40万DLを超えた方向音痴向けナビゲーションアプリ「Waaaaay!(うぇーい!)」を手掛けるチーム方痴民の開発者・綾木良太さんへのインタビュー。異彩を放つアプリの開発経緯、そしてプライベートプロジェクトながらユーザーの高評価を獲得する秘訣、チームスタイルとは?
ノリで作ったアプリが強豪ひしめくストアで、常に上位をキープ。
しかも、限りなく★5に近い平均レビューを獲得しているのが、方向音痴向けナビゲーションアプリ「Waaaaay!(うぇーい!)」だ。現在、iOS/Androidあわせて40万DLを突破している。
「筋金入りの方向音痴」を自負するチーム方痴民が手掛けるこのアプリは、100%プライベートプロジェクトとして開発。公開されたばかりのハイヤー配車サービス「Uber」の APIに日本で初めて即対応した「ぎぶあっぷ機能」の追加など、その勢いを増している。
現在、開発チームはエンジニア2名・デザイナー1名の3人。それぞれ、スタートアップや個人受託制作という「本業」を持ちながら、週末などの時間を縫ってWaaaaay!の開発してきたという。
チーム方痴民はいかにして、プライベートプロジェクトながら、ユーザーの高評価を獲得するアプリを開発できるのか?初期開発から手掛けるエンジニアの綾木良太さんに、開発経緯やチームスタイル、プライベートプロジェクトの勘所についてお話を伺った。
― さっそくですが、チーム方痴民ってすごい名前ですね(笑)
変な名前なのですぐ覚えてもらえます(笑)。その名の通り、「方向音痴」という共通項があって出会ったメンバーでWaaaaay!を開発しています。
― Waaaaay!開発のためにチームを組まれたんですか?
いえ。もともと、デザインを担当する小原(小原鈴花氏)とは週末にふらっと参加したハッカソンで出会いました。チームは違ったんですけど、プロダクトを見せ合っていたら、なぜかお互い「方向音痴」っていうことで気があって、なにか作っていこうという話になったんです。
仕事でもないので、自分たちが欲しいもの、作りたいものを作ろうとなったんですね。まずは二度寝専用アプリ「ニドネル」や、はてブのコメントをニコニコ動画のように流せるChromeエクステンション「米一揆」を開発しました。
― ということは、Waaaaay!は3作目なんですね。
はい。2つプロダクトを作ってみて、「そういえば方向音痴をきっかけにチーム組んだんだから、そろそろ本丸の問題を解決しようよ」って(笑)。すぐに開発に取り組んで、まずはスマホのウェブ版を昨年末にリリース。クラウドワークスでアプリ名を募集したら700件くらい集まって、「Waaaaay!(うぇーい!)」という名前に決めました。
― iOS・Android版は累計40万DLを超え、順調に成長していると伺っています。
プライベートプロジェクトということもあり、一切プロモーションコストを掛けていません。ユーザーさんの口コミやメディアに取り上げていただけたおかげでここまで成長出来ました。
あと、チーム方痴民に20本くらいアプリを手掛けた経験のあるハムヘイ君(堀内公平氏)が参加してくれたことも大きかったですね。アプリをローンチしてすぐに、細かいバグをいくつも直してくれたり。彼も方向音痴だったのですぐチームに参加してもらえました。
― 綾木さんにはチームを組んでのプライベートプロジェクトの勘所について伺えればと思ってたんです。3つプロダクトを立ち上げ、うち1つは継続的に成長させているチーム方痴民の活動から、社外プロジェクトに興味を持っている人に向けたアドバイスとかありますか?
アドバイス…ではないかもしれませんが、開発者目線で言うとメンバーの経験スキルにあまり差がないというのも大事なのかもしれません。開発者・デザイナーとしてのレベルや経験が近いと、上下関係も生まれませんし。開発におけるコミュニケーションコストがとても小さいので、気持よくプロジェクトを進められています。
開発は99%リモートで、メンバーとはこの半年で2-3回しか顔を合わせてないですね(笑)。もちろん定例MTGなどなく、各々がチャットでアイデアを出して、すぐさま実装、アップデートされています。そんなスピード感を出せるのも会社以外でチームを組んで開発する醍醐味です。
あと、仕事じゃないので嫌な事はまずしたくない(笑)。土日という時間を潰してでも、やりたいと思える楽しさがないとダメなんですよね。そうするには自分事化するのが一番手っ取り早いです。僕は根っからの方向音痴なので、最悪自分の問題を解決しさえすればいいくらいのノリでWaaaaay!をスタートしてるんです。ユーザーさんが熱心に使ってくれるようになると今度はそれが開発のモチベーションになる。
― 「方向音痴向け」と打ち出すマーケティングやユーザーに近い運営体制も上手いなと思いました。
なんだかんだ、開発するには使ってもらいたいですよね。プロダクトを作る前に簡単なマーケティングをしてみるのもいいと思います。僕の場合、まずTwitterで「方向音痴」と検索をかけてみたところ、1分間に1tweet以上は「方向音痴」のキーワードがつぶやかれてたんです。計算すると結構なボリューム。振り切って「99%迷わない!」「方向音痴に朗報!!」と打ち出しました。
ユーザーとの接点もとても大切にしています。アプリ内唯一の課金ポイントは、ナビの矢印をサンマに変更することなんですが、「開発者の笑顔が見たい人はサンマにしてみて下さい」と正直に書いて、既に1000匹位ご購入いただけています。
あと、基本的な機能追加は、なるべくユーザーの声を聞いて実現します。これまで7000件近く、要望やメッセージ、バグの報告をユーザーさんから頂いています。アプリの「欲しい機能投票会場」からアンケートを定期的に取ったり、運営からのお知らせやアップデート文はかなりフランクです。プライベートでやっているし、開発者だって方向音痴。ユーザーと同じ立場でお互い身近に感じながら、サービスを使ってもらいたいんです。
― 異常に高いストアの評価は、アプリ単体の素晴らしさだけでなく、開発・運営者とファンとなるユーザーの関係あってこそなのかもしれませんね。
― 伺ったところによると…、本業とされていた、共同創業者であるピリカ社を9月末で離れるそうですね。
はい。大学院を途中退学してまで創業した会社で3年間がっつり開発してきました。実はピリカを起業するタイミングで、サービスのKPIとは別に個人的な目標を立てたんです。それを達成できなければ離れる、と共同創業者には当時から伝えていて。
― これからはWaaaaay!に注力されるんですか?
先のことはほとんど決まってないのですが、個人でいろんな案件を開発しながら、一層チーム方痴民の活動にコミットしていければと思っています。Waaaaay!にかける時間は必ず増えると思いますし、Uberとの連携や地域・エンタメ情報に特化した新しいサービスがスタートしています。
サービス自体はいろんな展開があると思いますので、頑張って行きたいと思います!
― ノリで始めた社外プロジェクトが本業になる可能性も大いにあるのではないかと思いました。会社以外で何かプロジェクトを始めたいと思っている方にとって、とても参考になるお話でした。ありがとうございました!
[取材・文] 松尾彰大
編集 = 松尾彰大
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