2019.06.07
すぐ実践できる、忘れられない「自己紹介」のつくり方

すぐ実践できる、忘れられない「自己紹介」のつくり方

「伝わる自己紹介を考えてきてください」というお題に、みなさんならどう答えますか?何気なくしている自己紹介は、「企て」ひとつで全く違うものに。「記憶に残る自己紹介」のポイントについてお届けします。

※本記事は、大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDOにて、コピーライターの阿部広太郎さんが主宰する連続講座「言葉の企画」の模様をキャリアハックにて再編集したものです。

「伝えた」としても、「伝わる」とは限らない

コピーライターでありながら、映画プロデュースやアーティストの作詞活動など、幅広い分野で活躍をしている、阿部広太郎さん。

彼の主宰する連続講座「言葉の企画」では、企画でメシを食っていくために必要な「言葉」のチカラを磨いていきます。

第一回目の講義は、「自己紹介」からスタートしました。


みなさんに向けて事前に、こんな課題を出しました。

スライド1枚に、「伝わる自己紹介」をつくってきてください。そして、他の参加者の自己紹介に全て目を通して、良いと思った3つを選んで投票しください、と。

総勢71名の自己紹介に目を通してみて、いかがでしたか? 一通り見るだけでも、相当大変でしたよね。会ったことのない、知らない人の自己紹介をひたすらに眺め続ける。しかも3つを選ぶとなると自分の中に判断軸がないといけない。正直なところ、途中から投げ出したくなった人もいたのではないかと思います。

まず大前提としてお伝えしたいのが、「伝えた」からといって、「伝わる」とは限らない、ということ。

基本的に人間はめんどくさがりの動物です。面白いことは大好きだけど、つまらないものは大嫌い。そういう人間の根源的な気持ちをくぐり抜けていかないといけません。

「自己紹介」だから、顔写真を載せて、生年月日と、職業と趣味を書いておこう。もしかしたら、こんなふうに考えた人もいるかもしれません。ただ、これは自己紹介ではなく、ただ情報を羅列したのと一緒です。これで記憶に残るのは難しい。

自己紹介する相手に、「こう受け取って欲しいな」とか、「こう思ってもらいたいな」という意志を持つこと。それが、伝わる自己紹介の一歩です。

自分なりに「伝わる」を定義しよう

では、「どうしたら伝わるのか?」。
阿部さんは、「伝わる」を自分なりに定義することが大事だといいます。


自分なりに「伝わる」に対する定義を持っていないと、「伝わる」なんてありえないと思うんです。こんな状態が伝わるってことだ。きっと伝わったら、相手はこんなリアクションをするだろう。そこを、クリアにイメージを持つ。

僕なりの「伝わる」の定義は、「思い出せる」です。他に何十人もいる中で、相手の記憶に残るだろうか。もし、しばらく時間が経ったとしても、「◯◯の人だ!」ときちんと思い出してもらえるだろうか。

こんなふうに、「伝わる」状態をより具体的なイメージにブレイクダウンする。そうすることで解像度が高くなっていきます。

自分の何を覚えてもらいたいのか?

続いて語られたのは、「伝える内容」について。ポイントは、「自分の何を相手に覚えておいてもらいたいのか」決めることだといいます。


みなさんの自己紹介のスライドをみていると、情報が盛りだくさんなものが多いです。それは、いわば「保険かけ過ぎ」状態。相手からすれば、「書かないと不安なのかな」という印象を与えかねません。情報を洗い出した後、足して足して思い切り引き算する。「これでいく!」という気持ちが大切です。

たくさんある情報の中で、自分が届けたいものは何か。言い換えれば、「自分の何を相手に覚えてもらいたいのか」を決めることが大切です。

71名の中で、個人的に記憶に残った3名の自己紹介を紹介します。

まず最初に小田周介さん。

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思い切り引き算された自己紹介です。写真をメインにして、とてもシンプルなビジュアルですよね。情報が絞られているし、堂々とした表情も相まってインパクトがある。カメラマンである自分に誇りを持っている、その人らしさが伝わってくるなと思いました。右下に検索のボタンがあるのも、おもしろい。何があるのかと気になって、思わず検索しました。

続いて、鈴木勇輔さんの自己紹介。

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文脈を引用する自己紹介です。台本という文脈を用意されたことで、何が書かれているのか気になって、思わず最後までするすると読んでしまいました。ナレーターを仕事にしているバックグラウンドと、人となりが伝わってくる自己紹介です。

そして、最後に前田香織さん。

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前田さんは、小田くんとは真逆で、とにかく情報が盛りだくさん。思い切り足し算された自己紹介です。さきほど、「情報を絞る」ことが大事といいましたが、ここまで振り切って情報を書き尽くすのも、ひとつの手だと思います。第一印象から異質で力強い。

いろんな思いが心の中に渦巻いていて、葛藤されてるのかなと。今、もがいている感じが、この一枚から伝わってきて、強く印象に残りました。

短く、強い言葉を。

阿部さんは、情報の伝え方ひとつで、印象に残るかどうかが大きく左右するという。


「Less is more」という考え方を大事にしています。

「少ない方が豊かである」という意味で、言葉に限らず、デザインなどでもよく言われていますよね。

言葉も同じだと思うんです。人が口ずさんだり、人が覚えておいて、そらんじられたりする言葉言葉ってどれも短い。多くを語るよりも、少ない言葉のほうが、考えや情景みたいなものが広がって、結果的に多くのことが人に届いていくということ。

短く、強く。この考え方を意識するようになったのは、10年前、僕がコピーライターとして1年目のときでした。

「自分の広告をつくりなさい」というお題が僕たち新人に渡されました。自己紹介も兼ねて、社内のフロアに掲示されると。いろんな広告やコピー年鑑を読み漁りながら、見よう見まねで、46本のコピーを書きました。

最終的にクリエーティブディレクターの大先輩に選んでもらったコピーは、「阿部広告太郎」でした。

これでいいのかな…と内心思う自分もいました。でも大先輩は「一番大切なのは、君の名前を覚えてもらうこと。君の名前の“コウタロウ”のコウの字が広告のコウなんだと伝えることは、思い出してもらえるから良いよ」と言われたんです。僕は46本のコピーに、キャラクターや性格、容姿など、あらゆるアプローチで自分を体現するコピーを書いていたのですが、相手に何を覚えてもらいたいのかを決めきれないまま書いていたことに気づきました。

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広告業界だと「ワンキャッチ、ワンビジュアル」という基本ルールがあります。ひとつのビジュアルに対して、ひとつのコピーが決まるという考え方です。まさに、一撃必殺。「この一言、このビジュアルで相手の心を掴むんだ」という心構えこそが、とても重要です。

関係がはじまる、「入り口」をつくろう

講義は終盤、「伝わる自己紹介」から「伝わる企画書」へと発展していく。


自己紹介は「興味の入り口」をつくることだと思うんです。自己紹介ですべてを伝え切ることなんて不可能だから。「もう少し会話してみたいな」とか、「あの事について話を聞いてみたいな」と思ってもらうのがベスト。自己紹介をきっかけに、出口まで進んでいきたくなる興味の入り口を作ってくれればいい。

企画書も同じ。企画書は、一人で完結するならわざわざつくる必要はなくて、一緒にかたちにしたい相手との関係をつくるためにありますから。つくるべきは出口ではなく入り口。企画書をきっかけに、その次の扉が開く入り口になれるかどうかを考えながらいつも私はつくっています。

撮影:小田周介

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文 = 野村愛


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