2012.07.02
Wantedly 仲暁子に学ぶ、「かっこよく生きる」ための仕事論。

Wantedly 仲暁子に学ぶ、「かっこよく生きる」ための仕事論。

若干26歳にして、ソーシャルリクルーティングサービスWantedlyを立ち上げた仲暁子さん。京大卒、ゴールドマン・サックス、Facebookというキャリアを歩んできた才媛であり、自らコードを書くこともいとわない“プロダクトの作り手”でもある彼女に、自身の仕事観・キャリア観について伺った。

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京大卒、ゴールドマン・サックス出身の元 Facebook 社員。「仲暁子さん」

もしあなたが企業の人事担当者だったとして「仲暁子」という女性を面接しなければならないとしたら、彼女の履歴書を見た時点で尻込みしてしまってもおかしくない。

大学教授の母を持ち、自らは京都大学出身。新卒でゴールドマン・サックスに入社するも、自主退職。次に選んだのがあのFacebook。在籍中にド素人から独学でRuby on Railsを習得し、ボーダーレスなイラスト投稿サイトmagajinをローンチ。その後、Facebookのプラットフォームをベースにしたリクルーティングサービスのアイデアを思いつき起業、Wantedlyを立ち上げる。これだけの出来事を、彼女は26歳にして経験してしまっているのだ。

驚くべきことはまだある。それは彼女が、ひそかにデビューを目論む漫画家志望だということ。かつては出版社への持ち込みも経験し、担当編集者もついていたほどだという。

誰もが認めるエリートでありながら、自らの手でモノを作ることに喜びを覚えるクリエイターでもある彼女は、自分の仕事やキャリアをどのように考えているのだろうか?

自分の人生が“有限であること”への強烈な焦り。

― 仲さんの場合、踏んだ“場数”が同世代の人に比べて圧倒的に多いですよね。それだけ行動的になれるのはなぜなのでしょうか?

「個人的な意見なんですが、新しいものを作る人や今あるものを変えていける人って、“自分の人生が有限であることを、強烈に感じられる人”だと思うんですね。

私の場合、その感覚が結構強くリアリティとしてあって。感じていない人はそれはそれで幸せだと思うんですけど、一度強烈に有限だと捉えると、物事の判断基準が変わってきます。常にせっぱつまった状態になる。

例えば面識のない人に電話するかしないかで迷っていたとしても、せっぱつまっていたら、絶対にいま電話するほうを選ぶと思います。

ある意味、人生って退屈じゃないですか。自分で楽しもうとしないと面白くはならないというか。私、予定調和はすごくイヤなんです。自分が飽きちゃうから。退屈なままで人生を終えたくない」

すべての物事を“かっこいいかどうか”で判断する。

― 人生を予定調和にしないために、仕事上で意識されていることは?

「常にユニークであることを重視してますね。例えば、オフィス一つをとっても他社と同じにはならないように。私はこのオフィスは“かっこいい”と思ってるんですけど、あえてカフェ風の椅子とテーブルで統一してるんですね。

WEBの会社でこういうところって、あんまり見ないじゃないですか。しかもすべてAmazonの「欲しいものリスト」に登録しておいて、友達やお取引先の皆様から贈っていただくというやり方で揃えたものなんです。椅子もテーブルもコートハンガーも、ここにあるもの全部。

スタートアップってIKEAのイスとかただ置いてるだけのところが多いですけど、私はもっとこだわるべきだと思ってて。もちろん予算の問題もあるんですけど(笑)。

どこにでもありそうな机とイスがあって、替えのきくエンジニアがいて、他の会社でもできるようなことをやっている。そういう会社が悪いというわけではないのですが、やっぱり“かっこいい”とは思えないんですね。

他の人がやってくれることを、自分で考える必要ってないじゃないですか。WantedlyだったらWantedlyにしかできないことをやらなきゃいけないし、このオフィスにもこのオフィスにしかないものを置かなきゃいけない。社員だってイケてる人を仲間にしなきゃいけないし、投資先も“この人に投資してもらってる会社ってかっこいい”と思ってもらえるようなところから投資してもらわないといけない。

私の価値観なのでなかなか言語化しにくい部分ではあるのですが、“かっこいいかどうか”が常に自分の行動を決める判断基準になっていますね。美学みたいなものかな」


― かっこいい会社の例をあげるとすると?

「九州にnulab(ヌーラボ)という会社があるんですけど、その会社のプロダクトで「Backlog」というプロジェクト管理ツールやワイヤーフレーム作成ツールの「Cacoo」って、普通に海外でも使われているんですね。なぜなら、そのプロダクト自体が優れているから。そういう会社は、やっぱり“かっこいい”と思います。

個人的に、WEB業界って仲間内でつるんでいるだけでその気になっているところが少なからずあると思うんです。東京のスタートアップ界隈にいるというだけで取材してもらえたりメディアに出たりしますけど、肝心なのはプロダクト。そこを履き違えないようにしないと」

明確なビジョンなどいらない。いま、面白いと思えることだけをやる。

― 仲さんのご経歴や考え方を伺っていると、常識に縛られない自由な気質を感じます。もし、世の中一般で言われている常識の中で、仲さんが懐疑的に見ていることがあれば教えてください。

「そうですね…成功した方々がよく“まずビジョンを描け、理想を持て”と若い人に言うじゃないですか。理想の自分を設定して、そこからの逆算で今の自分に何が足りないかを割り出して、その足りないものを埋めていけば絶対になりたい自分になれるって、そんなの間違ってると思うんです。

私の母が大学の研究室で教えているんですけど、経済的にも安定して、国や行政と一緒に大きなプロジェクトをやっているんですね。比較的大きな予算を動かして。

でも彼女は最初からそれを目標にしていたわけじゃない。最初は全然お金もないし、目の前の実験がただ楽しいからやってただけなんです。何かを目指すとかではなくて、目の前の、自分が心躍ることだけをやり続けた結果、社会的な地位がついてきただけ」


― あらかじめ将来のビジョンを描く必要はない?

「そうですね。とにかく今、自分が面白いと思えることを手当たり次第にやることのほうが大切なんだと思います。

自分探しに否定的な人も多いですけど、私はやったほうがいいと思いますね。少なくとも1年くらい“これ興味あるわ”っていうもの全部に顔を出していくようにすると、絶対に何らかの気づきがありますから。

そのうち興味の持続する分野が自然と一つに絞られていって、自分が本当に集中できるものが何なのか分かってくる。その状態は自分が最もワクワクしている状態なので、パフォーマンスも一番高い。だから結果的に、自分の将来像を設定して動いている人と比べて、それ以上の高みに登りつめることができるんです。

もちろん経営者として会社の目標やビジョンはしっかり考えていますけど、私個人に関しては全く気にしてません。決めたって、どうせ忘れちゃうから(笑)」


編集 = CAREER HACK


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