約6億円。26歳の若さで、READYFOR 田島沙也加さんが成功に導いたクラウドファンディングの資金総額だ。学生時代は「社会のために何かできないか」と葛藤していた彼女。大学在学中に見つけた新しい道、そして現在進行形で悩みながらも前へ進もうと奮闘する姿に迫った。
「本当に意義のあるプロジェクトなので、絶対やったほうがいいです」
READYFOR 田島沙也加さんが、クラウドファンディングの実行者との打ち合わせで発した一言だ。彼女の言葉には力強さがある。そこに垣間見たのは、実行者の人生をかけたチャレンジと伴走する覚悟。
「一緒に全力で取り組んでいく。私がついているから大丈夫」。こちらまで勇気と安心感をもらえたような気がした。
彼女がこれまで成功に導いてきたプロジェクトは全300件。資金総額にして6億円以上。がん患者が自分の力を取り戻すための集いの場『マギーズセンター』の建設資金を集めるなど、26歳の若さで、数々の大型プロジェクトを裏で支え、社会にインパクトを与えてきた。
READYFOR で活躍している田島さんだが、学生時代は社会のためになにもできない自分に無力さばかり感じていたという。大学3年次に出会ったのは、クラウドファンディングという新しい道。その最前線に立って、現在進行形で悩みながらも、前へ進もうと奮闘する彼女の姿に迫った。
【プロフィール】
READYFOR 株式会社 / キュレーション室 マネージャー
田島沙也加
大学時代、ボランティアサークルで活動。「人のためになることを仕事にしたい」と思い、悩みながら就活をはじめた大学3年生のころ、READYFOR 代表・米良氏と出会う。そこからREADYFOR の学生インターンとなり、卒業後に入社。現在はキュレーター暦5年目。これまで数多くのプロジェクトを担当し、組み立て型レーザー加工機製造プロジェクトではサイト内最高金額となる約6,000万円を集め、多岐にわたる大型プロジェクトを多数成立させる。
ー 《Readyfor》というと、「社会をこうしてきたい」という志を持ったプロジェクトが多い印象があります。そうした社会貢献性の高い仕事にどうして携わろうと思ったんですか?
大学時代から、もともと地域活性化や国際協力に関心があって、よくボランティア活動に参加していました。社会貢献がしたい、その思いをより強くしたのは、東日本大震災の体験がきっかけです。テレビに流れる映像を見ているだけで、なにもできない自分が嫌で仕方がなかったんです...とにかくなにかしなきゃ、そんな想いでいろいろなボランティアに携わりました。
ホームレスの方々に食事を配給したり、福島の原発付近に残っている人たちと会ったり。ただ、ボランティアを続けていくなかで、複雑な感情も沸いてきて。「なにかしたい」その思いが、自己満足で終わっているような気がして、私の中で空回りして...なんでもっと自分は何かできないんだろうと、ずっと無力感は消えないままでした。
― ボランティアをするなかで、ジレンマがあったんですね。
こういった経験を経ていくなかで、仕事を通じて、社会をより良くしていくことに関わり続けたいと思っていました。ちょうど就職活動の時期に、たまたま参加したイベントに代表の米良が登壇していて。ビジネスを通して社会の構造を変えていく、そこに興味を持ち、インターンとしてREADYFOR に入社しました。
世の中で解決されていない課題があるなかで、自分のできることの小ささに無力さを感じるときもあります。私ができることはなんだろう?と、今でも模索している途中です。
― READYFORでは、どのような業務を担当されているんですか?
『キュレーター』という、クラウドファンディングを使いたいと思っている実行者の方のサポートを行う担当をしています。PR、情報収集、ファン作りまで。実行者の相談役になってさまざまなサポートをすることが主な仕事です。わたしはプロジェクトの主体者ではないけれど、彼らの背中を押すことで、世の中にインパクトを与えられることにすごく納得感があります。
― 先日、実行者との打ち合わせに同席させていただいたとき、田島さんが「本当に意義のあるのことなので、絶対やったほうがいいです」と実行者を励ます姿がとても印象的で。頼もしいというか、カッコいいなと思いました。すごくポジティブだし、そう言い切るのは勇気のいることでもありますよね。
せっかく想いがあるのに自分自身でその可能性に蓋をしてしまうのってすごくもったないと思うんです。
自分が本当に良いと思うことなら、信じて、私自身も一緒になって前に進む。資金を集めたり、仲間を集めたり、世の中で想いをカタチにできる環境はどうしても必要になるもの。それらを用意し、誰もが一歩前に進めるように応援し続ける存在でありたい。
もちろん、実行者にもいろんな方がいます。最初はすごく楽しそうにお話いただくんですけど、いざ資金調達を開始するときに成功しないんじゃないかと不安に思って辞退しそうになってしまう方もいます。でも、もし本当にその人たちが諦めちゃったら、世の中にそのプロジェクトが出ていかないまま終わってしまう。
私自身もその方がやりたいと想っていることは本当にたくさんの人から求められていることなのか。叶えることが、本当にその人自身のためになるのか。私のやっていることって意味のあるものなのか、すごく考えてしまうこともあります。
現在、ひと月に200プロジェクトほど立ち上がっていて。私がやったことをきっかけに、世の中の人たちが幸せになる可能性があるとしたら、葛藤したとしてもその可能性をちゃんと信じたいと思っています。
― 田島さんは若いうちから大型プロジェクトを担当していますが、仕事の幅を広げていくために大切にしてきたことはなんですか?
私はインターンでREADYFOR に入ったので、他社での社会人経験はありません。だから、最初は本当になにもできなかったけれど、壁にぶつかったときこそ、自分を成長させるチャンスだと捉えて走ってきました。
よく「企業に就職してまずは3年は経験を積もう」と言われますが、アレっておかしいと思うんです。どの環境にいても、壁にぶち当たって、貪欲に学んでいく。そのほうが自分の糧になるんだろうなって。フリーランスになろうが、就職しようが、起業しようが、それは一緒ですよね。
わたしが入社したタイミングはちょうどREADYFOR が創業して間もない頃で、新規プロジェクトの営業提案をしたり、プロジェクトの成功のためにより良い方法を探したり。がむしゃらに走っていると必ず壁にぶつかるので、これまで周りの人たちにたくさん迷惑かけきてきたと思います。
ただ、幸いにも、その領域で第一線で活躍されている方や志高く仕事をされている方とご一緒させていただいて、彼らから学ばせていただくことが多くありました。本当に社会にもまれながらいろんな教えを受けています。
― お話を伺っていて、田島さんは「社会を良くしていきたい」という想いだけでなく、仕事を通じて自分の役目を、主体的に動くことでつくっていったのだと思いました。
大学生のときの「なにもできない自分」と比べたら、できることが少しは増えた...かもしれません(笑)。
ただ、私自身、価値を出せているかというとまだまだ。実行者の想いに対し、より多くの支援者からお金を集めることができているか?そのために彼らの描くやりたいことを明確にするお手伝いができているか?など、わたし自身がキュレーターとして価値を出せているかというと、もっといっぱいできることはあると思っています。
また、READYFOR でいう『キュレーター』という仕事も社会的には定義がなく、正解がない職種です。もっと社会的にも知ってもらえる職種にしていきたい。社会に対してどんな価値を与えられるのか、ちゃんと世の中に知ってもらえるようにしたい。ロールモデルになることも私の今の役目だと思っています。
― 仕事へ傾ける想い、壁にぶつかりながらも突き進んでいく姿勢に、田島さんの芯の強さを垣間見たように思います。私も同世代として、自分自身を省みるとても貴重な機会になりました。これからのプロジェクトも楽しみにしています。本日はありがとうございました!
文 = 野村愛
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