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成果を出すにはルールを減らせ!―《チームラボオフィス》のイノベーションを生む空間作り[1]

2013-01-30

成果を出すにはルールを減らせ!―《チームラボオフィス》のイノベーションを生む空間作り[1]

良質なアウトプットを生み出すために必要なものとは一体なんだろうか。人材?資金?コンセプト?それもそうだろう。だが働く環境にも目を向けるべきではないだろうか。多くの時間を過ごし、生産活動を行なう職場。“機能するオフィス”の設計を手がけるチームラボオフィスの代表 河田将吾さんに、空間作りとは何かを訊く。

イケてるオフィスから、イケてるモノは生まれるか。

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これは、オフィスデザイン集団『チームラボオフィス』のホームページに記載されているコンセプトの一節である。

良質なアウトプットを生み出すために、プロダクトやサービスそのものをイノベートしようとは、多くの人が考えるところだろう。だが、作業環境や職場環境を変えることでアウトプットの質を高めようとする発想は、まだそれほどまでには意識されていないように思う。

椅子と机が並び、パソコンが使えることだけが、オフィスに求められる要件なのか。組織のパフォーマンスを向上させるオフィス環境というものがきっと存在するはずだ。――我々のそんな問いに、チームラボオフィスのコンセプトは答えているかのように見えた。

「イケてるオフィス環境からは、イケてるモノが生まれるはず」との仮説を、チームラボオフィス代表の河田将吾さんにぶつけてみた今回の企画。

いくつかの事例を交えつつ語られた話は示唆に富み、刺激的だった。WEB・IT・ゲーム業界に生きる我々にとって、必読のインタビュー。


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チームラボオフィス代表 河田将吾さん


ルールを減らすとイノベーションが起こる。

― 河田さんが代表を務めるチームラボオフィスでは、「組織の生産性とクリエイティビティが上がるオフィスをデザインする」ということを掲げられていますね。少し不躾な質問になってしまいますが、ズバリ、環境によってクリエイティビティが向上する、といったことはどれぐらいあり得るのでしょうか。


それを考えるにあたり、「ルール減らす」というのが一つのカギになると思っています。イノベーションを起こすためには、ルールを減らすことがとても重要です。

新しいもの、クリエイティブなものって、枠からはみ出したところに生まれるものですよね。だから、ルールが増えると、新しいものが生まれにくくなる。

大阪の堺や福岡の中州は、昔から独自の文化が発達してきた土地ですが、どちらもいわゆる低地で、海の近くにあります。高いところには武家が住んでいて、低いところに職人などが住んでいる。

当然ながら海の近くは、水の増減による地形の変化があったり、人やモノが運ばれてきたりと、流動的です。だから固定化されたルールというのが定着しない。それで、そのエリアに住む職人だとか町人、商人たちから、新しいモノや文化が生まれていったんだと考えられます。逆に武家はルールの固まりみたいなものですから、高地のスタティックさがフィットしていた。

なのでルールをいかに少なくするかというのが、イノベーションには重要です。


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― なるほど、興味深いですね。ただ、ルールというのは何らかの必要に迫られて設けられているものですよね?減らす、と一言でいっても、どうすればいいかイメージできないのですが。


おっしゃるとおり、もともとは必要に迫られて作られるものですよね。中には形骸化したり、すでに無用なのに残っている、というのがあるとしても。

会社で言えば、10人ぐらいの規模だったら、おそらくそんなに多くのルールは要らないと思うんです。お互いどんな人間なのかもだいたい分かっているし、相手がどんな仕事をしているのかもなんとなく見えている。

だから「こういうときに声かけたらマズイんだよな」とか、自ずと了解できるんですよね。

でも人数が増えてくると、お互いの理解度も低くなって、相手が何をしてるのかも見えづらくなる。そうすると、「○時から○時までは声かけ禁止」とか、ルールが増えていく。

それはある程度仕方のないことなんですが、いちいちルールを設けて文書化して、それを社員に配って、それでも浸透してないから繰り返し同じことを指摘して…ということをやっていると、とてもじゃないですがイノベーティブな方向に意識を集中させるのなんて無理ですよね。

そのとき、空間が役に立つんです。空間によって、意識を使わずとも自然とルールに沿った行動が促せる。

たとえば机一つとっても、丸なのか四角なのかで、話し方や行動が変わります。四角だったら基本的に対面になるので、良い意味でも悪い意味でも対峙的な構造が生まれる。でも丸だったら、並列的になるので、対等な関係で話ができるというような。

このように、カタチや色などによって知らないうちにそこにいる人たちの行動が変わる。そうすることによって、ルールを設定しなくても組織を動かしていく、ということができると思っています。


― 環境が行動を規定する、と。


クリエイティビティに溢れた会社にしよう、と思うとき、「クリエイティビティを生むための10ヶ条」とか作って配るのか。それで本当にクリエイティブな仕事が生まれてくるイメージってないですよね。

創造性というのは理性的なものと感覚的なものとどちらも必要で、10ヶ条を毎日唱えていてもそうはならない。

空間を変えると、マインドが変わっていきます。たとえば、入社したての新卒社員でも、時間的な文脈を踏まえずともパッと同じ方向を向いてくれる。そういう力が、オフィス空間を変えることで生まれてくるわけです。

お互いを知ることで、ルールが減る。

いま個人的に非常に興味を持っている言葉があるんです。1つは「クリエイティビティ」。もう1つは「インテリジェンス」。

クリエイティビティに関しては、まぁそのままの意味といいますか、新しいモノを生み出すチカラ、みたいなことですね。

一方、「インテリジェンス」のほうは、僕自身もまだうまく説明しきれないというか、捉え方が難しいんですが…


― 一般的には、「知性」とか「知能」といった意味ですよね?


そうですね。そのほかに、「理解力」とか「思考力」という意味合いもあるんです。

僕が思っているのは、そっちのニュアンスに近い。道理が分かる、というか、文脈や前提が共有されている状態みたいな。

いちいち指示を出さなくても、正しい選択・あるべき選択をチョイスできるという感じでしょうか。

たとえば茶室へ向かう道の真ん中に石が1つだけ置いてあったとする。それはこの先へ行ってはいけないという意味だ、と日本人なら分かる、みたいな。

それって、そういう文脈を生きていない人、たとえば外国人からしたら、意味が分からないですよね。おそらく、「なんだよ、邪魔だな」って言ってその石を取り除いて先に進んでいっちゃうと思うんです。言わなくてもなんとなく皆が理解し合う…そういうものに興味があります。


― 先ほど例に出されていたことですね?「何時から何時まで私語禁止」とかじゃなくて、必要に応じて自然と行動できる状態を生むという。


そうです。で、インテリジェンスを生むための要素の1つが、「お互いをよく知る」ということじゃないかと考えています。

昔の日本の家ってそういう仕組みが取り入れられていたと思うんですよね。町屋とかだと、建物の外側に折りたたみ式のベンチみたいなものが備え付けられていて、座って休めるようになっているんです。近所の人たちがそこに座って、茶飲み話をするような環境があった。

だから、長屋の壁なんかはすごく薄くて隣りの声がうるさいんだけれども、「あそこはまだ子供が小さいから。仕方ないわね」みたいな感じで許せるんですよね。

一昔前のオフィスって、作業効率とかを考えて、個室を作っていく流れがあったと思うんですけど、あれをやってしまうと情報の流れが悪くなる。情報が交換されないので、お互いの理解も深まらないままです。そうすると、ルールが必要になってきます。

でも情報交換したほうが自分の見識も深まるしアイデアも生まれるし…ってことを、実は皆なんとなく分かってたんですよね。だからこそ、最近は個室みたいなオフィスってあまり流行っていないんだろうと。集中して作業することが必須なエンジニアの仕事場でさえ、そういうのはもう見かけないですから。

でも「うるさいのはイヤ」という欲求は現実にあるわけで、それをインテリジェンスでなんとかできないか、と考えていて、その1つが先ほどお話しした「お互いを知る」ということです。

規模の大きな会社でも、社員同士がなんとなくお互いの情報を交換している状態をつくりたい。こいつは声がでかいんだなとか。広島カープが好きなんだなとか。


Mr.Kawata_02


― 具体的にはどんな手法があるんでしょう?


最近は、デジタルを使う、ということを考えています。

たとえば、喫煙所に社員のプロフィールが見られるディスプレイ置いて、ヒマつぶしに眺められるようにするとか。オフィスのあちこちに情報をちりばめて、接触できるようにしていく。

それを実践してみたのが、チームラボにある休憩所です。チームラボはフロアが4つに分かれていて各階に休憩スペースがあるんですが、それぞれにディスプレイを置いて、全ての休憩所を繋げています。他のフロアの様子を見ることができ、話すことも可能です。なんとなく、お互いが繋がっている状態を作っているんですね。

エントランスに設置してある『Face Touch(フェイスタッチ)』もそうです。表示される社員の顔写真をタッチすると本人を呼び出せる、という受付システムなんですが、それだけではなくて、個々人のプロフィール情報も出るようになっています。

呼び出し相手が来るのを待っている間に、相手のパーソナルデータを把握できる。そうすると、初対面でも「実は私も同郷なんですよ」みたいな会話で関係性をスタートできるんです。

そんなふうに会話にならなくても、相手のことを全く知らないで接する状態に比べると、“理解”がある関係になっていますよね。


― つまりインテリジェンスがある状態に少し近づく。


そうです。ですが必ずしもそれはデジタルじゃなくても実現できます。先ほどの休憩所の例でいうと、コピー機とか自販機とかをあえて周辺に置いているんです。

そうすることで、休憩に来た人だけでなく、コピーを取りに来た人とも飲みモノを買いに来た人とも偶発的に出会いが生まれる空間になっている。これも、インテリジェンスを生み出す仕掛けの1つと言えます。


(つづく)
▼インタビュー第2回はこちら
テンションが上がるオフィスを作れ!―《チームラボオフィス》のイノベーションを生む空間作り[2]




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