2020.09.24
UXとマネタイズ、どっち優先? リアルなPMのお悩み、LINEとサイバーエージェントのPMが答えます

UXとマネタイズ、どっち優先? リアルなPMのお悩み、LINEとサイバーエージェントのPMが答えます

インターネット業界で働く若手PM(プロダクトマネージャー)を応援!キャリアハック主催『PMお悩み相談室』レポート記事をお届け。PMたちの「お悩み」に回答!LINEの二木祥平さん、サイバーエージェントの上野千紘さんをゲストにお届けします!

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※キャリアハック人気連載『PM1年目の教科書』スピンオフ企画、オンラインイベント『PMお悩み相談室』よりお届けします。キャリアハック主催『PMお悩み相談室』参加に興味がある方は、ぜひこちらからメンバーになってください!次回開催時にお知らせをお送りさせていただきます。

気になるお悩みからぜひご覧ください!
・ユーザー志向と、ビジネス志向のバランスに悩んでいます。どちらを優先すべきでしょうか?
・開発側との会話にギャップを感じることはありますか?
・開発スピードを重視していますか?
・PMの目標設計、どうしてますか?

ユーザーに好かれてこそ、ビジネスになる

Q.プロダクトを事業として成り立たせる時、ユーザー志向と、ビジネス志向のバランスに悩んでいます。どちらを優先すべきでしょうか?

二木さん:
どっちか?という考えはしないですね。ユーザーに好かれないとビジネスにならない。それがLINEの特徴でもあって。ユーザーに好かれていて、その上にビジネスが乗る、といったイメージで捉えていますね。

仮に「来年サービスを閉じてもいいから稼ぎきろう」という時は、極端にビジネスに振り切ることもあるのかもしれない。ですが、ほとんどないですよね。基本的にはサービスを伸ばしていく前提なので。そういう意味だと「ユーザー」から考えているかもしれないです。

上野さん:
サイバーエージェントも近しいと思います。1年、2年と短く終わらせる前提でプロダクトを作ってるわけじゃない。長くユーザーに好かれながら、その中でビジネス転換していく考え方でもの作りをしています。

Q.とはいえ…板挟みというか「ユーザビリティか、ビジネスか」と狭間に落ちた経験は無いですか?

二木さん:
たとえば、LINEアプリ上で広告をどう扱うかという判断では、もう常に「狭間」ですよね(笑)App Storeのレビューでも「広告がうざい」と言われたり。ただ、そういった中でも「ユーザーにとって価値のある情報、広告とは何か」と考えていく。まだまだポテンシャルがある領域だし、改善しがいのあるところだと思っています。

上野さん:
そのバランスをとるのは、頭を使わなければいけない部分なので、逆に面白い分野ではありますよね。サイバーエージェントのサービスで言うと、とくにAmebaはその観点と正面から向き合い続けてきたと思います。ユーザー規模も大きく、成熟したサービスとして見られていたりもしますが、広告の入れ方などはまだまだ工夫できる部分があるのかなと思います。

どうすれば、プロダクトがもっとユーザーに好かれるか。どうすれば、ビジネスに転換しやすい広告を入れられるか。私が『AmebaFRESH!』(現 FRESH LIVE)のPMをしていた時にも一生懸命考えていたし、今関わっているプロダクトでも考え続けているところです。

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最低限、開発と会話ができる知識は身につけるべし

Q. 開発側との会話にギャップを感じることはありますか?

二木さん:
ありますね。「見てる視点」が違うので、会話のベクトルが違うということはよくあります。開発チームとしては工数とか拡張性とかも気になるし。そしてそのベクトルを揃えてチーム力を最大化するのは、PMの重要な役割のひとつだと思います

なので最低限、開発チームと会話ができるくらいの知識は身につけておいたほうがいい。プロダクトのあり方、構造が分かってないとやっぱりキツイですよね。

バンバン専門用語も出てくるので、会議中にググったり、社内Wikiみたいなのを見ながら、必死に言語レベルを合わせようとしています(笑)

自身で学ぶことで「次にくる技術とかを使って新しいことやろう」とか「WWDCで○○発表されたから活用しよう」とか発想の幅も広がります。

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Q. どのようにして開発における情報をキャッチアップしていますか?

二木さん:
日々の開発チームとの雑談からが多いですが、それ以外だとTwitterで、iOS自体のデベロッパーとかフォローしていますね。リアルタイムで情報をキャッチできるし、彼らの何気ないtweetを見ながらこういう事考えてるな、とか次のupdateの推測もできたり(笑)。

上野さん:
私も情報収集は完全にTwitter派です。業界的に有名なエンジニアさんをフォローして、そこからキャッチアップすることが多いですね。

Speed is power…だが、中途半端なものを作ると負のスパイラルに?

Q.開発スピードは競合優位性になる、という前提があるなか、そもそもお二人はスピードを重視していますか? もし重視している場合、数値目標をどう捉えていますか?

二木さん:
スピードは本当に大事だと思います。Speed is powerみたいに思っていて。

LINEは開発者自身が「これでできないとダサい」みたいな感覚を持っているメンバーが多いので、その点ではあまり苦労もなく、数値を測って管理しようみたいなマネジメントもあまり見かけません。

PMとしてはそのチームがそのチームらしく最大限パフォーマンスを発揮できる環境を作り出す、スピードを損なうボトルネックを排除していくことを意識しています。道端の小石を拾ってくようなものですね(笑)

逆に前職時代は、納期に遅れるのはご法度というプロジェクトも多かったです。というのも、外注だと「1ヶ月遅れると追加で500万円かかってしまう」みたいなこともザラにありました。そうなると、また追加投資決裁が必要に。なので、いかに予定通りに進められるかが重要だったし、その時はよくベロシティ*で管理していました。

*ベロシティ...アジャイル開発でよく使用される作業の測定基準です。スプリント中に完了する平均作業量をストーリーポイントまたは時間数で表します。

決められた期間のなか、何ポイント消化できるか。毎週チームのベロシティを測りながらスピードというか開発パフォーマンスをモニタリング・予測していました。

ベロシティはそのチーム固有の生き物みたいな指標で、変動ももちろんありますが、チームの状態を把握しつつ納期を予測するには当時最適でした。

上野さん:
開発スピードあげるための数値目標は、ベロシティぐらいしかないかなって思います。KPIマネジメントも難しいと思うので。スピードが上がってるか、下がっているか。開発力として高まっているかどうか。可視化が大事だという気はします。

で、サイバーエージェントの場合だと、プロダクトがものすごくたくさんあるので「期限の目標が達成できばければやめる。無くす」と当たり前に言われてしまう(笑)「今月はこれを出さないと存続が認められない」と。

だから、ゆっくり開発しているわけにもいかない。そういう時は、エンジニアに「スピードを出さなければならない意義」を理解してもらって、一丸となってやる。事業とのバランスなのかなと思います。

二木さん:
納期・スピード重視が裏目に出ることもありました。出すことが目的化して中途半端なものに。結果的に「この機能、意味なくね?KPI達成率しょぼくない?」と負のスパイラルに。納期を間に合わせるためにフェーズを切ったのに、アウトプットが中途半端なので評価も中途半端になりリソースが追加投下されず、永遠に「フェーズ2」に進めない状態に。こういう状態を防ぎながら、いかにスピードを保つかはずっと課題でしたね。

Q.ビジネスサイドが強いと納期偏重に?

二木さん:
あるかもしれないですね。

上野さん:
プロダクトの「できなかったこと」ってわかりやすいじゃないですか。納期が守れたか、守れなかったか。ビジネスサイドからするとわかりやすい。

二木さん:
まあ、それで怒られることもありますよね。「リリース、伸びるんですか?」「なんとかならないんですか?」って。そういうものって思ってもらえる日々の関係性づくりが大事ですけど、どうにもならないときはもう誠実に謝ってます(笑)

とくにBtoBだと営業が売ってくれる、代理店と話を詰めて来てくれるというのがあってはじめてプロダクトが広まるわけで。リリースそのものが、仕事や目標に直結する。リリースが伸びたら怒るのも当然ですよね。だからPMの期待値調整能力はとても重要です。

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「事業責任者」と「PM」は同じ人が担う?それとも別?

Q.LINEとサイバーエージェント、組織の役割として「事業責任者」と「PM」は同じ人が担う?それとも別?

二木さん:

同じ組織とそうじゃない組織がありますね。事業寄りのPMが多い組織もありますし、開発寄りのPMの組織も。プロダクトの性質やステージと規模によって違う感じです。

上野さん:
サイバーエージェントもそうで、誰がアサインされているかによって違いますね。事業よりのPMだったら、事業責任者とPM、同じ人がやることもあるし、事業のほうのスキルが足りなければ、事業責任者を別でアサインする。規模によって柔軟かもしれない。

PMの目標設計、どうしてる?

二木さん:
僕が逆に興味あるのは、OKRですね。目標設計とか気になりますね。

上野さん:
サイバーエージェントでも、OKRを導入している部署は多いんですけど「下期の目標かえましょうか」みたいなことは正直、日常茶飯事だったりもします。スタートアップ的にやっていくので「1ヶ月やってみたけど方向性が全然違った」みたいなことは往々にあって。クオーターごとにOKRを立て、目標設定はもちろんするのですが、柔軟に手を入れてしまうことがあるというのが実態ですね。

二木さん:
僕の担当部門でもOKRの導入を検討したのですが、結局、入れるのはやめましたね。組織の柔軟性を下げてしまうかもな、と。上段の「O」が変わってしまうと、付属するOKRも連動して変わってしまうので流動性が高い組織には運用が大変かもなと。メリットも多いのですが。

上野さん:
そこの管理コスト、変更コストに時間とられるっていうはあるあるですよね。

二木さん:
なので、僕の組織ではシンプルに「定量目標」と「定性目標」、そしてそのそれぞれに達成基準(A/B/C)を置くようにしていて。定量だけだと中長期の施策に落としづらいので、中長期がウェイト大きいメンバーは定性目標のウェイトを大きくする。けっこう人によってバランスが違いますね。

たとえば、定性目標の置き方でいうと「メンターから巣立って、xxxプロジェクトで最も頼られる人になる」とかも目標になり得ます。新人だと他にも「わかりやすい仕様書を作る」とか。ときどき「おれは世界の〇〇を変える!」とか「企画王になる!」とかもでてきますけど(笑)人によって様々ですね。

若手PMたちへ、「何でも屋」を楽しもう

Q.最後にお二人から若手PMのみなさんにエールがあれば、お願いします。

二木さん:
「何でも屋を楽しもう」ということを伝えたいですよね。「なんでも屋」ってネガティブな印象受ける人が意外と多いんだなって思ってて。僕がPMで良かったなと思うのは「PMだから誰とでも話せる」こと。開発、法務、営業…他職種だとなかなか関わる機会がなくても、PMという立場を通じ、いろんな人と話せます。いくらでも知識を習得していけるし、彼らのアイデアを聞くことができる。責任は重大だけど、得られるものが多い。その環境をぜひポジティブに捉えて「ラッキーなポジション」を堪能してもらえたらいいなと思います。

上野さん:
私も二木さんと近い部分があります。私自身が自分と同じタイプの人間と働くより、自分と全然違う価値観とかスキルを持ってる人と働く方が面白いな、と思っていて。いつでもどこでもできるのがPMかなと。

1年目の時にPMをやっていて、PM一人では何も生み出せないということにすごく悩んだこともあった。「居なくてもいいんじゃないか」「プロジェクトマネジメントがうまいエンジニアが一人いればいいんじゃないか」とか。ただ、いま日本でもプロダクトマネージャーという職種が広まって、職種人口が増えていて…ということは、やっぱり必要な職種なんだと思います。

「その人がいるということに価値がある職種」だと思うんです。結局、PMがいる意義って、事業成果を出すこと、自分たちのプロダクトをもっと大きくしていくことに繋がっていくから。一個一個のスキルを見て「何のスキルがないから駄目」って思うよりも、その成果を得るために必要な手段だと思ってうまく使って、自分のPMとしての存在価値を自分なりに見つけていけるといいのかなって思ってます。

「私はこれが得意です」っていうことはなかなか言えなかった。ただ、ずっと目指しているのは、「一緒に働きたいって言ってもらえる人になる」こと。何かプロダクトとかプロジェクトが立ち上がった時に「上野を呼んでおこう。上野を呼んでおけばどうにかなるわ」っていう人になることを目指しています。そういった存在になれていれば、自分に身についているスキルも言語化できるはず。プロダクトマネージャーという職種を日本の中でも盛り上げていけるように、皆さん一緒に頑張りましょう!

PMお悩み相談室記事レポート
【1】私の成長はどうでもいい。全ては事業のために。上野千紘がサイバーエージェントのPMとして活躍するまで
【2】「人を動かす力を学べ」LINE 二木祥平を変えた一言
【3】ポータブルスキルを手に入れろ。LINE、サイバーエージェントのPMが語る「ソフトスキル」の重要性


文 = 白石勝也


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