2019.10.30
(前編)ものつくりは「技術が8割」|LINE 桜川和樹のWEB編集論

(前編)ものつくりは「技術が8割」|LINE 桜川和樹のWEB編集論

「志がどれだけ高くても、センスがあっても、技術がなければいいコンテンツは作れない」。こう話すのは、『NAVERまとめ』編集長の桜川和樹さん。約15年にわたりインターネットの最前線でコンテンツを仕掛け続けてきた桜川さんに、クオリティを上げるための技術とスタンスを学びました。

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[連載]
[1](前編)ものつくりは「技術が8割」|LINE 桜川和樹のWEB編集論
[2](後編)ものつくりは「技術が8割」|LINE 桜川和樹のWEB編集論

※本記事は、自分の企画で世の中を動かしたいプロの編集者を育成する『コルクラボ編集専科』(全6回)の講義内容をキャリアハックで再編集したものです。『コルクラボ編集専科』とは、コルク 佐渡島庸平さんが主宰する編集スクール。佐渡島さんだけでなく、出版業界・WEB業界の一流編集者たちが講師をつとめます。
*「コルクラボ編集専科」の記事一覧はこちら

クオリティを左右するのは、圧倒的「技術力」

「ものつくりは、技術が8割。正しい技術を身につけてトレーニングを積み重ねていくことで、その力は鍛えることができます」

こう話すのは、LINEの桜川和樹さん。

『R25式モバイル』の編集デスクを経て、2009年にNAVER Japan(現LINE)入社。『NAVERまとめ』編集長を務め、『LINE NEWS』の事業化や『LINE MOOK』の立ち上げにも携わってきたWEB編集者だ。

「コンテンツのクオリティは【マインド×技術×センス】のかけ合わせで決まると思っていて、その割合は【1:8:1】くらいかなと」

「スポーツと一緒ですよね。『オリンピックに行きたい!』と誰より強いマインドを持っていても技術がなければ行けませんし、すごく身体能力が高かったとしても、練習しなければ難しい」

桜川さんが実践する、コンテンツのクオリティを高めるための技術とは?

「ここで学んだ技術は、ぜひ実践を繰り返して血肉にしていってほしいです」と桜川さん。「たとえば、世の中にあるウケている・いないコンテンツの事例をさまざま集め、共通性を見つけて言語化する。それらを抽象化して法則を見つけ出し、その法則が正しいのか世間に投げかける。そしてそこで起こったズレを比較し、チューニングしていく。こういったトレーニングを重ねることで、初めて技術は自分のモノになっていきます」。

「身近な題材×意外な切り口」で一発ホームランを狙う

最初に語られたのは、「一発ホームラン」を狙うコンテンツを作るための技術だ。

一発ホームランを狙うには、まず「身近な題材」であることが大事です。つまり、多くの人が関心を持てるテーマであること。

身近さというのは、マーケットサイズに近しいものがあって。たとえば「ファッション」と「スポーツ」だったら、雑誌の数などから見て日本だとファッションのほうが身近です。そして「スポーツ」と「将棋」だったら、スポーツのほうが身近になります。

ただ、身近なテーマで当たり前のことを言っても凡庸なコンテンツになってしまう。そこで、「身近な題材」と「意外な切り口」のかけ合わせが非常に重要になってくるんです。

たとえば、テレビドラマ『おっさんずラブ』などは分かりやすいかもしれません。あれは恋という身近な題材と、おじさんという意外な切り口をかけ合わせた作品だなと。

では「意外な切り口」はどのように見つけたら良いのか。これは、題材が持つイメージの「逆」か「過剰さ」によって抽出できると思っています。ファミレスを例に考えるとこんな感じです。

・安い      → 【逆】高い      【過剰化】賞金が出る
・学生が多い   → 【逆】大人しかいない 【過剰化】学生が運営している
・ゆっくりできる → 【逆】立ち食い    【過剰化】住める
・気軽に入れる  → 【逆】会員制     【過剰化】家に来る

それでも意外さを見つけるのに苦戦する場合、僕は一度題材の主語を大きくして、なるべく身近なものに近づけるようにしています。

たとえばこの『コルクラボ編集専科』だったら、「セミナー」や「学校」と主語を置き換えてから、その主語の逆と過剰を考えてみる。

記事のタイトルを考えるときなども、このフレームワークに当てはめて考えてみるといいかもしれません。

「コンテンツの目的×受け手の欲求」で着実なヒットを狙う

とはいえ、一発ホームランを打つのは決して簡単なことではないだろう。そこで桜川さんが教えてくれたのが、着実にヒットを打つ方法だ。

作り手側が「コンテンツを作る目的」と読み手側が「興味を持つこと」は、必ずしも一致しません。そこで、作り手の目的と受け手の欲求を自分なりに分類し、その組み合わせからコンテンツの方向性を導き出すフレームワークを作りました。

まずコンテンツを作る目的、つまり作り手がやりたいこととしては【鑑賞】【知識】【活用】の3つがあるかなと。

この「作り手の目的」に対し、受け手はどんなことに興味を持つのか。人間の欲求というのはいくつもあると思うのですが、その中でも、より人間の興味を引きやすい欲求は6つほどあるのではないかと。

1.生存本能(生死や健康、病気など)
2.畏敬畏怖(大自然に触れたときの気持ちや、得も言われぬ嫌悪感など、説明できない感情)
3.好奇(人のうわさやゴシップなど好奇心をくすぐるもの)
4.損得(買わないと損するなど、損得勘定に訴えかけるもの)
5.自己成長(きれいになりたい、稼ぎたい、賢くなりたいなど)
6.帰属意識(所属しているコミュニティや業界などの知識)

作り手の3つ目的と受け手の6つの欲求を相性の良いもの同士で組み合わせると、このように、コンテンツの方向性を導き出すことができます。

ヒットを狙うときは、この方向性をもとにコンテンツのテーマを考えみるといいと思います。

[連載]
[1](前編)ものつくりは「技術が8割」|LINE 桜川和樹のWEB編集論
[2](後編)ものつくりは「技術が8割」|LINE 桜川和樹のWEB編集論


文 = 大野あゆみ
編集 = 長谷川純菜


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時代は平成から令和へ。そして訪れる「2020年以降」の世界。2020年からの「10年」をいかに生きていくか。より具体的に起こすべきアクションのヒントを探る連載企画です。お話を伺うのは、常に時代・社会の変化を捉え、スタートアップと共に"一歩先”を見据えて歩まれてきた投資家のみなさんや、未来を切り拓く有志者のみなさん。それぞれが抱く「これから10年間で現実的に起こり得ること」と「新しい生き方」の思索に

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