、後でみんなで反省会するためです。良いところも悪いところも全部含めて小さな気づきを全員で共有しています。
― 最近だと、地方移住やリモートワークが注目されていますが、メンバーの方々で移住されてきた方も多いんですか?
そうですね、最近入ったメンバーはほとんどが他の地域の出身です。去年入ったスタッフは韓国、その前のメンバーが仙台ですね。dotfesなどイベントに出展したときに、うちに興味をもってくれて採用するケースもあります。
― どういった基準でメンバーを採用されているのでしょう?
メンバーの共通点に、”気が利く”、”気配りができる”、というのがあるかもしれません。デザインにおいても、プログラミングでもそうですけど、仕事において「抜け」をつくらない。
たとえば、プログラムだったら「まさかこういう処理をユーザーはしてこないだろう」っていうところを、しっかりと対策をしてるとか、デザインだったら1ピクセル、2ピクセルずれてなくセンタリングしてるとか。仕事に限らず、普段の生活のところでもちょっとした気の利き方ができるかは、すごく大事なところだなと思っています。
― ”気が利くか”。仕事をする上での基本となることだけど、なかなか難しいことですよね。
そうですね。でもとても大切なこと。いま面白い仕事をさせていただけているのは、これまでの仕事を一つ一つ、そういう地道な積み重ねがあってこそだと思います。現在はありがたいことに、クライアントの9割が東京になって、dotFesなど規模の大きいイベントにもお声がけいただくようになりました。
― クライアントの9割が東京とは驚きです。岡山で会社を立ち上げられた当初から、東京とのパイプがあったんですか?
いえいえ、全くなかったです。最初2年間は仕事さえなくて・・・もう貯金を削っていくような感じでした。なので、まずは営業ツールとして自分たちのサイト作ってアピールしていたら、一つ、二つ、問い合わせいただくようになって。岡山のショッピングセンターから大手メーカーのコンペまでお話をいただくようになりました。
強いていうなら「もう一重ね」すること、ここにこだわって続けていて。スタッフの仕事を確認するときに「いや、まだもうちょっとやりようがある」とか、「もうちょっとクオリティを上げれる。もう1回考えよう」とよく伝えています。
最後の最後にもうひとひねり、もうひと工夫できないか。その積み重ねで、代理店さんやクライアントに信頼をいただいて、少しずつ少しずつ仕事が広がってきたのだと思います。
― 最後に、仕事と向き合うときに大切にしていることについて教えてください。
仕事のクオリティを担保していくには、自分を大切にする働き方をすることがとても大事だと考えています。
この仕事ってどうしても〆切がありますし、クライアントもいるので、正直体力勝負の働き方をしてしまいがちなんですよね。もちろん忙しい時期もあります。
でも、体が資本ですし、家族とかそういった部分も含めて、自分を大切にしたほうがいい仕事ができると思うんです。この業界ではけっこう、ないがしろにされている部分ではあるんですけど、人間らしく仕事をしていきたいですね。その方が、ちゃんと仕事とも丁寧に向き合っていけると思うんです。
― 人間らしく働いて、丁寧に仕事に向き合う。クリエイターにとっても大事な視点ですね。本日はありがとうございました!
文 = 野村愛
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