木製ピースがぴったり合うと「おばけ」の目が光る!大人も子どもも楽しめる不思議で、かわいい《おばけパズル》。動画は6,000RT超(11万回再生)。瞬く間に話題になった、このインタラクティブなパズルだが、じつは本業を持ちながら、サイドプロジェクト・チームによってつくられた!? その誕生秘話に迫ります。
やわらかな曲線を描く木製のパズルは、ピースがハマると「おばけ」の目が光る。
たったの11ピース。一見するとカンタンにできそうだが、そうもいかない。大人でも完成するのに20分以上かかる人も。やってみると湧き上がる不思議なわくわく感。
これが最新のおばけパズルだよ!https://t.co/FkY7XDYv5z #obakepuzzle #haloween pic.twitter.com/cMyN9A8W5p
— おばけパズル-ハガキサイズは発売中だよ! (@obakepuzzle) 2016年10月29日
とっても不思議な《おばけパズル》は、SNS上で瞬く間に話題に。11万回を超える再生には「かわいい」「ほしい」「どう動いているんだろう?」という声が集まった。
そんな驚きを生み出した《おばけパズル》。じつは大手メーカーに勤めるエンジニアとデザイナー3人組によるサイドプロジェクトだ。プライベートな時間をつかって、本気でものづくりに打ち込んでいる。
パラレルキャリアやマイプロジェクトをやってみている人も増えてきた。ただ、時間、コスト、なによりちゃんとアウトプットし、話題になるようなものづくりは、簡単ではない。
彼らはどうして、オリジナリティのあるプロダクトをつくることができたのか? それぞれ限られたプライベートな時間の中で、ものづくりに注ぐ情熱とは何なのか?おばけパズルの井上さん、堀内さん、山田さんにお話を伺った。
― 本業では電機メーカーのプロダクト開発に関わられていると伺いました。パズルってまた少しジャンルが違うような気がします。どんな経緯で活動をスタートしたんですか?
井上:
きっかけは、僕の小さな思いつきでした。当時3歳の娘がおばけの形に紙を切って遊んでいるのを見て、頭の中に、「難易度の高いおばけのパズル」のアイデアが浮かんだんです。
井上:
すぐに、アイデアを紙の切れ端にスケッチして、自分のiphoneケースの裏に入れて持ち歩いていたんです。言葉のとおり、ずっと温めていて。いつかつくろうという気持ちがありました。山田に声を掛けたのはその1年後くらいです。
山田:
はい、井上からメールで連絡がありました。「いっしょにパズルをつくらないか」って...。なんとプレゼン資料まで用意して説明してくれて。まずその熱意に驚きました。
そして、その資料の一番最後のページに書かれていた「おばけの目が光る」というアイデアを見た時に「これは面白いものができそう!」と魅力を感じて、一緒に作ることを決めました。
「おばけ」の目が光るって、まるで絵本に出てきそうじゃないですか。コンセプトが明快で、デザインから自然とストーリーが思い浮かぶプロダクトは、作る側も使う側もワクワクするようなものになると思うんです。
堀内:
僕も同じように井上に声を掛けられて。アイデアもそうですが、エンジニアなので「木のパズルを光らせたい」という発想が、技術的な側面からみてもすごくおもしろいなと思ったんです。
木製パズルを電磁誘導を使って光らせるというのは一見単純そうですが、きちんとした設計が必要で、普段の仕事とはまた違う領域にチャレンジできるんじゃないかと。
声を掛けてもらった帰り道、いろんな方法が頭に浮かんできたことを今でも覚えています。
すぐにサンプルをつくって、翌日には井上に見せにいってましたね。ふたりで「もっとこうしよう」とか「ホントにできたね」とか改善をしていくうちに、どんどん楽しくなってきて。
…正直こんなにのめり込むとは思ってませんでした。
― 作品のクオリティがすばらしく高くて驚きました。本業があるなか、どうつくったんですか?
井上:
目的を決めて取り組むということをしていましたね。たとえば、おばけパズルとして狙えそうなコンペやイベントなど、日程が決まっているものに対して1年間くらいのマイルストーンを置いてやってきました。
堀内:
みんなバラバラに動いているけど、それぞれが逆算して「ここまでにこれやんなきゃ」って。大枠が決まるとプロダクトのフェーズをかんがみて、目安を持って制作を進めることができています。
井上:
もう少し細かく日程を考えるときもありますが、ある程度それぞれの持ち場で自由に進行している方が多いですね。
本業も家庭もあるので、じつは全員で集まることができるのは結果的に2~3ヶ月に1回ぐらいなんです。
― 役割はどのように分担されているのでしょうか?
専門分野が異なるので、お互いに方向付けとかアイディア出しはしています。ただ、最終的に作るのは各担当それぞれに委ねられていますね。みんなやりたいことを良い意味で「勝手に」進めています。
気づかないうちに、プロダクトがブラッシュアップされているのでいつも驚かされています。
この前も、お皿のような丸いデザインのパズル案が進んでいて、ほぼ完成というところまでできてたんです。
山田:
これでいうと、プロジェクトというより、私が勝手につくったんですよね。
もともと長方形のデザインしかなかくて、ほかにも面白いカタチをつくってみたかったんです。丸いカタチだと天地がないから、はじめのとっかかりがわからない。なので、さらに難易度が上がっています。また、丸いパズルと言うのも、デザイン的にも面白いと思い、提案をしてみました。
井上:
僕は別のパズル案をお願いしていたんですけどね…(笑)
山田:
みんな「とりあえずやってみたらいいよね」というスタンス。思いついたことはまずやってみる。誰かの許可をとる必要もなく、まずは作ってみる。それからいいかどうかをみんなで評価すればいい、というやり方を自然にしてるのだと思います。
井上:
やりたいことが多すぎてやりきれないというのも事実ですが、「やりたいくないことはやらないようにしよう」というのも、暗黙のルールなのかもしれません。
仕事だとどうしてもいろいろなところから要望が入ってきたり、自分が考えていたものが実現できなかったりします。モノを世に出すためのプロセスで、良いこともたくさんあるのですが、そういったものづくりと、僕らがサイドプロジェクトでやっている「どこからも何も仕様が来ない、好き勝手にやりたいことをやって良い」ものづくりでは、また違うやりがいとか楽しさがあると思います。
堀内:
だれからも要望されないなか、自ら試行錯誤すると、スキルアップにもつながりますよね。技術や手法も制限もないし、「これをつくりたい」という純粋な気持ちで向き合える。だからこそ、興味があるスキルを学んで実践して、自分のものにしていくことができています。
― 本業での仕事もご家庭もあり、時間も限られているなかで、大変に思うときもあるんじゃないでしょうか?
堀内:
そうですね、特にイベントやコンテストの前、準備に追われるときはホントに大変だと感じるときもあります。
でも、そんなツラさも、自分の子どもが「わ!光った!」って、純粋に楽しんでくれている姿を目の前で見たら、吹き飛んでしまいます。僕にとってのモチベーションのひとつは、メンバーからの反応と、自分の子どもたちからの反応があります。おばけパズルは子どもから楽しめるものなので。
娘から「いつ音がでるの?」とか、子どもたちからの期待もある。それに応えたい。本当に身近なところからフィードバックをもらえるのがうれしいですね。
山田:
SNSなどリアルタイムで反響がもらえるのも嬉しいですね。どのくらいの人に見られているのか、どう感じてくれているのか。ダイレクトに分かるのは本当に貴重な体験です。
実際、私たちもSNSでの「売ってないの?」「ほしい!」という反響をみて、じゃあ手が届く価格までもっていってみようとプロジェクトを進行させています。やはり見てくれる人がいることは、とても大切です。
― 最後に伺わせてください。これからサイドプロジェクトを始めたいと考えている方に向けて。まずはどこから取り組んだら良いでしょうか?
堀内:
やってみたい!たのしそう!という自分の好奇心に、とにかく素直になることだと思います。というのも、《おばけパズル》を続けてこれているのは、サイドプロジェクトと構えてやっているわけではなく、単純に好きで楽しいからなんです。
サイドプロジェクトをやること自体を目的にすると、結局自分が何をやりたかったのか分らなくなってしまって、面倒になってしまうように思います。
山田:
私も同じ考えです。まずは自分の出来る範囲のことからはじめてみて、楽しければ続ければいいし、厳しそうだったら無理に続ける必要はないと思いますね。
最近は発信する場もたくさんあります。アクセサリーでも、イラストでも、自分が好きなものをSNSでアップしてみたり、実際に販売してみたり。そこで反応をもらい、少しづつ前身させていく。
自分が楽しいと思うことが最終的にプロジェクトになると思うので、肩肘はらずに小さいことからでも取り組んでみるのが良いと思います。
井上:
やってみたいなと思うことを見つけても、特に自分の知らない領域だと、最初のとっかかりってどうしても高いハードルに感じてしまうと思うんです。
僕自身、おばけパズルをはじめるまで、じつはデジタルファブリケーションの一連のツールを一度も使ったことがなくて。レーザーカッターなどを使いこなすのは、とても難しいことなんじゃないかと思ってたんです。でも、一度使ってみると想像以上にカンタンなんですよね。
なので、先人たちの経験をなにかしらの方法で知る、ここからはじめるのがいいかもしれません。その分野に近い人に話を聞きにいったり、関連するイベントなどに足を運んでみたり。そうすると、最初のとっかかりの壁みたいなものが、なくなるきっかけになるかもしれません。
― ものづくりをピュアに楽しむ。その気持ちが、サイドプロジェクトをはじめるきっかけにもなるし、自分自身の可能性を広げることにもつながるのだなと感じました。本日は素敵なお話をありがとうございました!
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