LINE の執行役員兼プロダクトマネージャーを務める二木祥平さん。後編では、納期の捉え方についてアドバイスいただきました。
全3回の連載でお送りいたします。
[1]なぜ君は仕事を任せてもらえないのか。新米PMが最初に身につけたいマストスキル|LINE 二木祥平
[2]雑談することも、PMの仕事。メンバーと対立しないプロジェクトマネジメントの心得|LINE 二木祥平
[3]納期ってムリに引く意味ありますか?LINE 二木 流 プロダクト開発論
ー LINEでは、プロダクト開発をする上で「最初に納期を握らない」と聞いたのですが...でも、納期を握らないと、リリースが遅くなっちゃいませんか...?
いえいえ、むしろプロジェクトの初期フェーズで納期を設けようとすると、企画・開発サイドでバッファをつくって遅くなるんです。納期が遅れるとビジネスサイドとのコミュニケーションがめんどくさいから、倍のスケジュールを見積もってしまう。結局人間って、スケジュールに向かって頑張るから、バッファを設けても前倒しになることってほぼないですよね。
もっと早くリリースできたかもしれないのに、バッファがあるから遅くなったら、プロダクトにとっても事業にとっても不幸ですよね。
だから、LINEでは開発も企画もスケジュールに対して忖度なしに非常に正直です。開発サイドとはまずは最短のスケジュールで、納期目標を決めています。特にプロジェクトの初期は、ビジネスサイドに「だいたいこのくらいの時期にリリース予定で、でも多分遅れます(笑)」と伝えて、期待値コントロールをしておく。
無駄な見積り作業にリソースを取るより、早くプロジェクトをスタートさせる。最初はざっくりスケジュールでも、プロジェクトの後半でリリース日が確定していく。それが一番健全だし、結果的に納期を設けるよりも早くリリースできると思いますね。
とくに開発を内製化しているならなおさら。ビジネスサイドと開発サイドのあいだで、納期の騙し合いするのってムダだと思うんです。
それに、納期に固執するあまり、焦って出したプロダクトって本当にいいのか。ときには納期を遅れてでも、練ったほうがいいときもあると思うんです。
― 納期に固執しない...そう思うようになったきっかけは?
プロダクトマネージャーになったばかりのとき、プロジェクトマネジメントオタクモードというか...リリースすることが目的になってしまって失敗したことがありました。納期を守るために、開発が間に合わないから重要な機能も削いじゃったんです...。なんとかリリースには漕ぎ付けたものの、結局うまくいかずクローズしてしまって。
もちろん最初の企画段階が雑だったというのもあるのですが、リリース優先で突っ走ってしまったのが失敗の要因でした。プロダクトはリリースがゴールじゃない。成功しないと意味がないんだと痛感しました。
いまでは、意識的に「違和感があったら立ち止まろう」と心がけてます。とくにインターネットの世界は変化のスピードも激しいですし、そのときの会社の状況によってビジネスの前提条件が崩れることがよくある。当初の予定や納期を度外視して、プロダクトの成功はなにかを考え直すこともよくあります。
ー 決裁も通ってて、開発を進めている、そういった状況のなかで立ち止まるってかなり勇気がいりますよね。
そうですね。ただリリースしたとして、一人でもユーザーが使い始めちゃったら、それこそクローズするのが大変ですよね。しばらくはそのプロダクトと付き合っていくわけだから、結果的に自分がしんどくなる。
それに、大体そういうときって、開発スピードも自然と落ちますよね。みんな心のどこかで、なんでやるんだろうって思ってる。そういう状態って誰も幸せじゃない、いいものがつくれない。
いいものをつくるために、変化を恐れない。判断に迷うときもありますが、良いプロダクトをつくるにはどうするべきか、自分自身に問いかけ続けるようにしています。
取材 / 文 = 野村愛
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