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全くの素人から、新サービスを立ち上げられた理由― 《漢方デスク》葉山茂一氏とクックパッドの挑戦

2013-05-08

全くの素人から、新サービスを立ち上げられた理由― 《漢方デスク》葉山茂一氏とクックパッドの挑戦

クックパッドが新たに立ち上げた部署「新規事業開発室」では、“起業を志す”というコンセプトのもと新しいサービスが開発されている。そこに、エンジニア未経験からサービスアイデアだけを持ってやってきた葉山茂一氏。すでに新サービス《漢方デスク》をローンチしているというが、いかにしてそれは成し遂げられたのか。

▼クックパッド取材レポート第1弾
“一人一サービス”がルール!起業志向の人材を求める、クックパッドの新組織体制。その狙いとは?  から読む

▼クックパッド取材レポート第2弾
“役職を捨て、プレイヤーとしての道を選んだ男― クックパッド元・技術部長 井原正博氏の企て  から読む

「ウチでやってみたら?」がきっかけ。

― 葉山さんは、クックパッドに入社される前まで、エンジニアリングには携わっていなかったそうですが、ご経歴から伺ってもいいですか?


そうなんです。もともとは外資系の経営コンサル会社にいまして、3年半ほどコンサルタントをしていました。その後、Amazonに入って主にバイイング業務を3年。それから独立をして、いろいろと紆余曲折があって、最終的にはクックパッドに入社することになったんです。



― いま作っていらっしゃるサービスは『漢方デスク』という、漢方・薬膳のサイトですよね?またどうして、漢方だったんですか?


そもそもどうして会社を辞めて独立したかというと、漢方でビジネスをやりたいと思ったからなんです。


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私、昔から胃腸が弱くて持病みたいになっていたのですが、西洋系の薬というのが全然効かなくて。ですが、あるきっかけで漢方を試してみようということになって、飲んだらピタリと治まったんですよ。これはすごいぞと。そこで漢方をサービス化したいと思うようになったんですよね。

漢方って、最初の診断が難しいんですよね。逆に、診断が確定してしまった後はすごくシンプルで、この漢方飲めばいいとか、こういう薬膳を食べればいいとか自ずと決まってくる。その診断の部分を、ITを使ってスムーズにできないかと考えていたんです。


― そこでクックパッドに企画を持ち込んで…。


いえ、最初は国にプロジェクト提案を出して、そこから予算をもらう予定だったんです。ところがそれがある理由で頓挫してしまいまして。これは困ったなと。

じゃあできるところからやっていこうと思ったんですが、WEBサービスを作るにも、肝心の技術を持った人間がいない。そこで、もととも知り合いだったクックパッド社長の穐田に相談したところ、「ウチでやったら?」と言われたんですよね。


― そんなにあっさりと話がまとまったんですか?


一応、プレゼンテーションはしました。穐田には「目の付けどころがマニアックだね」と言われましたけど(笑)

これからの社会において必要になるものだという想いがあったので、その点をアピールしました。 今後も高齢化は続きますし、保険制度も今のままだと厳しくなってくる。もし破たんしたら、風邪も引けない社会になります。じゃあどうやって自分たちを守るんだと考えたときに、予防ですよねと。でも西洋医学では予防は難しい。病名がつくまでは基本なにもできませんから。となると、漢方の出番でしょうと。最終的には「やってみないと分からないじゃないですか」と押し通した感じですね(笑)

ただし、漢方といっても、漢方薬となると免許が必要になるので手が出せません。ですが薬膳だったら扱えますし、一般の人にとっても馴染みがある。薬膳というのは料理ですから、クックパッドとも相性バッチリ。“食と健康”という切り口で見れば、非常に近しいわけです。


技術がなくても、なんとかなる。

― なるほど、言われてみれば確かにそうですね。ところで、冒頭の質問に戻ってしまうのですが、葉山さんはどうしてエンジニアリングフェーズから手がけることにされたんですか?スキルがないとかなり大変だと思うのですが。


大変といえば大変なのかもしれませんが、スタートアップにおいては、そういうものだと思っています。人を雇うわけにもいかないですし、じゃあとりあえず自分で作ってみようと。そうしないと、いつまでたっても作りたいものはカタチになりません。



それから、「何とかなるんじゃないか」とは思っていたんですよね。というのも私、全く英語ができなかったのに、なぜか新卒で外資系のコンサルファームに入ってしまって。

そのときに「ノーイングリッシュ、ノープロモーション」、つまり英語ができないと出世できないと言われたんですよね。出世ができない=クビと同義でしたから、死ぬ気になって勉強したんです。そしたら半年間で壁を超えられた。それが原体験みたいなものになっていて、やったらできる、と思っているフシはありますね。


― 全くダメだったところから半年で話せるようになったんですか。それはスゴイ…。じゃあエンジニアリングについても、トントン拍子に?


実は入社する前から、独学でWEBサイトを作ってみてはいたんです。でも、教科書通りにやっているはずなのに、まぁ動かないわけですよ。

ところがクックパッドで開発していれば、分からないところはすぐに訊けるし、アドバイス通りにやるとちゃんと動く。一人でやっていたら2時間かかっても解決できないことが、2分でできるようになるわけです。少なくとも私からしてみたら、トントン拍子という感覚ですね。各方面に高いスキルを持った人がいて、それをすぐ近くで吸収できるというのは魅力的な環境です。

丸ごと一つ作ってみることが大事。

― 全く違う畑からこの世界に入ってきた葉山さんだからこそ伺いたいのですが、クックパッドの新規事業開発室とは、どんな意味を持つ場所なのでしょうか。


以前から、クックパッドがやっている取り組みというのは非常にいいなと思ったんですよね。新しいサービスをどんどんインキュベーションしていっている。

入社前に社内を案内してもらって、「この会議室にはZaimさんが入っています」と説明をうけたときには、“なんじゃそりゃ!”と思いましたもん(笑)この会社は普通じゃないぞ、と。


(注)オンライン家計簿サービス『Zaim』を手がける閑歳孝子さんは、現在、クックパッドのオフィス内で仕事をしている。


新しい価値を世に生み出していきたいという想いを持った人がどんどん集まってきて、実際に新サービスが生まれて育って、いまよりもっとハッピーな社会が生まれる。いわば日本版シリコンバレーみたいな存在になろうとしているところがすごいなと。新規事業開発室というのも、そうした文脈の一つですよね。



― 新規事業開発室や“一人一サービス”といった取り組みが社員にもたらすものについては?


何らかの想いを持っている人は、どんな小さなものでもいいから一つのサービスをまるごと作ってみること。そこから新しいキャリアが開けるような気がしますね。

私も、1年前の今頃は、まさか自分が漢方のサービスサイトを作るとは全く思っていませんでした。でもこうして、なんとかカタチにできています。一度でもまるごとサービスの企画開発、運用をしておくと、どこでどうすべきなのかが大まかに掴めるから、要所要所で役に立つんですよね。

ベンチャーをやっていると、お金が尽きたりして、やりたいことができなくなる、という事態も容易に訪れるのですが、サービス作りを経験しておくと、いろいろ対処できる。

今後自分で独立してサービスを作ろう、というときも同じです。デザイナーやエンジニアと組んでやろう、となったときに、自分の専門領域以外についても、具体的にイメージできるというのはすごく重要ですね。コミュニケーションする上でも、ディレクションするにしても、知っておくことが役立つわけです。

ただし、イチからサービスを作るには、志が高くないと厳しいかなとは思います。一人で進めていると、シンドイことがたくさんあるので。そういう中からどんどん吸収して学んでいける人、どんどん前に進んで行ける人というのが向いているし、そういう姿勢が求められてくるんじゃないでしょうか。

― 技術面についてはどうですか?


必ずしも、いまの時点で技術があることは重要ではないかな、と思います。与えられた環境を使い倒して、吸収できるものは全て吸収し尽くす。そういう人であれば問題ないかなと。

技術がないところからのスタートとしては、クックパッドや新規事業開発室は最高だと思います。お給料をもらいながら実験させてもらっているようなものですから。技術も学べる上に、なぜかお給料が振り込まれる、と(笑)ベンチャーをやっていた身からすると、天国みたいな環境ですよね。

― ありがとうございます。では最後に『漢方デスク』の今後について。どのようにサービスを育てていく計画でしょうか。


日々頭を悩ませているのは、どうしたら多くの人に愛されるか、ということです。パーソナライゼーションというのが一つのカギだと思っています。漢方って、その人の身体・体質に合ったものを摂取していきましょう、というものなので、より“その人らしい”情報が手に入ることが重要なんですよね。

まだ実装されていませんが、ゆくゆくはユーザーログインによって個人の健康情報を把握し、必要な情報が適宜入ってくるようなサービスにしたいと思います。今年中には月間100万UUを実現したいですね。社長からは「デカイこと言ってこい」といわれたので(笑)

まぁでも、真面目なハナシ、新しい価値を作っていくというのはすごく楽しいことで、今後も続けていきたいと思っています。クックパッドでやるのか、独立独歩でやるのかは、そのときにならないと分からないですけど。

― 仮に独立してやることになっても、クックパッドさんとは何らかの形で繋がっていそうな気がします。とはいえ、まずは100万UU、ぜひ達成してください!本日は、ありがとうございました!



(おわり)



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